第3話 と、謎の少年(ヒミツだよ~:フェル談)
問屋で大量の小麦粉に卵、青果物などを仕入れてハーミーの無限収納カバンに放り込んだトゥモは、プールリバの町をあとにしました。
「私の大事なカバンに変なもの入れないでよ」
ハーミーはプリプリ文句を言います。
そんなハーミーにトゥモは優しく語りかけました。
「この材料を使ってパンを作って青空喫茶で提供したら、■■ボンドにはなるぞ。その2割だから■■ボンドがお前のものになる。それでも嫌か?」
「うっそー!■■ボンド??」
ハーミーの瞳が通貨マークになって黄金色に光輝きました。仏さまのような笑顔の裏でトゥモが、「やっぱりこいつ、ちょれー」と心の中で舌を出しているなんて、捕らぬ狸の皮算用をしているハーミーには気付きようがありませんでした。
さて、ここからは、乗り合い馬車での移動になります。プールリバの西にある王都ドンドンから来たトゥモたちは、東の港町タイヤパンクを目指します。ただ、タイヤパンクは遠いので、直接行くことはできません。三つほど宿場町に寄らなければなりません。
乗り合い馬車に揺られてしばらくすると、丘に差し掛かりました。ひと気のない田舎道。すると、前方から馬に乗った荒くれ者どもがやって来ました。
「おらおら!有り金全部、差し出しな!」
一際ガタイのいいオッサンが、脅し文句を投げ掛けてきました。乗り合い馬車の乗客たちは大騒ぎ。自称神官の少年フェルは、となりを見ます。聖女さまを救いに行く勇者さまがいる…はずだったのに!
「い、居ない!?」
向かい側にいるハーミーは、こんな緊迫した中で、のんきに本を読んでいますが、もう一人の勇者さまのトゥモがいません。
驚くフェル。背後の幌が、ゆるんでバタバタしているということは…
「に、逃げた!?」
フェルは二重の意味で驚いていました。勇者なのにみんなを見捨てて自分だけサッサと逃げ出す卑怯っぷりと、自分に気付かれることなく逃げ出すという器用さに…
「あーあ。もう、手の内をさらさないといけないとはねえ…」
フェルは盛大にため息をつくと、立ち上がって乗り合い馬車から降りて、ならず者たちに向き合いました。
「この僕の手を煩わせるなんて、君たちホントに迷惑だね」
「何だと、このガキンチョが。大人にそんなクチを聞いてると、オトナになれなくなるぞ」
長剣を振り上げるガタイのいいオッサン。そいつに右手の手のひらを向けたフェルは、そこから魔方陣を展開させると、そこから光の網を打ち出しました。光の網は百メートル四方くらいに広がると、ならず者たちを包み込んで、中に閉じ込めてしまいました。フェルは、光の網に閉じ込められた、ならず者たちを、無慈悲な目で見下ろしました。
「どうもこの世界で簡単に人を殺してしまうと、面倒なことになりそうだからね。そのままじっとしていてもらうよ」
「お、おまえ、ホグホーグの魔法使いか…?」
光の網の中に閉じ込められてしまったガタイのいいオッサンが、フェルを見上げます。フェルは頭をかきました。
「違うよ。僕は人呼んで次元の大魔導フェル。ホントは神官のフリをして、この世界の観察に徹したかったのに、君たちのせいで早々と正体を明かさなければならなくなったじゃないか。この責任、どう取ってもらおうかな?」
愛くるしい笑顔を浮かべるフェルですが、ならず者たちは、ビクビク震え始めました。
「震えるのが好きみたいだから、しびれるヤツがいいのかな?」
フェルは右手の魔方陣から水蒸気を、左手の魔方陣から風を呼び出して、それらを混ぜ合わせると、稲光を作り上げて、それをならず者たちに、ぶちかましました。
「!!!…………」
ならず者たちは、情けない悲鳴を上げた後、そのまま失神してしまいました。
一仕事終えて、フェルは乗り合い馬車の方へと振り返ると、そこには勇者(?)トゥモが、何事もなかったかのように腕を組んで立っていました。
「さすが、勇者の従者。このくらいのことは、お手のものだな」
「トゥモさま。一体どこへ行っていたのですか?」
トゥモに非難の眼差しを向けるフェル。そんな眼差しなんか屁とも思わない表情で、トゥモは堂々と答えました。
「レディたちがいる中で大声で尋ねるとは、勇者の従者とは思えない軽率な発言だ。お前は、デリカシーというものを、少し勉強した方がいい」
「どういうことですか?」
「食事をしてしばらくすると、人間に限らず生物は、ある行為をしたくなる。そして、その行為は、簡単に口にすることをはばかられる。つまりは、そういうことだ」
「分かった~。う○こだ~♪」
あとからのんきにやって来たハーミーが、元気よく答えます。トゥモは、つかつかとハーミーの前にやって来ると、そのままゲンコツを落としました。
「いったーい!なにすんのよ!!」
「こんの、デリカシーのカケラもないお下劣ヤマンバが。ここにいる人たち皆が、俺のことを『う○こマン』って思うだろうが。お前、このオトシマエ、どうつけてくれるんだ?」
「オトシマエつけようにも、トゥモって別に、イケメンでも何でもないじゃん。落ちる好感度なんか、ないじゃん。言いがかりも大概にしてよね!」
「言わせておけば……」
「ちょっと待って待って待って!!!」
慌ててフェルが仲裁に入りました。
「不用意に聞いた僕が悪かったです。謝ります。だからどうか、ここはオンビンに…」
「ギャーギャーギャー!!!」
「ワーワーワー!!!」
つまらん言い争いをする二人と、その間に入ってオロオロする少年。その様子を、つめたーい目で、他の乗客たちは眺めるのでした。
勢いで3話目も書けてしまった。今後の展開なんか、全く考えていないのだが、つづく…のだろうか??
「おい、作者。こいつら、俺の仲間になるんだよな?」
「多分、そうなるんじゃないか」
「嘘だろ。こんな品性のカケラもない野蛮人どもと、高貴な俺さまが釣り合うはずないだろ」
「いんや、どっこいどっこいだろ」
「はん。俺さまが放つ高貴なオーラがみえないとは、作者は品性皆無だな」
「ハラーヘッター。お前、鏡に映る自分をよく見た方がいいぞ」
「何だよ、そのザンネンなものを見るような目は!俺さまは高貴な人間…のはずだ」
「プププププ…」
「わ、笑うなぁぁぁぁ!!!」
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