第8話

side 実梨


「新入生の皆さんには、、、」



妹たちと別れたあと入学式に参加するために講堂に来た。


入学式の名物と言ってもいい、偉そうな人の長い話がいつまでたっても終わらず、みんな眠そうだ。


ぼんやりときいていたら、話が終わったらしく席に戻って行った。それと同時に周りがざわざわし始めた。


「新入生代表挨拶、月城綾斗」


あ、月城組のと思ったのも束の間。


「きゃーーーーーーーーー!」


まだ姿が見えてないのに悲鳴があがった。


え、すっごい。アイドルかなにか?まだ名前呼ばれただけだよね?姿現したら失神者が出るんじゃない?


そんな中ついに壇上に、月城綾斗が姿を現した。


さっきまでとは打って変わって、水を打ったように会場が静かになった。


ただ歩いているだけなのに、圧倒的なオーラがある。

黒い髪に綺麗に整った顔もあいまって、神聖的な雰囲気まで漂っている。


物音ひとつしない静寂の中、あいさつがはじまた。


「暖かな春の日差しが──────」


少し気だるげな低く綺麗な声は、はじめて聞いた声のはずなのにどこか懐かしさを感じた。



少し俯いて、その懐かしさの訳を考えているうちに、挨拶が終わったらしく、周りから拍手がおくられていた。



もう一度顔を上げると、目が合ったと思ったが、ほんの一瞬だったし、気のせいかと思い直し、許嫁らしい人物の降壇を見届けた。




そうして入学式が終わり、教室に移動した。

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