第22話 野獣
1年生ボール。
ビルドアップの場面。
1年生の左センターバック木村がボールを持っている。
幕井は、練習試合のプレーを活かし、相手のフォワードとボランチの間に顔を出す。
朝日はバイタルエリアに立つ。
木村はパスコースがないので、キーパーの八木にボールを下げる。
「ゴー!」
デ・ヨングが2・3年生にコーチングをする。
それと同時に、フォワードの大宮先輩が木村のパスコースを切りながら八木にプレスをかける。
もう一枚のフォワードの春日先輩が、幕井にマンマークでつく。
ポン
八木が右センターバックの千葉にパス。
しかし、大宮先輩はプレスをかけ続ける。
小田がバイタルエリアに落ちるが、ボランチの渡辺先輩にマークにつく。
バイタルエリアにいる朝日には、日村先輩がマークする。
小野寺が裏に走る。
ボン
千葉がロングボールを小野寺に蹴るが
バン
デ・ヨングがヘディングで跳ね返す。
バーン
ヘディングではね返したボールを右サイドバックの安達がヘディングで遠くに飛ばす。
「(さっきのシーン。
俺の練習試合で学んだことが通用しなかった。)」
幕井は無力感を感じる。
「(フォワードがプレスに出れば、片方のフォワードは相手のボランチのマークにつく。
それが、2・3年生のプレスの形。」
幕井は、2・3年生のプレスの形に気づく。
「だったら。」
1年生ボール。
ビルドアップの場面。
少し高い位置で千葉がボールを持っている。
「朝日!」
「わかってるよ。」
朝日と幕井は、相手のフォワードとボランチの間に立つ。
「食いつけ。」
幕井は相手のボランチの日村先輩と渡辺先輩が、幕井と朝日に食いつくことを願う。
「ブロック!
前に出るな!」
デ・ヨングが指示を出す。
フォワードの大宮先輩と春日先輩が幕井と朝日につく。
バイタルエリアをボランチの渡辺先輩と日村先輩が埋める。
千葉が安達にパス。
バッ
小泉先輩が千葉のパスをインターセプト。
2・3年生のカウンター
小泉先輩がボールを運ぶ。
大宮先輩と春日先輩が駆け上がる。
幕井と朝日が下がる。
小泉先輩に千葉が寄せる。
サッ
小泉先輩がアウトサイドで、キーパーとディフェンダーの間にスルーパス。
春日先輩が走り込む。
ゴールまで10m
ドン
春日先輩がダイレクトでボールを蹴り込む。
ゴール
シュートコースは甘いが、八木の身長では手が届かず、ゴールに入る。
ピー
1-0でリードされ、1年生ボールで試合を再開する。
その後も、2・3年生チームがシュートを打ち続ける。
かなり1年生チームが押し込まれている。
バン
渡辺先輩がミドルシュートを打つ。
ブン
千葉が足を出してシュートブロックする。
こぼれ球が佐藤にこぼれる。
左足一閃
左足で佐藤が打ち抜く。
バン
木村がスライディングでシュートブロック。
こぼれ球が、森田にこぼれる。
森田が左サイドをドリブルで運ぶ。
森田はドリブル中に顔を上げていない。
バッ
日村先輩が森田に体を当て寄せる。
「うわ。 まじかよ。」
森田が顔を上げてみると、佐藤や日村先輩などに囲まれていた。
攻守の切り替えが早い。
森田がボールを取られる。
幕井は切り替える。
だが、奪いにいかずにブロックを敷く。
ポン ポン
日村先輩は右サイドの佐藤にパスを出し、ワンツーで日村先輩にパスを出し、幕井を置き去りにする。
その後も、1年生チームはボールを奪う場面はあるが2・3年生チームの切り替えの早さでボールを奪い返される。
2・3年生チームがシュートを打ち続ける。
1年生チームは防戦一方。
ディフェンスラインの安達、千葉、木村、加藤が体を張り続ける。
しかし、一番の問題点はビルドアップ。
なかなか、攻撃面でボールを支配できない。
後半28分
2・3年生ボール。
1年生チームは押し込まれている。
渡辺先輩がデ・ヨングからパスをもらう。
大宮先輩がバイタルエリアに落ちる。
バン
渡辺先輩が大宮先輩に縦パス。
大宮先輩が前を向く。
すぐに、木村が寄せる。
ドーン
大宮先輩が右足を豪快に振り抜く
ゴール
ゴールのひだりサイドネットにシュートを突き刺した。
その後も、1年生チームは良いシーンを作れず。
ピー
佐久間先生が笛を鳴らす。
0-2で1年生チームは敗戦を喫した。
試合が終わり、ベンチに戻る。
「何も通用しなかった。」
幕井は無力感を痛感する。
いや、出た選手全員が無力感を痛感している。
山崎監督がやって来る。
「千葉。
こっちのチームで練習。」
山崎監督が選んだ1名は千葉だった。
「はい、」
千葉は返事をするが、声は弱々しかった。
そのまま、2・3年生チームの練習に向かった。
松長先生が口を開ける。
「とにかく、攻守の切り替えが遅すぎる。
ボールを奪ったら、すぐにサポート。
ボールを奪われたらチーム全員ですぐにボールを奪い返しにいく。
それができなきゃ、BIG8になんて勝てない。」
松長先生は厳しい言葉をかける。
ただ、このゲーム内容じゃ当然だ。
「このままじゃ、 2年後、おまえらの代になったときにデ・ヨングと佐藤、それから千葉におんぶされたままになるぞ。」
松長先生は現実を突きつける。
練習終わり。
給水場で幕井が顔を洗っている。
「幕井だよね。」
「え?」
声をかけたのは、小泉先輩だった。
「はい。 幕井竜二っていいます。」
「いい名前だね。
プレーに関してはボランチって感じでいいね。」
「紅白戦のプレーですか?」
「うん。
グラウンドの中で、おまえが一番首を振ってたよ。」
小泉先輩は幕井を褒めるが、
「いや、ひどいですよ。」
幕井は褒められたが、否定する。
「多分、おまえが言ってるのは攻守の切り替えのことだよね。
なんか、幕井の守備は引きすぎなんだよね。」
「え?」
幕井は思ってもないことを言われる。
「ヨーロッパのサッカーは、守備はガツガツいくんだよ。
それで、剥がされたりするんだけどね。
でも、奪いにいくんだよ。
野獣のように。」
小泉先輩の言葉には強さがあった。
「野獣?」
「幕井、ボールに怖がるなよ。」
と言って、小泉先輩は立ち去る。
「あっ そうそう言い忘れてた。
ビルドアップに関しては、君の目と脳が気づいてるはずだよ。」
と言って、今度こそ小泉先輩は立ち去っていった。
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