第九話: 諠��ア縺ォ逡ー蟶ク縺檎匱逕溘@縺セ縺励◆縲ょ炎髯、繧帝幕蟋九@縺セ縺�④

 アイリーンが杖を掲げると、黒焦げの芝生が点々と光り始める。

 次の瞬間、大量のスマホが芝生の上に広がっていた。


「無詠唱魔法……」


 茂木がポツリと呟く。


「みたいだな。この世に無詠唱魔法を使えるやつなんて、そうはいない。できたとしても、40年の修行でやっと取得できるかどうか……。となると、あの無詠唱はスキルによるものと見て間違――」


 頼が話している途中、右側のスマホから拳銃を持ったオットーの腕が飛び出し、銃弾を放つ。


「……あっぶね」


 ギリギリでかわすと、茂木がその無数のスマホを見て眉を寄せる。


「めんどくさいな。男は素手で戦うものだ、ぞ!」


 茂木は腰を低く落とし、長い爪とともに勢いよく体を回転させた。


シュッ


 次の瞬間、地面に散らばっていたスマホが一斉にみじん切りになっていく。


「さあ、これで戦いやすくなった」


 茂木が小さく微笑む。


(は? なんすか今の……? 2メートルもない爪の長さで、なんで20メートルは離れたスマホまで壊れるんっすか……化け物め……)


 オットーは、自分にとっての先輩、琺瑯時ほうろうじが「負けはしなくとも勝つことは難しい」と言っていた理由を理解した。


 生命力を奪われても、これほどまでにスキルを駆使し、異能力を扱える。

 極めつけは、スキルでも異能力でもない――猫妖怪特有の長い爪を最大限に活かす、桁違いの実力と技量。


「なんで先輩でも勝てない相手に、僕らが戦わなきゃいけないんすか……」


 オットーは手元のスマホに手を入れ、中から刀を取り出す。

 同時に、アイリーンの持つ杖が炎のようなオーラを纏い始めた。


「アイリーンは遠距離攻撃を、僕は近距離から攻めるっす」


 オットーはニヤリと笑いながら、神凪たちを見据える。


「僕ら二人が組めば、うちの組織で最強になれるっす」


 その目を見た頼は、何かを察した。


(あいつら……内心、勝つことを諦めたな……)


 オットーとアイリーンは、無言のまま同じ思いを抱く。


(神凪を奪って、絶対に逃げる!)


 しかし、頼もまた決意を固める。


(ここで絶対に奴らを倒す。神凪と一緒に――)

_______


(はぁ……せっかく、あの方の懐まで潜り込めそうだったのに……)


 美座和みざわは、死んだような目で、絶望の淵に立たされていた。


「起きてください」


 聞き覚えのある声に、美座和はゆっくりと目を開ける。


 目の前には、紺色のコンクリートでできた狭い部屋。

 椅子に縛り付けられた美座和と、黒いパーカーにデニムショートパンツを纏った芽衣めいの姿があった。


「あら、久しぶりね……。あの山で会って以来かしら?」


 芽衣は包帯だらけの美座和の顔を鋭く睨みつけ、冷たい声で言い放つ。


「あなたのことなんて覚えていません。ただ、あなたには――あの組織について洗いざらい話してもらいます」


 美座和は一息つき、ため息をつくと、応じるように話し始めた。


「えぇ、いいわよ。全部話してあげる。その代わり――」


 一拍置いてから、芽衣をじっと見る。


「私のこと、見逃してくれないかしら。この尋問が終わったら」

「……逃げてどうするんですか?」


 美座和は淡々と答える。


「組織に戻って、無理やりにでも金を奪う。あそこの組織は大量に金を所持しているらしいからね。そもそも、私があの組織に入ったのも金目当てだったし。でも、せっかく金の管理を私に任せる話が来た時に、あんたらを襲う計画が持ち上がって……あんたらを倒せば、その金は私の手の中に入る……って思ってたのに」


 芽衣は静かに答えた。


「最初から逃す予定でしたけど」


 美座和は理解できないといった顔をする。


「どういうことかしら……?」

「神凪さんは言いました。自分の利益だけを求めて、テロ集団のような組織に入り、人を傷つける。そんな奴に“死”という罰は甘すぎると。だから、その姿のまま、これから生きていってもらうって」


 美座和は「ふ〜ん」と軽く答えた。


「組織に戻るも、改心して真面目に生きるも、あなた次第です。この尋問が終わったら、お好きにしてください」


 「まあ」と芽衣が一言添える。


「その組織が、残っていたらの話ですけど」

______


 オットーが頼へと切りかかる。

 頼は本物の刀に対し、木刀で応戦していた。


「チッ、舐めるんじゃないっすよ」


 オットーは必死に刀を振るが、頼にすべて弾かれる。


「お前の構え、あまりにもなってなさすぎる。そんな実力じゃ――」


 頼は振り下ろされる刀の横を木刀で叩き、軌道をずらすと、すかさず手首を打つ。


(筋肉の動きで予測できるはずなのに、体が追いつかないっす……)


