第3話

午前中の店番が終わってしばらく経つと、友達の福本幸也ゆきやが女を連れて来た。


「いらっしゃ……なんだ、フクかよ!あ、それが秀の妹?」


フクが連れていた女はクラスメイトの妹だった。


「そう。手、出すなよ」



笑いながら言うフクを見て、こいつ本気で言ってんなと、思った。



「お前のその笑顔、怖い。

えっとー、蘭ちゃんだっけ?


何か欲しいのある?良かったらあげるよ」



その女は背が低くて、なんつーか……。


幼い?……フクに言ったら殺されそうだな、うん。


「えっとー、」


その女の子が迷っているとフクが自らボールの入った籠をとる。



「蘭ちゃん、ちゃんと取ってあげる」



そう言いながら俺にルールを確認して、マジになるフクを見て、あぁ、そーゆーことか、と感づいた。



フクには世話になってるし、ちょっと気を利かせてやるかな。


そう思い俺はその女の子にフクの話をしてみる。


「フクって何でもできるけど、あんなにマジなフク、滅多に見ねーよ」


「……そうなんですか?」


「かっこいいとこ、見せてーんだな」



俺が言うとその子は少し顔を赤くして嬉しそうにした。



あ、なんかフクが好きになる気持ち少し分かるかも。



「……よしっ!淳士、俺全部抜いたぞ!」


「ゆきくん、すごいっ」



その女の子はそう言いながらフクに抱き着いた。


……はぁ?!いやいや、おかしーだろ!



「どれもらう?」



それで何でお前はそんな平然としてんだよ?!



何だか気を利かせたことがバカバカしくなって、おまけに目の前でイチャつかれたことに腹立たしくなった。



「彼女いねーんじゃねーのかよ?」



俺がフクの耳元で言う。



「うん、彼女じゃないし。秀の妹だから」


笑って答えたフクを見て少し怯む。



「ゆきくん、私、これにするっ!」


「うん、分かった。じゃ、淳士。店番がんばれよー」



そう女子と腕を組みながら教室から出るフクを見て、あいつもあいつで苦労してんなー、と思った。



午後の休憩まであと、10分。



……まぁ、休憩って言ってもたったの一時間だけどな。



「ウサー、何か飲み物買ってくる。お前もいるか?」


「あ、はいっ!コーラで!」


「おー。じゃ、それまでよろしく」



この時間、俺とウサの二人で店をまわしてる。


体育館で映画上映中だから客も少ないしな。



自販機でコーラとお茶を買い俺は教室に戻った。




「ウサー、コーラ買ってき……」



目の前の光景にア然となる。



「あっ、先輩!お帰りなさい!」



「いずみー!久しぶりー!」




「冴島……。お前、何してんだよ?!」


「え?何って……。

和泉の後輩と一緒に和泉の写真を見てたんだよ?」



そこにはこの前の試合後、俺がバカ騒ぎしてる写真が散乱していた。



「ウサ!お前、何見せてんだよ?!」


「えー、だって……」


「だってじゃねぇ!良いからしまえ!

冴島も、彼氏どーした?!」



「映画見るから好きなことしてて良いよって言われたー。

つーか和泉、休憩なんでしょ?」



時計を見ると丁度、12時だった。

横を見ると交代の奴も来ている。

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