第7話


~紬~



むー、大丈夫かな。後でちゃんと報告会しなきゃだな。



ゆーくん来ないなー。

会うの久しぶりで緊張するなー




なんて考えてると、扉の開く音がした。






「久しぶりだね、ゆーくん。」




軽く笑って話しかける。あくまで普通に。





「久しぶり、つーちゃん。」



ニコッと笑い返される。



星野兄弟の弟である、星野悠

昔より少し大人っぽくなったけど、どこか笑顔に無邪気なところがあるのは変わらない。



「さっそく本題に入らせてもらうね。私たちとお姉ちゃんに関わらないで。」




そんな事を考えてるとは悟らせないように、わざと雰囲気を変えて言う。



「分かったとは言えないかな。ごめんね」



雰囲気が変わったことに全く気にせず、困った顔で返された。



「そーだよね。」



だいたい予想出来てたことなのでこの返答に驚きはしないが、これから先を思うとため息が出る。





「あれ?思ってた反応と違う。もっと噛みつかれると思ってた」


「うん、まぁ私も思うところがあるんだよ。」






今朝おじいちゃんに言われた言葉は必ずしも間違ってるとは言えない。そろそろ私たちも変わらなくてはいけないのかもしれない。



「相変わらず、食えない人だね」


「りっくんほどではないけどね」


「ふふ、そうだね。兄さんは厄介だ」





そういうゆーくんが私にとっては1番厄介なんだけど。




久しぶりにこんなに近くで見た。背は昔同じくらいだったのにいつの間にかこんなに高くなっている。



同じ学年だから、たまに遠くから見かけることもあったけど避けてたし。





焦げ茶の髪の毛で、少し幼さを残した顔。でもやっぱり大人っぽくなっていて、近くで見ると溢れだしそうになる気持ちがある。




でもこの気持ちは蓋をしなくては。いつかこの思いに答えを見つけ出したいとは思うけど、今じゃない。



「さて、じゃあ交渉は決裂ってことで、この辺で失礼させてもらうよ。わざわざ来てくれてありがとー」



この空間から出られることに少し気を抜きながらドアに向かう。




「うん、これからよろしくね、同じクラスだし」


「ソウデスネ」



ドアを開けたところで言われた言葉に振り向き、カタコトで返してしまう。思うところはあるが、こんな急な変化は求めていない。



「すっごい片言」



くすくす目の前で笑っている人はやっぱり掴みどころがなくて、少し悔しい。




「またね」




仕返しに返した言葉はやけくそだったけど、ドアを閉める瞬間に驚いている顔が見れたからよしとしよう。




「本気で行くから、覚悟してね」




パタンとドアが閉まった音にかき消されたつぶやきが私に聞こえることはなかった。

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