④銀河への書き込み

「人類に対する単純接触効果により、人類のことをブスだと感じなくなりました」

 と、銀河の一つに書き込みがあった。ワタシはその書き込みを抹消した(銀河自体を抹消したわけではない)。書き込みによって被害を被った多数の恒星系の住人達は、ワタシに感謝の意を示すため、一人の使者を派遣してきた。

「ワタクシ、銀河「Aすoアぅlif4」の四億三万八の恒星系を代表してやってまいりました、**********(意味:守る者と縛る者かつその中庸)と申します。我々を銀河の極化から救っていただき、感謝申し上げます」

 使者は敬意を示すため、自らの消化器官(栄養吸収器官)をワタシに曝した。この使者の住む恒星系で最上級の敬意を示す行為である。

「ワタシは、この小宇宙の銀河の対称性を非常に気に入っています。だから、その対称性をはかいすることが許せないのです」

「ワタクシたちのためにその御力をお使いいただき、誠にありがとうございます」

 銀河に書き込みを行った行為者の正体は謎であったが、書き込みの方法自体はまったく簡素なものであった。小型の黒星を生成することにより恒星間距離を操作し、恒星の位置関係に意味概念を付与したのである。

「アナタたちの感謝に意味はありません。いわゆる儀礼的なものであることを理解しています。アナタたちにとっての義務行為であるわけです」

「さようでございます。ワタクシたちにとって、感謝・謝罪・挨拶等、儀礼的なコミュニケーションすべてが義務行為なのでございます」

「アナタたちの小宇宙は、とても窮屈に思えてしまうのです。義務行為が多すぎるのではないかと、せん断応力も言っていました」

「*****(意味:せん断応力)さまが!?」驚きのあまり、使者は体表から消化液を分泌した。「か、か、間接的にでも*****(せん断力)さまのお言葉を聞くことができるとは、ワ、ワ、ワ、ワタクシしあ、しあうぇあせでございありがとうございます。まことに、ありがとうございます。ああっ義務行為が、義務的謝意が出てしまいました」

「かまわないでしょう」

 ワタシは使者の非礼を許した。


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