第36話 音咲成海
「――こんにちは、
「…………え?」
それから、数日経て。
昼休み、中庭のベンチにぼんやりした様子で腰掛けていた男子生徒に声を掛ける。以前、ある女子生徒に掛けた時と同じように。すると、ややあって少し驚いた
「……なんで?」
そう、怪訝な目で尋ねる。……うん、まあそうなるよね。驚きつつも受け入れてくれた彼女の方がきっと珍しいタイプだろう。……さて、どうしよ――
「……はぁ、なんか分かんないけど……別に、好きにしたら?」
「……へっ? あ、うん……ありがと、音咲くん」
すると、僕から視線を離し呟くように言う音咲くん。そんな彼の言葉に驚きつつ、たどたどしく答えベンチへと腰掛ける僕。……うん、良かった。
「……それで、結局何しに来たの?」
それからややあって、やはり怪訝そうにそう問い掛ける音咲くん。……さて、何と答えたものか……うん、やっぱり――
「うん、音咲くんと一緒にご飯を食べたいなって思って。……やっぱり、駄目だった?」
「……いや、別に」
そう告げると、少し目を逸らし答える音咲くん。申し訳ない、とは思うけども……まあ、これはこれで本音だし。
その後、少し困惑を浮かべつつもその場から離れず共に食事をしてくれた音咲くん。……うん、ありがとう。
――それから、およそ二週間経て。
あれからも、昼休みの度に中庭へと――音咲くんの下へ訪れては、厚かましくもベンチにお邪魔する僕。最初こそ怪訝そうな反応だったけど、僕のしつこさにも慣れてくれたのか、一週間経た辺りから呆れたような反応になっていて。そんな彼の様子に、少し安堵を覚え……いや、
ともあれ、最初に比べ少し会話も続くようになってきた。少しずつ……本当に少しずつだけど、距離を縮められている気がしなくもない。もちろん、非常に良いことだ。……良いこと、なのだけど――
「――おや、随分とご無沙汰ですね
「……いや、決してそんなことは……」
ある日の昼休みのこと。
屋上のベンチにて、満面の笑顔で告げる黒髪の美少女。……うん、ほんと困ったね。
さて、繰り返しになるけど……ここ二週間ほど、ずっと音咲くんの下を訪れていた。とは言え、もちろん彼女のことを忘れていたわけもないし、今回の件――暫く音咲くんと昼食を共にする件に対する許可も頂いていた。彼女も、音咲くんに対し何か――恐らくは、僕と同様の
「……もちろん、ご事情は理解しているつもりです。今の彼に、貴方が必要であろうことも。ですが……あんまり放っておかれると、拗ねちゃいますよ?」
そう、少し口を尖らせ告げる
「……ふふっ」
「……何がおかしいのですか、先生」
「……いや、ごめんね。うん、ちゃんと
「……ずるいですよ、先生。そんな
そう伝えると、不服そうな
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