第一章 黄巾の乱
第2話 莚売りと黄色の頭巾・壱
春。桃の花が、村一面に咲き誇る季節。
少年は、二十四歳の青年になっていた。
時は、
すっかり昇りきった朝日を見つめながら、青年――
毎日同じことの繰り返し。それだけだ。毎日毎日草と戯れて、莚と草履とをせっせと作り続ける。それを売って、空の銭袋に僅かばかりの銭を入れる。少しずつ、何となく消耗を続けている気がする。
いつまでこんなことをしているのだろうかと思うと、溜息ばかりが出るのだった。
「いやぁ、
親しげな問屋の親父のいつもの言葉に、今日は妙に苛立ちを覚えた。毎日こんなことばかりしているのだ。嫌でも上手くなってしまうのは当然ではないか。自分の腕前と商品の質を褒めてくれている店主の言葉が、嫌味に聞こえる。
「じゃあ、また」
学問を教えてくれていた
対して自分はというと、毎日毎日、藁の山とにらめっこだ。父が亡くなった頃、
今や
近頃、
いつもと変わらない帰り道。いつもよりも、気が重い帰り道。また溜息が――、
「やめて、離してください、誰か!」
――出なかった。
男三人が、綺麗な格好をした少女を大きな布袋に放り込んで縛り上げ、荷車に押し込んでいる。
暇な奴らだ。
目の前で繰り広げられる光景を見て、
「おい、そこの暇人共」
「あぁん?」
そんな反応だろうとは予測できたが、正に頭の悪い奴特有の反応だった。
「誰に物言っていやがんだ、テメェ」
「お前ら以外に誰かいるか?」
「仲間に入れて欲しいのか? そういやお前もなかなかボロッちい恰好してるもんな」
正義感、ではなかった。むしろ苛立ちの方が近い。耳障りな濁声だ。
もっとも、幼い頃の自分であれば、正義の心満々で止めに入っていたのだろうが、今はそういう気分になれそうもなかった。
「お前らなんぞと一緒にしないで欲しい。私は忙しいんだ」
「ならさっさとどっか行きな。俺たちも、
「いや、暇人だよ」
「はんっ、正直に言えよ。お前も、この小娘の身代金が欲しいんだろう?」
「身代金? 馬鹿馬鹿しい。一体何の話だ」
苛立った自分の直感は、案外正しかったようだ。これが最近噂の
「けっ、邪魔くせぇ。
小刀を抜き放ち、
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