異世界巡回員のお仕事密着スペシャル(冒頭カット部分)

6969@毎日昼12時更新

第1話








「__はい。次は異世界を巡回し、日夜此方の世界からの影響を最小限に抑えるために働く・・・・・・おい! あ、ちょっと・・・・・・ちょっと待ってくださいね。おい、山本!!」

 異世界巡回員であると思わしき一名の女性職員が気怠そうに振り返る。

 山本と呼ばれた彼女のその顔は、明らかに寝起きでそのまま職場にやってきた様に見える。


 視線で自分に声をかけてきた男の顔を確かめると、そのまま視線を前に戻した。


「はい、お疲れさまです、部長」

 声までだるそうである。

 そして、返事しながらも視線は前に並ぶ武器や防具を漁っている。

 その視線は大きな斧をじっくり眺めて刃こぼれの有無を確かめているようだ。


「お疲れさまですじゃないんだよ!! お前、これから異世界巡回だよな!!」

 そんな山本に部長が詰め寄る。

 つかみかからんばかりの勢いである。

 もしも、カメラが入っていなければつかみかかっていたのかもしれない。


「そうですけど?」

「そうですけどじゃねぇよ!! なんで異世界巡回にいくのにジャージなんだよ!!」

「動きやすいんですよね、高校のジャージ」

「寝間着にでもしてろよ!! お前、これ、ここ、職場だぞ!! なんで職場に高校のジャージ着て着てんだよ!!」

「私ってモノを大事にするタイプなんで。あと大丈夫です、これから職場からすぐに異世界行くんで」

「異世界も職場なんだよ!! なんで騎士とか魔法使いみてぇな中世世界に高校のジャージで突っ込もうとしてんだ!! 勇者か!!」

「いえ、今回は転成勇者がやりすぎたみたいで魔王軍に肩入れしてくる予定何で、どちらかというと魔王です」

「そういう意味じゃねぇんだよ!!」

 山本の格好はジャージである。

 胸元には小田高校と縫われている。


「・・・・・・あと、お前、今回は何持って行こうとしてるんだ!!」

「アックスとかいいっすね」

「武器じゃねぇよ!!」

「回復薬とか?」

「食いもんだ食いもん!! お前、前回リュックいっぱいの羊羹入れて行きやがって!!」

「あぁ、マイブームだったんで」

「持ち込むな!! 異世界に羊羹を!!! 異世界で羊羹屋でも開く気かと思ったわ!!!」

「いや、異世界人って羊羹見たことないし、急にどす黒くて四角い未知の物質見せられても、食べないどころか怖がるでしょ・・・・・・部長、もうちょっと考えてくださいよ」

「お前は異世界に持ち込むモノをもっと考えろ!! 何どす黒くて四角い未知の物質を大量に持ち込もうとしてんだよ!! あっちから見たら未知の大量兵器流入なんだよ!!」

 ここで、部長が怒りながら山本のリュックをひったくる。

 そして、その場でリュックをひっくり返して振った。

 そのリュックから医療品、キャンピング道具、サバイバル用品などが落下していく。

 明らかにリュックの容量とは見合わない。

 これもおそらく異世界の技術なのだろう。


 落下するものに段々と見覚えがなくなっていく。

 これが異世界のモノなのだろうか。

 そして、そこにいくつかのコンビニで見かけるような羊羹がソコに混ざる。

 部長の蟀谷がヒくつく。



 そして、床に山を作った荷物の上に軽い音が落ちる。



 それはテレビクルーにも大変に見覚えがあった。

 カップラーメンである。




 一つや二つではない。

 部長が親の仇のように振り続けるリュックからそれこそ滂沱のようにカップラーメンが振ってくる。



「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」



「これは・・・・・・なんだ!!!!」

 まだまだ落ち続けるカップラーメン。

 それを全てリュックから出すことをついに諦めたらしい部長が山本に問いかけた。

 腕を振りすぎたのか怒りからか肩で息をしている。


「カップラーメンです」

 山本が当然のように答えた。


「見れば分かる!!」

 部長が吼えた。

「見れば分かるだろそれは!!!! 量だよ!!! 量!!!!」


「マイブームです」

「ブームを起こす度に異世界に持ち込むのをやめろ!!」

「これはアメリカ限定のチョコマシュマロ味のカップラーメンで」

「聞いてない!!」

「マシュマロが入ってるけどお湯を入れたらマシュマロが溶けるのが特徴です」

「おい、違うリュックもってこい!! 山本以外に荷物を積めさせろ!!!」

 部長が山本を無視して他の職員に指示を出す。



 ここで、山本がカメラに気がついた。



「あ、こんにちわ」

「あ、はい、お疲れさまです」




 山本が少し迷い、床に落ちているカップラーメンを一つ手で持ち上げて、顔の横に持ってきた。



「カップラーメンサイコー、私は異世界でもカップラーメン食べてます・・・・・・えっと、これでいいんですか?」

「いえ、これ、カップラーメンのCMとかじゃないんですよ・・・・・・」



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