白い骨

朝狐

第1話

 涼太はクロと遊ぶのが大好きだった。大きな黒い犬で、俊樹さんの飼い犬だ。いつも元気よく尾を振り、涼太が来ると興奮して跳ね回る。


「クロくん、かっこいいね!」


 涼太がクロの頭を撫でると、クロは嬉しそうに低く吠えた。


「涼太くん、クロは君のことが大好きみたいだね」


 俊樹が優しい声で言う。彼はいつも穏やかで、涼太にとって頼れる近所のお兄さんのような存在だった。


 しかし、その日の涼太は少し浮かない顔をしていた。


「俊樹さん.....最近、行方不明の人が多いよね。お母さんが気を付けろって言ってて.....ちょっと怖いんだ.....」


 俊樹は少し驚いたように目を見開いた後、微笑んだ。


「怖がらなくても大丈夫だよ。君みたいな子が狙われることなんてないさ。それに、こうしてクロもいるだろう? 君を守ってくれるよ」


「うん.....でも、友達のお兄ちゃんも帰ってこないんだって.....」


 涼太の声が小さくなった。そのとき、クロが口に咥えていたものを地面に落とした。


「これ.....骨?」


 涼太が目を細めてそれを見た。まるで白く光る宝石のように美しいその形状に、少年の心はなぜか少しだけざわついた。


 俊樹は涼太の隣にしゃがみこみ、その骨を拾い上げた。


「ああ、クロがどこかで拾ってきたんだ。森の中に動物の骨が落ちてることなんてよくあるんだよ」


 優しく微笑むその表情に、涼太の心は少しだけ軽くなった気がした。


「そっか.....そうだよね!」


 涼太はそう言って笑顔を取り戻した。俊樹はその様子に満足そうに頷く。


「そうだ、涼太くん。今度、クロと一緒に裏山に行ってみないか?自然がいっぱいで楽しいよ?」


 俊樹の提案に、涼太の顔が輝いた。


「行きたい!クロと冒険みたいなことしたい!」


 俊樹は微笑んだまま、クロの頭を撫でた。


「じゃあ決まりだね!」


 クロが再び何かを咥え、静かに俊樹の足元に落とす。その骨は、さっき見たものよりもずっと大きかった。俊樹の手がそれに触れる。


 赤い夕日が地平線を染め、クロが咥えた骨が白く輝いていた。それが何を意味するのか、涼太には知る由もなかった。

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白い骨 朝狐 @asakitune

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