第四話
「助けて!!」
叫ぶ世羅を尻目に、村の人たちは助けてはくれませんでした。
それはそうです。
ルドが王の子だということを兵士に報告したのは、村の人だからです。
誰彼構わず助けを求める世羅に、村の人たちは
村の人たちも、ルドが嫌いで助けないわけではないのです。
もし助ければ、この村は魔法使いと兵士に滅ぼされてしまうので、黙って俯くしかなかったのです。
村長がやって来て、世羅に言いました。
「……ルドは、諦めなさい。ダーレスの手当てはしよう」
村長がそう言うと、村の男たちがおじいさんの手当てをするため山小屋に向かいました。
「あ、諦めろって……、なんで!?」
泣き叫ぶ世羅に、村長は静かに話を続けました。
王の母、王母様は隣国の王女としてまだまだ絶大な力を持っていること。
この国の王といえども、逆らうことは隣国との
ルドの母も、おそらくはもう生きてはいないであろうと村長は言い、諭すように繰り返しました。
ルドは、諦めろ。と。
「そんなのおかしい! ルドが何したの? ルドが何で死ぬの! そんなのおかしいよ!!」
地面に伏して泣き叫ぶ世羅に向かって、村の子どもが呟きました。
お前が
世羅にそんなつもりはありませんでした。
けれど、自分のせいでルドが死ぬかもしれないのです。
世羅は「そんなつもりはない」では済まされないことに、今更ですが気が付きました。
言った言葉はもう取り返すことが出来ません。無かったことにも出来ません。
自分のせいで、ルドの命が危ないのです。
自分のせいで、おじいさんは、血まみれで倒れたのです。
泣いても叫んでも、誰も助けてくれません。
世羅は、顔を上げました。
視界一杯の満月。
世羅の目に映ったのは、茜と群青の混ざった空に浮かぶ、世羅がここに来て見る四回目の満月でした。
『この山の頂には願いを叶える精霊が住む泉があり、満月の夜に願いをひとつだけ叶えてくれる』
世羅は走り出しました。
心臓が破けそうなくらい走って走って、願いを叶えてくれるという精霊の泉を目指しました。
転んでも転がっても、足を止めませんでした。
途中で山小屋が見えましたが、部屋に明かりが入り、人の影が見えました。
村の人がおじいさんを看病してくれているのでしょう。
世羅はほんの少しだけ安心して、また走り出しました。
泉は山頂に。
ルドの言葉を思い出しながら、世羅はひたすら走りました。
どのくらい走ったかなんて、世羅にはもう分かりません。
足は震え、顎は上がり、意識すら
そして、絶望しました。
見渡してもそこには泉など無かったのです。
「泉……無い」
こうしているうちにルドが死んでしまうかもしれない。自分のせいで殺されてしまうかもしれない。
世羅は泉を探して闇雲に走っては転び、嗚咽が止まらず、息が詰まって気を失いました。
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