私に刺さった小骨について
天田れおぽん@初書籍発売中
私に刺さった小骨について
心の臓あたりに、その骨は刺さっている。
私の命を繋ぎ止めた呪物が、そこにある。
「レナ! そっちに行ったぞ!」
黒い影が飛んでセオの声が響いた。
「レナ! 片付けろ!」
カイが私に命じる。
「殺!」
言葉は、なんでもいい。
意識を集中するための言葉。
術の名を知らずとも、術は放てる。
「グァッ!」
「ウグッ!」
「ウゥ……」
赤い血をまき散らして尽きる命を、私は見ている。
数年前の戦で、私は一度死んだ。
私の命を繋ぎ止めるため、国は呪物を私の体に埋め込んだ。
「レナ! また来た!」
「今度は群れだ!」
同じ形をしている生き物なのに、彼らは『群れ』でしかない。
人に見えるが、人ではないのか?
私は再び名も知らぬ術を放ち、群れを殲滅した。
「よくやったレナ!」
セオが私の背を労うように大きな手でポンポンと叩く。
「これで国の平和は保たれる! お手柄だ、レナ!」
カイは満足そうに言うと、節くれだった細い指で輪を作り、口笛で連絡用の鳥を呼び寄せた。
私は己の手を見る。
いかにも女性のものといった細く白い指は、返り血で赤く濡れていた。
自分の名前や出自も、どんなふうに育ったのかも、覚えているけれど。
今ここに居る私は、本当に私なのか?
心の臓あたりに刺さった骨が小さく笑ったように揺れて。
私の胸はチクリと痛んだ。
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