第7章:遺産の継承

 戦局は、日に日に厳しさを増していった。


「ローマ軍の物量には、もはや太刀打ちできない」


 軍事会議での発言が、重く沈んでいく。カルタゴの指導部も、次第に混乱の色を深めていった。


 そんな中、崇平は密かな活動を本格化させていた。


「これが、私たちの造船技術の核心部分です」


 信頼できる職人たちを集めて、小規模な研究会を組織する。技術を文書化し、確実に後世に残すため、「海の同胞団」と名付けられた秘密結社が誕生した。


「知識は、分散して保管しなければなりません」


 崇平の提案で、技術文書は複数の場所に分散して保管されることになった。地中海沿岸の各地に、信頼できる仲間がいた。


「万が一、カルタゴが落ちても、知識は生き残る」


 その言葉に、同志たちは厳かにうなずいた。


 エリッサも、この活動に深く関わるようになっていた。彼女の知性は、技術文書の整理と体系化に大きく貢献した。


「これは、私たちの文明の遺産です」


 彼女の言葉には、強い使命感が込められていた。


 しかし、この活動には常に危険が伴った。スパイ容疑をかけられれば、重罪となる。そのため、すべては細心の注意を払って進められなければならなかった。

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