この物語は「涙」を「媚薬」に例えることで、涙が人の心を動かす本質を巧みに描いています。媚薬とは相手を惹きつけ、時に惑わせる力を持つもの。作中では、涙がまさにその役割を果たし、登場人物たちの感情に大きな影響を与えます。しかしこの媚薬が真の効果を発揮するには条件があることが、物語を通して示されていきます。
主人公・よしきは、ある出来事をきっかけに迷いの中へと足を踏み入れます。その中で、彼に寄り添う相手と、過去に想いを寄せた相手との間で揺れ動きます。作中では、それぞれの涙(媚薬)がどのように相手に作用するのかが、繊細な心理描写とともに描かれています。
ここで重要なのは、涙が本当の媚薬となるのはどのような時か、ということです。ただの悲しみや後悔、自己憐憫では、媚薬は真の効果を発揮しません。そして媚薬の効果が発揮されたとき、物語はどのようなラストを迎えるのでしょうか?
この物語は短編ながら計算された展開と深いテーマ性を持ち、読後に非常に深い余韻を残します。人の心がどう動くのかを見つめ直させてくれる、繊細で奥深い作品でした。