第2話

俺と冴島さえじま由香ゆかは小学校からの知り合い。


同じアパートに住んでるから中学校も同じで高校は離れたけど、住んでる所が近所だから


今でもよく会う。



でも、付き合ってる訳ではなくて、確かに仲は良かった。


ただ、それだけだ。



なのに去年の文化祭にあいつが来てから俺の友達は大騒ぎ。

俺って浮いた話ないから気持ちはわかる。



でも俺にも彼女いた時くらいあんだぞ。

今、たまたまいないだけ。


たまたま、いないだけ!!




欲しいともあんまり思わねーしな。



別れるとか、付き合うとか、そーゆーのは本当に面倒だって、つくづく思う。



「じゃーな、ウサ。明日も二人で頑張ろうぜ」



俺が自転車に跨がるとウサも頭を下げてきた。



「冴島さんに会えるの楽しみにしてまーす!」



もう否定するのもダルいので何も言わずに帰った。


家に着くと母さんに明日の時間を聞かれる。


「……来なくて良いよ」


「何言ってんのよ!


あんただけじゃなくて塚田くんや新庄くん、舞ちゃんやりのちゃんも、いるんでしょう?」



俺の通っていた新山第二中学校の学区は桐の近くな為、先輩や後輩や同級生も多い。



「それに由香ちゃんもくるって」



冴島は俺の母さんにももちろん、知られている。

あいつは中学でも目立つ存在だったし。



「由香ちゃん、綺麗になったわねー。

この前、男の人といたわよ?


あんた、どーするの?」



どーするもこーするもねーだろーが。



「ごちそうさまでしたー」



母さんの話は殆ど無視して食事の席を立つ。

全く……。何なんだよ、一体。



冴島と仲良いのは別に俺ばかりじゃない。


ただ、一緒にいる時間が長いから他の奴より少し詳しく知っていて、少し話して、それだけだろ。



第一、俺はあんな気分屋を彼女にするなんて絶対に無理だ。



冴島は第一印象は確かに、おしとやかーっつーか、癒し系ーっつーか……。



でもそれは見た目の話で、実際はすげーうるさいし、一分ごとに機嫌変わるし、わがままだし。


この前だって何やら意味深なメールがきて、俺は本気で心配したのにあいつは笑顔。



「ドッキリかけてみましたー!」



ドッキリって…。


どこまでが本気で、どこからが嘘なのか分からねーんだよなぁ。



学校が離れるのって初めてで、違う制服を着てるのは新鮮で。


だけどあいつは何にも変わらない。


彼氏ができたとか騒いでいたし、明日もその彼氏と来るらしいけど。


それでヤキモチとかを妬くような、そんな感情も通りすぎてしまった。



そんな俺らの関係を人は『幼なじみ』と、呼ぶのだろう。

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