第7話 堺にて〜強すぎるのも考えもの〜 3
やらかす数刻前。時期としては勝ち抜き戦と言う有象無象たちへの振り分けに少しばかりの陰謀が含まれた三好家主催の第一回堺武芸大会(仮)で道慶が大暴れした後のこと。
「まったく。いつもの聞き分けの良いお前らしくない。」
「……。」
いつもならば年齢不相応の大人の対応をする道慶なのだが、今回はムスーっと、師である卜伝の言葉にも反応しない。卜伝や孫助としては、年相応のワガママさもあるのか。そうとらえることもできるが、道慶の中身はそろそろ五十歳のおっさん。大人気ないにもほどがある。
「敵を〜…」
卜伝がたしなめるように説教するが、道慶からすれば半分ほどしか耳に入っていない。なんと言えば良いのか。いや、色々と拗らせているが、これでも中身は中年。自身の苛立ちの原因もわかっている。しかし、その原因である『嫉妬』を認めたくないだけである。
ウジウジして何ができるか決められきれない自分とは違い、危ういながらも何かを成し遂げようとしている。
そんな点に。ブラック体質でもある自身の不甲斐なさに。単に苛立って、怒っているだけだ。まぁ、地に足のつかない行動や立場の改善をしない点にもムカついているのだろう。
………なんか、卜伝の後ろで半透明の兄・徳夫が見え、
『うむうむ。良い傾向だ。』
と、言わんばかりに頷いているが幻覚だろう。となりでサムズアップしている師・雪斎も見える気がするが幻覚だろう。なんか似たようなことが多い気がするが道慶の記憶にある2人はそんなことはするタイプではないので気のせいだろう。
「武神が私に降りてきました。」
「ほ?」
幻覚と怒りを振り切ろうと、説教を続けている卜伝に言葉を挟んだ道慶。我ながら理由のわからないことを言っているが、とにかく今は発散できない苛立ちを解消せねばならない。
武神が降りる。そんな言葉を軽く信じるほど卜伝はアホではないし、純朴でもない。しかし、卜伝自身も『一之太刀』を会得したときに神託が降りたような気がしたと話す男だ。
嘘か本当か。それはともかくとしても、それを話す人間が愛弟子であり、孫でもあるような子であるが、それ以上に桁違いの武芸の才を持つ人間だ。
(面白そうだ。)
そう顔に出てしまう卜伝は注意も説教も止めると少しばかりの沈黙を挟むと、
「やりすぎるでないぞ?手加減を忘れるでないぞ?」
興味と好奇心が勝った卜伝は道慶に最低限の自重だけを釘刺しして試合場に向かわせたのだったが……
「へへー。」
この状況である。ベッタリと床に張り付くように頭を下げて情けなーく声を出す道慶。その横で卜伝も難しそうな、申し訳なさそうな顔をしていた。
頭を深々と下げた道慶には見ることができないが、眼の前にいる面々は一部を除いて悪い感情を持っているようには見えない。
「まぁ、良いわ。まだ責めも、褒美も、何にも言っておらぬでな。」
ところが最上座に座る人間は何処か楽しげだ。三好長慶。征夷大将軍が居ながらも『天下殿』と呼ばれる男。足利義輝からすれば大きすぎる目の上のたんこぶの一人。道慶はそれを知らないが、もしも顔でも知っていればどう思っただろうか?
「久秀。此度は中々に愉快である。」
「その言葉だけて、ありがたき幸せ。しかしながら、お褒めの言葉は倅めに。催しの手配を行ったのはコレでございます。」
恭しく頭を下げる久秀に対して、少し顔が強張っている久通。しかし、その表情は平伏している道慶からは知れない。
結局、松永親子やその他の関係者がヨイショ、ヨイショ。と、腹の中身を見せているのか。いないのか。どうにもスッキリしない持ち上げを繰り返したことによって、道慶が頭を上げることができるようになるまで少しとは言えない時間が経過するのだった。
※作者の一言……3分割しなくても良かったかなぁ。あも、題名と中身がスッキリこないのが続きます。なんか藻掻いてる感じがある。
まぁ、ともかくとして、蛇足感が強いかもしれませんがどうしても出したい全盛期三好と足利は出せてきたので書ける時間さえ取れれば話はうまく進みそうです。
また誤字脱字報告や変な文の修正について大変助かっています。これからもよろしくお願いします。
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