タカシ君の事が大大大好きなマウスちゃんと素直になれないツンデレなスマホちゃん♡

なつの夕凪

第1羽♡ 大スクープ! あのタカシ君(♂20歳)にカノジョ出来た疑惑!!

 

 ……今は午後8時です。

 私は今日もタカシ君の帰りを待っていました。

 

 ずっとずっと待っていました。

 だって私には待っている事しかできないから……


 あ、すみません! 挨拶が遅れました。


 こんばんは。

 はじめまして私はマウスちゃんです。

 

 タカシ君がお家で使っているパソコンのコードレス光学マウスです。

 

 自分で『ちゃん』を付けるのも変ですが『マウス』だけだとネズミさんみたいなので『マウスちゃん』って呼んでくれると嬉しいです。


 タカシ君は私のご主人様で大学2年生、最近は履修科目が多くて大変みたいです。でも今日は大学の用ではなく別の理由で遅くなるみたいです。

 

 その理由ですが……なんと! 君に彼女さんができたかもしれないのです!

 

 どうして彼女さんができたかもしれないのかっていうと、昨日タカシ君が新しい服と靴を買ったんですよ!

 

 あっ! 

 タカシ君の普段を知らないですよね……ごめんなさい。

  

 タカシ君は私がこの家に来てから新しい服を一着も買っていません。いつも着てるネルシャツは襟がヨレヨレになってます。ジーンズにも大きな穴が開いてます。

 

 おしゃれで開けた穴なら良いですが……あれは多分違うと思います。私はオシャレをしないからわからないですけど絶対に違うと思います。

 

 そんなタカシ君が急におしゃれさんになるとしたら、彼女さんが出来たとしか思えないじゃないですか!?


 彼女さん♪ 彼女さん♪ タカシ君の彼女さん♪


 どんなひと? どんなひと?


 私も会ってみたいです!


 早くタカシ君の帰って来ないかなぁ……そんてことを考えていたらドキドキしてきました。

 

 でも私は光学マウスだから、どこがドキドキしてるのでしょう?

 

 ひょっとして故障しちゃたのでしょうか?!

 

 うーーわかんないのです!


 でも少し複雑です。

 

 もうお気づきかもしれませんが、私はタカシ君の事が好きだからです。

 

 だから嫉妬します、嫉妬しちゃいます!

 今晩はヤケ酒ですよーー! 

 

 ムキ~~って!

 

 ……でもマウスだからヤケ酒もできないです。 

 

 切ないです。

 とてもとても……。

 

 ――おっとっと。


 廊下から足音が聞こえます。あれはタカシ君の足音違いありません。

 毎日タカシ君の帰りを待っていたら足音を覚えてしまいました。

 

 すごいですか? 

 愛がなせる技ですよ! ふっふっふっ~♪


 ――ガチャ!


 しまりの悪い部屋のドアが開きタカシ君がゆっくりと入ってきました。


 「おかえりなさい~タカシ君!」


 私の精一杯でタカシ君をお迎えします。でもタカシ君には私の声が届きません。

 

 「今日もお疲れ様です。いつもより疲れた顔してますけど大丈夫ですか?」


 ……タカシ君からは返事はありません。

 

 声が届かないのは寂しいです。

 それでもタカシ君をお迎えるお嫁さんみたいで私はすごく嬉しいのです!


 タカシ君はカバンを机の横に置き、薄手の紫のジャンパーを脱ぎました。そしてカバンからスマートフォンを取り出し机の上にポンと置くと、晩ご飯を食べるため部屋から出て行きました。


 「いったぁい――! ちょっとタカシ! いつも丁寧に扱ってって言ってるじゃない! また壊れたらどうしてくれるの!?」


 スマートフォンはすごい剣幕でいなくなったタカシ君を怒鳴りつけてます。  


 「おかえり――スマホちゃん、大丈夫?」

 「ただいまマウスちゃん、タカシったらホントデリカシーがないのよ! まったく」


 彼女の名前はスマホちゃん。

 

 スイカのマークでお馴染みの海外某有名ITメーカーが開発した5G対応最新スマ-トフォンです。

 