 焦ったオットーは、手元のスマホの画面を頼へ向けると、中から火の玉が飛び出した。


「アイリーンに事前に記録させてもらってた火の玉っすよ!」


 だが、頼は軽々と避けると、木刀を振る。


「俺には勝てないぞ」


 すると、剣先から雷霆球らいていきゅうが飛び出す。


「は! 馬鹿っすね、また回収されやすい技を!」


 雷霆球らいていきゅうは、当たり前のようにスマホの中へと吸い込まれる。

 そして、オットーが次に取り出したのは、ミニガンの銃口だった。


「蜂の巣にしてやるっす!」


 放たれる銃弾の嵐を、頼はワープホールを使い、すべて回避する。


「申し訳ないが――お前の今持つ力じゃ、俺には勝てない。能力的にも、知識量的にも」


 そんなことは分かっている。

 こんなの、どう頑張ったって無理だ。

 いくら知識という武器を持っていても、異能力とスキルの力で押し切られてしまう。


 しかも、あれだけのスマホの量があればまだしも、すべて茂木に破壊され、残っているのは手元の一台のみ。

 極めつけには、魔法の「コピー・複製」を使えるアイリーンが、あの茂木と神凪の二人を相手にしている――。


(ていうか……琺瑯時ほうろうじ先輩は、色々気づいていた可能性が高かったのに、重要な報告や予測情報が僕たちには一切伝えられていなかったっす。それどころか、相性がそこまで良くない俺たちを派遣するなんて……これじゃあまるで……)


 オットーは焦り、スマホから先ほど吸い込んだ雷霆球らいていきゅうを解放する。

 しかし、それを待っていたかのように、頼が「爆発」と呟くとオットーとの距離が近すぎる状態で雷霆球らいていきゅうが爆発し、彼はまともに被弾する。


(……お前たちは死んでもいいって言ってるようなものじゃないっすか……)


 雷の衝撃で感電し、その場に倒れ込むオットー。

 スマホも感電したが、ギリギリ電源はついたままだった。

 そこに逃げ込もうとした瞬間、銃声が響く。


 オットーの目の前で、手元のスマホに弾丸が貫通する。

 目の前には煙を立てるハンドガンを構えた頼が、静かに立っていた。


 一方その頃――


 アイリーンは四体の精霊を召喚し、杖から火の玉を飛ばしながら戦っていた。

 しかし、精霊は一瞬にして神凪のオーラを纏った竜型の炎と水に喰われ、彼女自身は茂木に遊ばれているかのように、当たりもしない攻撃を繰り返していた。


 そんな中、茂木は頼の戦いが終わりそうなのを見て、ポツリと呟く。


「向こうも終わりそうだし、こちらも終わらせるとしようか」


 すると、茂木の姿が霧に包まれるように消えた。


広範囲幻覚視こうはんいげんかくし!?」


 アイリーンはすぐさま警戒し、構えを取る。


(私には必殺技のトリガー式炎魔法がある……これで決める……!)


 瞬間、目の前に茂木の姿が現れる。

 しかし、同時に後ろからも気配を感じた。


(攻撃を受ける可能性が高い正面から攻撃を仕掛けるはずがない……つまり、本物は――!)


 アイリーンは即座に後ろへ振り向き、魔法を放つ。


「これで終わりだぁぁ!」


 杖から鉄をも溶かす勢いで炎は放つ。

 だが――この攻撃が当たることはなかった。


「どちらに向かって放っておるのだ?」


 背後から、茂木の声が響く。


(あぁ……罠だったのか……)


 頼は神凪の方へ目を向けると、満面の笑みで親指を立てる神凪の姿があった。


(あれは勝ったって意味でいいのか?)


 しかし、その時だった――


 オットーが、黒焦げの芝生の中から芝生の写真が映ったスマホを掴み、手を突っ込む。


「!?」

「せ……せめてでも、神凪はスマホの中に入れてやる!」


 すると、神凪の背後に、ちょうど気づかれずに壊されず残っていたスマホから、オットーの手が伸びる。


 だが――


 銃声。


 オットーの手が弾丸によって貫かれる。


 その一撃を放ったのは――頼ではなかった。

 神凪でも、茂木でもない。


 頼は、銃弾が飛んできた方向へと目を向ける。


 そこに立っていたのは、ムキムキの巨体に、まるで炎を纏った歯車のような雰囲気を漂わせる男。


「やっと……いいとこまで片付いたか」


 頼は鋭い眼光を向ける。


 こいつこそ――今回の主犯に最も近しい存在。

 一度は茂木を“殺すふり”をし、芽衣を悲しませた男。


琺瑯時ほうろうじ


 その手には、硝煙を漂わせるハンドガンが握られていた。


「よう、あん時以来だな、雑魚ども」


琺瑯時 丹生寺ほうろうじ にゅうじ 異能力: 和入道ワニュウドウ 特殊スキル: 物流通受ぶつりゅうとおじゅ


「後始末の時間だ」


 そう、琺瑯時ほうろうじは鋭い眼光で頼たちを見つめる。

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