第4話

菜子の言葉がピンと来ないまま、まだ距離感のバグがある洸が、三上さんに近づきすぎては、亮に制止を受ける様子を眺めてた。


 菜子の言葉の意味がわかるのは、いっしょに休憩に入った三上さんと亮が戻ってきた後のこと。


「休憩ありがとーございましたー」


 ご機嫌な亮が、レジで作業をする俺のところにやってきた。


 ちょうどレジ点検が終わり、書類のチェックに移るところ。


「機嫌いいね。三上さんと一緒に休憩入れたから?」


「菜子さんの計らいのおかけで」


 2人で休憩に入れるよう、調整したのは菜子だった。


「洸のことで、ムカムカしてたので、菜子さんのおかけですっきりです。」


 …すっきりって、何したんだよ…って言葉が出そうになったけど、その前の言葉がひっかかる。


「え?亮、むかついてたの?」


「顔に出てませんでした?」


「レイアウトのときは、やりあってるなーって思ったけど、今のニュアンス的には違うとこでしょ?」


「そうですよ。洸が必要以上に、里帆に近づくところ。あいつ、無自覚天然で、いまだに厄介です。」


「…亮、余裕そうに見えてたけど」


「んなわけないです。くそむかついてますから」


 はっきり言い切る亮が、年下なのに、かっけーー……って思うほど、まっすぐで。


 この3人を見てると、昔の自分を思い出すことが増えている。


 あの頃のじぶんと、今のはせを比べて、自分が子供で情けなく感じることが、多く、少しの恥ずかしさが、生まれていた。


 自分のことだから、見えなくなってたことが、あったかも。


「翔さんと菜子さんみたいに、早く落ち着いた関係になりたいんで。俺も、もっと余裕待ちたいです。翔さんみたいに。」


 まっすぐに俺を見る亮の目に、嘘はまったくない。


 亮から見たら、それは"そういうふう"に見えているんだろう。


「…三上さん、髪下ろしたんだね」


 照れ隠しのように、視界に入った三上さんの話題を振る。


 休憩に入る前は、高い位置のポニーテールだった気が…。


(髪が伸びてきて、暑くて…!くくるようにしました。)

 

 今日の出勤時に、そんな話をした覚えがあった。


 ほんとに深い意味はなく、照れ隠しのために、亮の彼女である三上さんを話題に出したんだけど…、はせの顔に浮かぶ意地悪な表情に、嫌な予感が湧いてくる。

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