和泉淳士×春日結奈
隣の座席で相変わらず少女漫画を熟読している淳士。
「まだ漫画読んでんの?」
ただ、行きの飛行機とは表紙が変わっていた。
話によると、幼なじみの女子から六冊ほど漫画を借りてるらしい。
「来週なんだってよ」
漫画から目を外さずボソッと呟いた。
その幼なじみはアメリカに留学するらしい。
「面白い?」
私が漫画を覗くと漫画を渡してきた。
「分かんねぇよ。
こんなの読んだって女心なんて」
なのにそれでも次の漫画を取り出す。
「……まだ読むんだ」
「あいつの言うことは聞いてやらないと」
そして漫画を開き、言う。
「何も言わねぇんだ、昔から。
大切なことは言わないで、笑ってごまかしたり嘘で隠したりして、強がるんだよ、すぐ」
その子は文化祭に来ていて、一回だけ会ったことあるけど、すごい可愛いし明るくて、人懐こくてスズと明日香とはメアドも交換してた。
「私の見た冴島さんとあんたの話の冴島さん、だいぶ違うんだけど」
「あぁ、だろうな。
あいつは自分のそうゆうところ嫌ってるから。
隠そうとするしネコも被る」
そして私の目を見た。
「でも、良い奴だぞ」
「やっぱり、寂しい?」
私の言葉に淳士は頭をかく。
「寂しいっつーか……。
近くにいるうちに聞きたいこととか言いたいことは口にした方が良いって、なんか、思う」
なんでかは分からない。淳士は自虐的に笑った。
「分かってるつもりが何も分かってないのが一番、格好悪いよな」
また、漫画に目を移し熟読し始める淳士を見て、私はもう聞くこともなく、静かに目を閉じた。
**
言えない、言わない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます