潔癖症のサンタクロースfrom1日1物語

丸 子

第1話

「今日は潔癖症のサンタクロースをお迎えしております。よろしくお願いします」

「どうも」

「あなたは煙突から家に入りますよね。大変ではありませんか」

「いえ、私たちはトリックを使いますので問題はありません。ただ、置いてあるプレゼントを受け取るのが」

「触りたくない?」

「そうですね」

「どうなさるのですか」

「手袋を2枚つけます」

「家ごとに?」

「はい」

「その手袋はどうなさるのです?」

「捨てます」

「まあ、もったいない!」

「あ、あと相棒のトナカイに取ってもらいます」

「トナカイを家に入れるのですか?」

「はい、トリックでシュッと。

相棒は小さいですし角が片方しかないので物にぶつかることはありません。それに後ろ足が不自由なので動き回ることもありません」

「あなたはご自分が潔癖症でありながら他人の家にはトナカイを入れるんですね」

「いや、それを言ったら私が入るのだって。私たちの足は汚くないです」

「おや、怒ってらっしゃる?これは怒りん坊のサンタさんだ!」

ガタンッ

「あ、待ってください。まだ話の途中ですよ……。行ってしまわれた。いやはや、潔癖症で短気で無礼なサンタさんでした。あんなサンタクロースからはプレゼントを貰いたくないですね」

 この番組のあと、視聴者から多くの反響があった。中でも多かったのは「潔癖症のサンタさんにプレゼントを貰いたい」というものだった。

「プレゼントをビニール袋に入れたから触っても大丈夫だよ。うちに来てね」

「私も潔癖症だからわかるわ。個包装がいいのよ」

「トナカイさん、ありがとう」

 これで「潔癖症で短気で無礼で」かつ「人気者の」サンタクロースとなった。トナカイは「働き者で愛すべき相棒」と呼ばれるようになった。世界中のサンタクロースの中でトップ5に入るほど忙しくなり、新しいトナカイと交換するように上から打診があったが、片角の相棒と今も一緒だそうだ。

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