第4話 と、繁華街の元締め(ワシのセリフ、ないんだけど…:元締め談)

ここで、登場人物紹介…

作者の備忘録でも、ネタに詰まって苦し紛れにやっているわけでも、ありません(汗)…


トゥモ・グリズリー

王都ドンドンでパン屋を営む、くすんだ金髪の21歳男。肥満気味だが、身だしなみはパン屋らしく、ちゃんとしている。金勘定とかうるさいので、仲間のハーミーは、自分の体格にもうるさくなればと事あるごとに言うので、しょっちゅうケンカになる。


ハーミー・チャレンジャー

王都ドンドンにあるホグホーグ魔法学園支援魔法科の女子生徒。鮮やかな茶髪、翠玉色の瞳を持つ17歳。一旦集中モードに入ると、完全に周りが見えなくなる。本人は科学者気取りだが、服装から何から完全に魔法使い。支援魔法は使えるが、攻撃魔法とか回復魔法は使えない。思ったことをすぐクチにするタイプ。


フェル

プールリバで出会った、金髪碧眼の14歳くらいの少年。本人は神官を名乗っているが、どう見てもフツウの少年。だが実は、多くのとんでもない魔法を扱うことのできる魔法使いで、本人は次元の大魔導と名乗っている。トゥモとハーミーの間に挟まれて右往左往する不幸に見舞われる。



 乗り合い馬車の終着点トンボスの町には小さいながらも繁華街もあり、人通りもよく、そこそこ賑わっていました。乗り合い馬車の馭者から、お勧めの宿を聞き出して、チェックイン。ロビーに廊下、あてがわれた部屋も清掃が行き届いていて、汚いのがキライなハーミーも大満足。ただ…

「私、女の子なのに、何でアンタたちと同じ部屋なの!」

 一人部屋を一人占めしたかったハーミーは、3人一部屋だったことだけがご不満の様子。プンスカしているハーミーに…

「………」

 トゥモもフェルも完全無視。

 トゥモは無言で、財布などの入ったハンドバッグを手に、そのまま出て行こうとしていました。それに続くフェル。無視されたハーミーは、扉の前で立ちふさがりました。

「もう、何か言ったらどうなの。腹を立てて無視するなんて、ヨーチだね」

 抗議するハーミーを、トゥモは残念な生き物を見るような目つきで、ハーミーを見やりました。

「…あんなところで俺のことをウ○コマン扱いする考えなしに、説明する気力なんかない。何で俺が3人部屋にしたのか、自分で考えてみるのだな」

「そうですね。こればっかりは、ハーミー様の味方をすることができません」

「何でフェルまで、トゥモの味方すんのよ。んもう、いいわよ。ところでアンタたち、これからどこへ行くの?」

 うるさいハーミーを見るトゥモの目が、さらに細くなりました。

「繁華街だ」

「えっ!じゃ、私も行く!!」

「ダメだ!」

 トゥモは、とりつく島もないくらいにハッキリと、不許可を出しました。

「お前は、俺の作ったパンを食べて、風呂入って、寝ろ。よい子は、おとなしくお留守番だ」

「なにおう!私だってもう18歳なんだから。立派なオトナなんだから。繁華街なんか恐くないもん!!」

「なーにが、18歳だ!まだ17歳だろうが。それに、お前は恐くないだろうが、俺は恐いんだ!!」

「えっ、トゥモ……私のこと、心配してくれてるの?」

 ドキンとしたハーミーは、一瞬言葉が詰まりました。しぱしの間、沈黙が流れます。

「…全く値札を見ず、欲望のままにモノを買おうとするお前なんか連れていったら、財布の中身を見るのが恐くなるのだ。考えなしのお子ちゃまは、おとなしく留守ばん…ゲボッ!!」

 ハーミーの飛び膝蹴りが、トゥモの腹にクリーンヒットしました。


 ふてくされてベッドに潜り込んだハーミーを宿に残して、トゥモとフェルは、繁華街へと繰り出します。繁華街には、すでに酔っ払って、大声張り上げるにーちゃんやら、ゲスな目つきをしてヒワイな言葉を投げつけるオッサンやらが、ひしめいていました。

「うん。いい具合に盛り上がってるな」

 トゥモは、繁華街の中を、隅から隅まで、ぐるぐる何周も回ります。メモ帳を取り出して簡単な地図を書き、何やら印を入れていました。不思議に思ったフェルは、トゥモに尋ねました。

「一体、何をしているのですか?」

 不思議そうにするフェルに、トゥモはまるで堅物の教師のような態度をとって答えました。

「鶏で出汁を取ったスープのパスタを出す店を出そうと思ってね。どの場所がいいか探しているのだ」

「へっ?店??」

 予想のナナメ45度上の返答を喰らって、フェルは絶句しました。

「ゆ、勇者さまの使命は、聖女さまをお救いすることではありませんか?」

「使命を果たすには、先立つものが必要なのだよ」

「なら、軍資金を使えば…」

「その軍資金が、心許ない。汽車に乗り合い馬車といった交通費。宿泊費に食事代。予想以上に使っている。この先、どれだけカネが必要になるか分からないことを考えると、今のうちに増やしておく必要がある」

 うっわー。ここまで、石橋を叩いて叩いて叩きまくって渡ろうとする人、初めて見た。とフェルは思いました。

 散々歩き回って一番コスパのいい店に入って食事を摂ったトゥモは、店の親父さんに、この界隈で商いしている人たちの元締めを紹介してもらい、食事を済ませたその足で、その元締めの元に向かいました。突然の見知らぬ来訪者に捕まった元締めは、目星をつけた空き家を借り受けたいことに加え、売り物と営業時間といった事業の説明、売上の2%を上納することと、幾分かの手付金を矢継ぎ早にトゥモから叩きつけられて、勢いでほぼ無理やり了承を取り付けさせられました。

「この人、スゲエ…」

 間近で見ていたフェルは、念書に署名までさせたトゥモの交渉術に感心していました。

…こんな交渉術、勇者の能力に必要か?



「おい、作者。この話、暴走しかけてやしないか?」

「い、い、いや…。これは、次に繋がる伏線なのだよ……きっと」

「物語のカギにすらなりそうもない町で、勇者が食いもん屋やるって、意味が分からん」

「ふっ。それはだな、ハラーヘッター。お前に想像力がないからだ。きっとこの話がどう展開していくか、読みきっている読者様が、きっといる……はずだ」

「そもそも、こんなハチャメチャな話、わざわざ読んで下さる、心の広い読者様が、たくさんいるとでも思っているのか?」

「う、う、う、そ、それを言うか、ハラーヘッター。そんなに私をイジメて楽しいか…?」

「ふん。いつまでも主人公の俺を出そうとしない天罰だ。俺を散々コケにするからだ」

「うわーん。主人公が作者をイジメる。いーけないんだ。いけないんだ。せーんせに言ってやろ!」

「ガキか、お前は。いっぺん小学生からやり直してこい」

「くっそー。ハラーヘッターのくせに、ナマイキなーっ!!」

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