幻獣のいる世界②ドライアドなら、頭の上に花を咲かせろ
冒険者たちのぽかぽか酒場
第1話 ラスト、いやみ入っています…入社式の花を見て、幻獣(精霊)のドライアドに出会ってしまったら?
入社式で、仲間の新入社員たちが言う。
「この会社で、花を咲かせるぞ!」
聞かされるたびに頭の上がかゆくなってきて、不安な決心が芽生えた。
「よし!学生時代にいたきらいな教師を、なぐりにいこう」
入社式を途中退出。
会社の外へ出てみると、変わったことの書かれた看板が立てられていたのが見えた。
「ようこそ、不安が安心に変わる花世界」
…こんな物、あったか?
仕方なく、あたりをうろつき回る。
変な町だ。
頭の上に木を生やす人たちが、話しかけてくる。
「こんにちは」
「こんにちは」
「私の頭、珍しいですか?」
「…」
「だってあなた、さっきから、私の頭の上を興味深く見ていらっしゃる」
「…」
今度は、何も答えられそうにない。
「私は、男ドライアドでしてね」
ああ、不安。
「ドライアド」
それは、神話に登場する、木に宿る妖精の一種。
ドリアードといったほうが、なじみ深い?
緑色の髪をして、人間より小柄な体型が多いとされる妖精。
なるほど、この男は小柄。
身体全体が、緑色。
髪の毛の緑色は、特に深い。
まるで、盆栽頭。
「大人になれば、花なんて面倒ですな」
不安になることを、言ってくる。
女の子ばかりのグループにも会ったが、同じく緑色。
「おっと…。女の子ばかりとか、今の社会には合っていない言い方か?」
苦笑いをすると、 1人が近付いてきた。
「ねえ、お兄さん?私たち花のあるドライアドを見て、どう思う?」
「花?」
良く見れば、子どもドライアドの頭の木には、花が咲いていた。
ドライアドの長老を名乗るじいさんにも、会った。
木も、ヒゲもゆれ…。
花は、すでにしおれていた。
「おや。あなたも、突然変異ですかな?」
ドライアドは、基本、女ばかり。
長老も、すでに会った男ドライアドも、突然変異で生まれたという。
「あの…」
「何ですかな、若者よ?」
「皆さんの頭に生える木を抜いてみたら、どうなるんです?」
聞くと、長老の顔の緑が一気に深まった。
「あなたは、この世界の者ではありませんな?元の世界に、戻られよ!」
気付けば、会社の中。
「…戻れたぞ!」
まわりの新入社員仲間たちの頭の上に、もう花はなし。
こちらの頭のかゆみは、消えている。
「いつも通り!」
妙に安心できたことは、言うまでもない。
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