矢部麗×広尾敬太

わざわざ、通路を歩いて俺の隣にやって来たうらら。

寝ていた俺を無理矢理、起こす。



「……なに?」



不機嫌に答えたのにそんなことは気にもかけずに相変わらずのテンションで笑顔のまま聞いてくる。


「けーた、頼みがある!

これ、明日一緒に竹沢先輩に渡しに行こう?」



そういえば昨日大阪で、うららは一生懸命お土産を探してな。



「いいよ。つーか、それだけ?

わざわざ何で起こしてまで言うの?」



俺の言葉にうららは「これだけじゃない。」と、手を後ろに回した。



そこから出てきたのは俺が欲しいと思ってた地域限定のお菓子。



「じゃーん!」



そのうららの大声のせいで隣で寝ていたよっしーがビックリして起きる。


「……声でけーよ。

よっしー起きちゃったよ」



「あ、ごめん!でも、ほら!これ!」


「さっき自分で買ったよ」



俺は答えながらビニール袋を指差した。



「うわ、ホントだ!」



そのお菓子をまた、後ろに隠そうとしたけど。



「もらっとく」


うららの手からお菓子を奪いお礼を言ったら、うららがまた笑う。



「相変わらず仲良いね」



うららが席に着いたのを確認した上でよっしーが聞いてくる。



「矢部さんにはまだ、言ってないの?」


「……言えないよな」



うららの好きな竹沢先輩には長く付き合ってる彼女がいて、その彼女は病気で。



「言ったところで何も変わらないし」



俺はうららが好きだけど、うららのことが欲しい訳じゃない。



「でも、言わないとダメだよな」



欲しい訳じゃないけど。






**


幸せにしてやりたい

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