【   】はかく語りき

虚無感

【   】はかく語りき

コツ、コツ と死の歩み寄る音が聞こえる気がする。

数百年にも及ぶ人類ヒトと人型をしてるバケモノの戦いに終止符が打たれようとしていた。

そしてことの顛末を僕は知らない。


世界を滅ぼさんとする「魔王」を旗印とした魔王軍。

総勢100と少ないが、皆、知恵を持つ上位の魔であり、英雄と呼ばれるものたちでも十数人規模で戦わなくてはならないほど個々が強い。


そして、それを止めんとする「勇者」を旗印とした人類連合軍。

総勢数百万の多国籍混合軍であるが実際の戦力は300の英雄と呼ばれる者達だけ。

他は千の衛生兵。

そして残り全てが英雄の休んでいる間足を止めるための時間稼ぎ要員。

栄誉ある肉壁である。

その肉壁のひとりが俺、【   】である。










小さい頃、僕は物語の勇者に憧れていた。

幼く、そして無邪気無知な僕は高潔で、最強の勇者に自分こそなると信じて疑わなかった。

そんな僕は5歳から剣の道場に入り浸った。

早くから始めたことで9歳になると周りよりも剣の巧みな子供となっていた。

大人も子供も僕に1目置いた。

君なら勇者になれると師範に言われてとても誇らしかった。




そこが僕の最盛期だっだ。




身体がどうやっても大きくならなかった。

遺伝だったのだろう。

必死に修練に取り組み、よく飯も食べた。

それでも骨格は如何いかんともし難い。

そして剣についてそこそこの才しか持たない僕には圧倒的な体格差を覆す技量はなかった。


僕が13歳を過ぎると年下の子にも負け始めた。

僕は焦って剣を続けながら、様々な分野に手を出してどうにか強くなろうとした。



魔法に手を出した。

属性魔法の才はなく、雀の涙ほどの身体強化を一瞬。それが僕のできた唯一の魔法だった。


弓に手を出した。

少し視野が広がったが、身体的に長弓が引けず断念した。


聖術に手を出した。

自身の心が少しだけ平静になる魔法。

回復や強化の聖術は僕にはできなかった。


錬金術に手を出した。

魔力を対価に雀の涙程の石を創る。

強い装備は作れそうになかった。





そして.........





25になる頃に俺は勇者を諦めた。

ここまで剣を続けると俺は並以上には強くなれた。

だが、そこまでだった。

中途半端な俺は徴兵され、役に立つはずもない世紀の決戦に駆り出された。





そこでは憧れが輝いていた。






〜 戦場にて 〜


魔王は強かった。

魔王と勇者の戦いは敵、味方とも着いていけていない。




そして




そこには俺のかつて夢見た勇者の姿があった。




残像すら見えぬほど勇者は速い。

聖剣を振れば大地がえぐれる程強い。


隔絶した強さを誇る魔である魔王と互角の戦いが繰り広げられていた。






その影響範囲から外れたところで上位の魔との戦いが繰り広げられている。

英雄は強い。

だが、そんな彼らを持ってしてもたった100程の上位の魔に劣勢だ。


同胞が。前の部隊が。肉壁が。


1人、1つ、消えてゆく。





俺はここでようやく俺の最後を悟った。

僕は諦めなかった。




英雄達が一瞬下がり、追撃を壁が受ける。





僕は前の壁が壊れた瞬間剣を振った。




少しの身体強化をつかい。




聖術で心を鎮め。




広がった視野で完璧なタイミングで。





上位の魔は反応した。




避けられる。




錬金術ですこし刀身を伸ばした。




そして か弱い僕の一撃は






















かくうえの左目を切り裂いた。




が、それまでだった。反撃で貰ったパンチで僕の身体からだは吹っ飛んだ。



意識が消える中最後に見たのは、剣聖に切り裂かれた奴だった。











僕は死にたくなかった。

と同時に死ぬことを理解した。


勇者は勝っただろうか。

僕の憧れは生き抜いただろうか。


人類は勝っただろうか。

結局僕は生きて見ることができなかった。


僕の名前は後世に残るだろうか。

上位の魔に一撃をいれた と。


未来の書にほんの1行でも残されやしないか。


鍛えた剣術が、血が、骨が、可能性が。


消えてなくなる。


僕は僕という存在がなかったことにされるのが怖いのだ。


















〜とある書


ーーーーーー上位の魔は剣聖の一撃で割られた。



これは唯一1》にて魔が倒され



た事例である。ーーーーーーーーー






































これは血脈も、名声も、歴史にも 残されなかった


誰にも語られぬ悲しき男の物語はなし







【 骨 】わきやくはかく語りき。


































































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