第3話 莚売りと黄色の頭巾・弐
「おいおい、喧嘩の仕方も知らないのか?」
早々に気絶した男たちを前に、
「見つけたぞ!」
背後から怒りの籠った声がして振りかえると、大きく黒い影が眼前の風景を遮った。
「……今度は何だ?」
見上げていくと、筋骨隆々の
「子供……?」
少年の顔があった。
「てめえも
「何だと。いい加減にしろ、私がこんな奴らの仲間だと?」
即答すると、少年は慌て出す。大きな体をしているが、かなり若いようだ。
「そ、そうか。悪かった。じゃあ、助けてくれたんだな」
「……まぁ、そういうことになるのかもな」
「じゃああんた……良い奴なんだな」
妙に逞しい少年は、その身体に似合わないほど無邪気な笑顔を見せる。
「おっと、姫様を助けてやんないと」
「姫様?」
「おうよ!」
少年は、その姫様とやらに巻かれた袋を解きながら答えた。
「この方は、
「その姫様が、どうしてこんなところに。
「ありがとうございます」
袋から出された少女の素顔が現れ、
「父上が、
「ホント、べっぴんさんだよな。俺も初めて見たときには驚いたぜ」
「これはうちの荷車なんだ。こいつら俺の荷車盗んで、それに姫様のせて行こうとしやがった。とっちめてやろうとしたんだけど、二人に足止めされて、その隙に残りの三人で逃げやがった。あー、車輪が折れてらぁ……。けど、あんたのおかげで助かった!」
「何かお礼をいたしましょう。街へ戻れば、父上様が居りますから」
「おぉ、気前が良いねぇ! よし、あんたも行こうぜ」
「あ、あぁ。で、何処へ行くんだ?」
「聞いてなかったのか……オイオイ、今言ったろ?
会う? 自分が、
「あ、いや、その」
上の空だなんて何年振りだろうか。人の話が聞こえてこない程に、姫の美貌に
「ほら、いくぜ。何ぼおっと突っ立ってんだ」
少年に背中をばしばしと叩かれ、彼に連れられるがまま、
「そういや、まだ名乗ってなかったな。俺はこの川の向こう、
道すがら名乗った少年に、
「
とだけ言って、
「ただの、
そう続けた。
「
「そんなことは……」
褒められているのか。
正直戸惑った。逢って間もない少年に、これでもか! というくらい褒められた。問屋の親父のそれとは違う、何かがそこにはあった。
「本当にお二人とも、ありがとうございました」
「そうだ、礼はどのくらい貰えんだ?」
「そうですね、父上の持ち合わせで足りなければ、後々届けさせることもできると思うのですが、あなた方のお望みには叶うと思いますよ」
「そりゃありがてぇ。こいつらに荷車をぶち壊されちまったからな。買いなおさねぇと」
「
娘がこちらを伺う。
普段若い女性と話す機会など滅多に無い。周りの女性、と言えば家に仕えるお婆と村のおばさん連中、あとは近所の子供たち程度で、こんなにも綺麗で高貴な人物と話すのは初めてだった。瞳の奥に、吸い込まれそうになる。
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