 高速処理、大容量記憶、4カメラ高画質同時写真撮影、動画再生機能、骨伝導対応がスマホちゃんの自慢です。


 「でもタカシ君はいつもはスマホちゃんと一緒ですよね」

 「当然よ! タカシはアタシがいないと何にもできないから!」


 スマホちゃんはいつもタカシ君に厳しいです。でもそれはタカシ君の事を思ってのことです。


 きっとスマホちゃんもタカシ君のことが……


 「いいなぁスマホちゃんは……私もタカシ君とスマホちゃんと一緒にお出かけしたいです。いつもお家でお留守番だし」


 「良い事ばっかじゃないわよ。タカシはすぐアタシを忘れそうになるし、この前も大学の先輩との飲み会で、居酒屋の机の上に私を忘れそうになったのよ! もうバカタカシ! しっかりしてほしいわ」

 

 「あらら、それは大変でしたね。タカシ君は酔っぱらってたんですか?」


 「そうね、先輩に合わせて無理して飲んでたらから酔っぱらってたと思う。アタシが飲み過ぎるなって止められばいいのに……」


 スマホちゃんの表情はわからないけど、今きっと寂しそうな顔をしてます。

 

 私たちの想いをタカシ君に伝えられる方法があればいいのですが、残念ながらありません。

 


 ……神様


 もしいらっしゃるなら、たった一度だけでいいです。


 私たちの想いをタカシ君に伝えてください。


 どうかどうかお願いします。






 あ、そういえば……。

 私はようやく大切な事を忘れている事に気が付きました。


 「スマホちゃん! タカシ君の彼女さんはどんな人でした?」


 今大事なのはタカシ君の彼女さんが出来た疑惑です。 果たして真相は如何いかに……。

 

 「その……空振りだった。いつもの男メンツとカードゲームして終わり」

 「え? そ、そうだったのですか」


 すごく残念な反面、それ以上に喜んでるマウスちゃんです……う~ちょっと嫌です。いじわるな子でごめんなさい。


 「友達に服がヨレヨレなのを注意されて仕方なく買ったみたい。急に服と靴を買いに行くから、アタシが勝手に彼女ができたと舞い上がっちゃって、ごめんねマウスちゃん」


 昨日スマホちゃんがタカシ君に彼女さんができたかもと言ったところから、タカシ君に彼女さんできた疑惑は始まりました。

 

 私達は恋愛経験がないから、勝手に決めつけて盛り上がってしまいました。


 すみません反省します。

 ごめんなさいタカシ君。


 「スマホちゃんのせいじゃないです。私も彼女ができたものだと思ってました」

 「じゃあ、マウスちゃんおあいこで!」


 「はい、でもいつかタカシ君にも彼女が出来ますよね?」

 「当然よ! タカシはバカだけど優しいからきっと好きなってくれる女の子がいるわ!」


 「私もそう思います」


 「アタシね自分の性能をフルに使って、タカシの初デートをエスコートするのが夢なの! それでタカシにいっぱいいっぱい幸せになってもらうの!」


 ……今のスマホちゃんはきっとキラキラしています。

 その真っ直ぐな想いはとてもとても眩しいです。


 「マウスちゃんの夢は?」


 「私はスマホちゃんみたいにタカシ君の役には立てないけど、一日でも長くタカシ君のそばにいることです」


 マウスは消耗品なのでいつか壊れてしまいます。

 せめて一日でも長くタカシ君の……大好きな人のそばにいたいです。


 「マウスちゃんったら本当に一途だよね。もうかわいいんだから」

 「え!? スマホちゃんも同じですよ!」


 「ち、違うから! アタシはスマホとしての役目よ……そうよ役目! 普通の事でしょ!」


 自分の気持ちに素直になれないスマホちゃん。

 そんなところもかわいいと思います。

 

 その後、タカシ君が部屋に戻ってくるまで、私とスマホちゃんはずっとお喋りをしてました。

 

 私たちの声を届かないけど、いつか私たちの想いが届いたら嬉しいのです。

 

 神様、お願いです。

 

 どうかどうか……

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