第13話 アシハバード トルクメニスタンより
親愛なる友へ
ついにトルクメニスタンにたどり着いた。
砂漠の風が頬を撫でるこの街、アシハバードから便りを送るよ。
中央アジアの真珠と呼ばれるこの街は、白亜の宮殿や壮麗なモスクが並ぶ美しい都市だ。
まるで大理石の夢の中を歩いているような気分になる。
今日、地元のバザール「タルクーチカ・バザール」に行ったんだ。
市場は香辛料や果物、絨毯で溢れ、活気に満ちていた。
屋台で「イシュレク」という肉と玉ねぎを詰めた揚げパンを買い、食べながら市場を歩いていると、一人の老人が話しかけてきた。
「お前はどこから来た?」
「日本だよ。」
彼は驚いたように目を丸くし、嬉しそうに笑った。
「私の息子が日本で働いているんだ!」
と誇らしげに話し、家に招待してくれた。
彼の家は伝統的なトルクメンの装飾が施された素朴な家で、家族全員が温かく迎えてくれた。
夕食には「プラフ」というスパイスの効いた炊き込みご飯を振る舞われ、食後には「チャイ」(紅茶)とともに「パクルワ」という甘いお菓子を出してくれた。
トルクメニスタンの家族の絆の深さや、見知らぬ旅人にも惜しみないもてなしをする心に感動したよ。
次の日、街の歴史を感じるために「ニサ遺跡」へ足を運んだ。
ここは古代パルティア帝国の遺跡で、砂に埋もれたかつての王国の姿が今も静かに眠っている。
ガイドをしてくれた青年は
「この土地の人々は、誇り高くも穏やかで、歴史とともに生きている」
と語った。
旅の記念に、バザールでトルクメンの伝統的な絨毯を買った。
手織りの模様が美しく、繊細な技術が詰まっている。
絵葉書も見つけたので、こうして君に書いている。
このトルクメニスタンのまたどこかの街から手紙を送るよ。
それまで元気で。
友より
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