第24話

 AIによって完全制御された全自動駆動車に揺られること15分程度。都心部にある中でもひときわ大きな建物に入り、エントランスで職員用IDカードを照らし合わせて入館する。

 そして、十二階にあるオフィスに辿り着き初めにすることはメールの確認だ。夜間に来たフェルナンド自殺事件に関する情報を一つ一つ確認して有益なものかどうかを確認する。

 AIによって判別してもいいが、それをすると今日一日の私の仕事が無くなってしまう。そして最後にクライゼンさんから届く毎日の報告書に目を通す。依頼をしたときのクライゼンさんはこの仕事に後ろ向きで少し心配だったけど、毎日丁寧に書いた報告書を届けてくれる。あれで真面目な性格なのだろう。

 私の名は、クララ。フェルナンド自殺事件の解決を促進する仕事を割り振てられたしがない公務員だ。そしてアルドールさんとクライゼンさんに事件の調査を依頼した人物でもある。

「さぁてと今日も仕事しごと」

 そう自分に言い聞かせて、キーボードを叩きながらメールを確認していく。これはダメ、これも冷やかしというように使えないガセネタばかりだが、私は一字一句丁寧に読んでいく。

 そういえば昨日の分の報告書が来ないなぁ、なんて考えていたら上司に呼ばれた。

 言われるままに小会議室に連れられて、きょとんとしていると小太りの上司が口を開いた。

「あの旅人たちを即刻解雇しろ、そしてフェルナンド自殺事件に関するプロジェクトは中止だ」

冷酷に告げられたその言葉に私は反応が遅れてしまった。確かに閑職ではあったが、意義のある仕事だと思っていたし、クライゼンさんからの報告が途絶えた丁度今を狙ってプロジェクトの中止など裏があるに違いない。

「どうしてですか?せめて理由を教えてください」

そう言うと上司はため息をついて答えた。

「彼女らは警察と交戦したらしい。法律に則り追放処分とすることが決まった」

「そんな‥‥‥」

「そこで君には旅人たちに連絡を取ってもらう。警察の指示する場所へと誘き出して欲しい」

実際に何が起きたのかは分からない。でも私にはどうすることもできない。私はとぼとぼとデスクへと向かった。ほどなくして高そうなスーツを着た人たちが来て、私はまた小会議室へと連れられた。その人たちは警察の上層部いわゆる制服組と呼ばれる人たちだった。

「良いかい?今どこにいるのかをまずは聞き出してくれ、あとはこっちで指示をするからそれに従って欲しい。できるね?」

その声は柔らかくどこか優しさを感じるが、その目はまるで機械のように冷たい。私はこくりと頷くと彼女たちに渡した顛末へと通話を試みるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る