第5話 莚売りと黄色の頭巾・肆
ある時、
「ご老人。山中にお一人で山菜取りですかな?」
老人は何も言わない。老人は無言のまま、
「な、何か……?」
「貴公のその手に持った薬草は、何に使うのかな?」
「これは、末の弟が風邪を引いていて。煎じて飲めば、体が温まるのです」
「その弟のことは、大切かい?」
「それはもちろん。……我が家は父母も既にありません。あの子とは年齢も離れておりますし、私が守ってやらねば」
「では、薬草の知識はどこで学んだのかな?」
「都です。兵法書や古典、様々な書物を読みましたが、これが一番面白かったのです。それに、病が癒えればそれだけ悲しむ人が減る。私の出世の道は閉ざされてしまいましたが、それでも周りの人々に喜んでもらえることはできます」
質問の多い老人だ、と感じた時、
「……この国も、病んでいる。そうは思わぬか?」
老人は表情を変えず、
「そう……かもしれません」
「なにゆえ病んでいる。なにゆえ病んだままか。これを変えることはできるか。この病を、癒すことはできるか」
「難しいでしょう。民の苦しみも、朝廷には届かない。大きな力を持つ者たちにそれらを聞く気が無いのです。私は都でそれを思い知りました。清廉な志を持つ若者がいない訳ではない。義憤を秘めた忠臣や、慈愛を施す地方官がいないということでもない。全ての官吏や宦官が、これで良いと思っているということはないのに、変わらない」
「大きな力とは、何と心得る?」
「貴公の頭に浮かんだもの全てよりも、苦しむ民の数は遥かに多い。貴公の智慧は、貴公の持つ愛と絡み合い、天下のあまねく辛苦を救うやもしれぬ」
「私にはできません」
「できるとも」
老人は微笑んだ。
「簡単なことではない。だが貴公こそ、この乱れた世を正すことの出来る力を、才を持つ選ばれし者であることは確かだ」
「私が?」
「そうだ。力といっても、様々な力がある。考えるのだ、貴公の平和を。貴公の愛を。
「あなたは……一体?」
「我は
「
顔を上げたときには既に彼の姿はそこには無かった。
「何だこれ汚いな。そんなものを持ち帰ってきてどうするつもりだよ。絶対胡散臭いだろう、そのなんとか仙人」
「
「まっさらじゃないか。兄上、その得体の知れない老人に騙されたんだよ」
「
末弟の
「
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