安西孝×赤坂拓海
眠そうにする孝の頬にに俺はわざと冷たい水を当てた。
「リアルにうぜぇ……」
小さくため息をつきながら俺に水を押し返す。
「まじ、なんだよ?俺寝たいんですけど」
「だって暇なんだもん。だいたい孝は寝すぎだよ。
移動の度に寝てるから俺達いっつも席隣なのに、全然会話してないじゃん!」
俺の言葉にまたため息をつく。
ため息をつきながらも上体を起こしてくれる。
「彼女に何買った?」
俺はきーちゃんに買ったハンカチを孝に見せる。
「これ!どう思う?」
「良いんじゃね?かわいい、かわいい」
そしてまた自分のブレザーを顔にかけ寝るモードに入る。
その時、通路を挟んだ隣の席の舞が、隣のクラスの男子に、一緒に写真を撮ろうとせがまれていた。
舞は明らかに迷惑そうだがはっきり断れない。
すると寝ていた孝がブレザーを顔からズラし「うるさい」と、呟いた。
振り返る舞と男子。
「舞、嫌がってるだろ。写真とかやめとけよ」
孝に言われ、渋々去る男子。
「ありがとう」
舞は驚きながらも小さい声でお礼を言った。
「別に良いよ。うるさかっただけだし」
そしてポケットからチョコを取り出し舞に渡した。
「はい、あげる」
目をパチクリさせてチョコを受け取る、舞。
「え……?二人、付き合ってるの?」
俺は孝の耳元で舞に聞こえないように聞いた。
「いや?違うけど」
「なんか孝、舞に優しくない?」
すると孝はうーん、と鼻で唸った。
「舞って、なんか放っておけない」
「舞のこと、好きなの?」
「好きにはならない」
そう答えた孝の顔はブレザーに隠れて見えなかった。
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見えない気持ち
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