新幹線に乗って

斗花

新大阪→浜松間

塚田疾風×新庄和彦

新幹線に乗り込むと疾風はすぐに席を見つけ

俺を窓際に座らせる。


帰りの新幹線と行きの飛行機は座るペアが同じだ。



「いやー、長かった!でも楽しかったな!」


荷物を足元に置きながら疾風が笑顔で俺に言う。



「あぁ、そうだな」



疾風の話を適当に流し俺はイヤホンを耳にした。


「……え?音楽聞くの?」


疾風は俺の足元も綺麗に整理してくれた。


「うん。あ、疾風も聞く?」



俺は断ることを分かってて疾風に片耳のイヤホンを差し出した。


「変だろ、男二人で」



俺は音楽を聞きながらじゃないと眠れない。



それは昔、父親の怒鳴り声を聞かないよう音楽を聞きながら寝ていたからだ。


そしてそれを知ってるのは疾風と歩だけ。



「……なぁ、疾風」


「平気だよ、別に。

寝言言ってたら起こすから」



俺が言う前に疾風が笑いかけてくれた。



不安が消えた訳じゃない。傷は治ることはない。



だけど。



「さんきゅ。じゃ、おやすみ」



だけど、俺はやっぱり少しずつ変わっていて。



「……あ、疾風」


「なに?」


「車内販売来たらお茶買っといて」



俺のわがままにため息をつく。



疾風がいなかったら俺は多分まだ、あの闇で独り泣いていたのかな。



「お前が女だったら二番目の女にしてたのに」


「早く寝ろよ」



俺の発言に鼻で笑い呟いた。






**


ただし、二番に限る。

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