第12話 テルメス ウズベキスタンより
親愛なる友へ
今、ウズベキスタンの南端、テルメスにいる。
アフガニスタンとの国境に近く、砂漠と川の狭間に佇む古い町だ。
ここはシルクロードの交差点であり、仏教が栄え、戦士たちが行き交った場所でもある。
市場で見つけたこの絵葉書には、**「ファヤズ・テパ」**の仏像が描かれている。
穏やかに微笑むその顔は、まるでこの乾いた土地に静けさをもたらそうとしているようだ。
遺跡を訪れると、現地のガイド、ラフモンが案内してくれた。
「ここにはかつて巨大な僧院があった」
と彼は言った。
「仏教徒たちはこの地で祈り、旅人を迎えたんだ。今は砂に埋もれているけれど、仏の心はここに残っている」
砂の中からわずかに顔をのぞかせる仏の姿を見ながら、遠い昔の祈りを感じた。
アムダリヤ川のほとりに立つと、対岸にアフガニスタンの山々が霞んで見えた。
その川辺で、地元の漁師、アジズと出会った。
彼は私を小さな船に乗せ、川をゆっくりと進んでいった。
「テルメスは戦争と交易の町だった」
と彼は語る。
「この川を越えて、かつては兵士も商人もやってきた。今も国境の町としての面影が残っている」
彼の網には大きなナマズがかかっていた。
彼はそれを見てにっこりと笑い、
「今日は運がいい」
と言った。
市場でそのナマズを焼いたものを食べた。
香ばしく、スパイスが効いた味が口の中に広がる。
テルメスでは川の恵みもまた、歴史の一部なのだ。
テルメスの名物のひとつに、「パティル」というパンがある。
分厚く、しっかりと焼かれたこのパンは、かつて戦士たちが遠征に持っていったものだという。
市場のパン屋で、年老いた職人、オロズバイが
「このパンは戦士の糧だった」
と教えてくれた。
「昔の兵士たちは長い旅の間、これを食べながら進んだんだ」
焼き立てのパティルをちぎって食べると、香ばしい小麦の香りが広がった。
彼は私に焼き印を押した特別な一枚をくれた。
「これは旅のお守りだよ」
と微笑んで。
このパンのように、テルメスの人々も強く、しなやかだった。
テルメスの最後の夜、私はラフモンと共に「カラ・テパ」の遺跡を訪れた。
星空の下、古い石の壁に触れると、そこに刻まれた歴史が指先に伝わってくる気がした。
「この町は、戦士と仏僧の町だった」
とラフモンが言った。
「剣と祈りが交差する場所。それがテルメスだ」。
私は市場で買った小さな仏の彫刻を手に取った。
土の香りのするそれは、この町の記憶を宿しているようだった。
テルメスの風は、過去と現在をつなぐ風だった。いつかまた、この国境の町を訪れたい。
友へ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます