第8話 面談開始
「長々と待たせた。許せ。」
楽に。楽に。そう言わんばかりの平服姿に変わり、ダラリと座る天下人・三好長慶。横に侍る松永久秀・久通父子に三好家の一門が数名がホッとした顔をしていた。
平伏と待機で少しではない時間を待っていた道慶は、やり過ぎた暴れっぷりや、内面が五十歳になろうというのに拗ねていたことの反省をしていたが、
(待ちすぎて少し疲れた…。)
待ちすぎて、待ちすぎて頭の中でいくつかの改善点はとうに出てしまっていた。悪い態度だとは思うのだが、再度の平伏が重なってウンザリ。ため息が出そうなっていた。
弁護する訳では無いが、彼はコレでも前世では元・国家公務員出の商社員で管理職等々も行っており、現世でも雪斎たちの教育を受けている教養人。……なのだが、どうにも足利義輝の一見以降どうにも調子がおかしい。
「楽にせよ。」
トントンと
(あれ?)
なにか拍子抜けしたように、間が抜けたような感覚を覚える。なんと言えば良いのか。『圧力』がないのだ。
『海道一の弓取り』今川義元、『後の天下人』
(あ。北条家でもあったか。)
しかし、北条家では北条幻庵やその関係者がいたのだが、『圧力』は感じなかった。
『そういうこともあるんだろう。』
そうやって納得した道慶であった。しかし、コチラを見る長慶の視線に気がつくと床からネットリと何かが這い出てくるような感覚を覚える。
そのネットリと粘るような感覚は足元から頭上に向けて上がっていく。苦い何かを腹の中に入れられた気持ち悪さまで感じてしまう道慶。
パァン!!!
「失礼を。羽虫が…」
耐えられなくなった道慶は、言い訳を放ち深々と頭を下げた。思った以上に力が入ってしまったために物音や打撃音とは言えず、破裂と言うほどの音を立てた。発生させた両掌がとんでもなく痛いが嫌な感覚は吹っ飛んだ。
「羽虫も消え去りましたな。」
「「……」」
ギリギリで反応した卜伝を除き、その場に居た面々は破裂音に驚き、耳を痛めたように擦っていた。ニコリと誤魔化すように笑う道慶に卜伝も言葉を続けたことにより、羽虫の排除として押し通すことになった。その場の面々の名誉として捕捉するが、決して音に驚いて反応できなかった。本当だぞ?
「ふぅん。確かに羽虫は弾いたほうが良い。」
耳を擦りながらニヤリと楽しそうに。それでも『落とし所』に作られ、勝手に持っていかれてしまったことに少しばかりの不満を込めた納得を長慶がしたことで仕切り直しとなった。
「小童。いや、卜伝の弟子。中々やるではないか。」
目に爛々と力を持った三好長慶が口角を上げる。その姿に松永久秀を始めとした面々は驚く。道慶と卜伝は知る由もないが朝まで鬱々とし続けていた『身内の死に嘆く男』がこの場で『天下人たる漢』に戻ったのだ。驚きもするだろう。
「お主は公方様への仕官を断ったと聞いた。その後にこの様な騒ぎを起こした。ならば、我が家中に腕を売り込みに来たか?」
繊細な家族の死にも大きく嘆く優しさを持つ人格者という根がありながらも、豪胆であり謀反や権威の恣意的な利用も行う奸雄のような豪傑を兼ね備えた天下人・三好長慶が言葉を続けるほどに楽しそうに昂り、問いかけてくる。
「そんなつもりはありません。」
しかし、道慶はアッケラカンと断った。あの嫌な感覚については疑問があるが今は仕官を望んではいない。
「は??」
と、歳若い松永久通が心底信じられない。と、言わんばりの声を漏らし再び場は止まってしまうのだった。
※作者の一言……三好長慶と松永久秀。この戦国中期(ぐらい?)の主役はどうしても出したい(X回目)
それはともかくとしても、書いていけばノリと頭の中身が噛み合うはずなので次の話も数日中には投稿します。1話は3500〜4500字ぐらいで纏められるのが読みやすいと聞いたので纏められるようにも考えていきます。
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