第7話
☆
私は、ゴブゾ。マスターに作らし眷属の1人である。
私には、微かに前世の記憶が残っている。前世は、ゴブリンでとっても弱く。仲間たちからもいじめられた。私は彼らと弱い自分自身を怨み、そして、私はマスターに殺させた。
私の魂を喰らわれたことで浄化されて私はマスターの眷属として作られ、生まれ変わったのである。
生まれたときは、虚ろな意識で何も考えられなかった。マスターは、弱い私に名付けをしていただいた。そして、私は、私という存在を世界に認知され進化を果たした。
私は強くなったと確信していたが進化をしても私は、前世と変わらず弱いままだった。
正直。悔しかった。弱い私は、マスターの足を引っ張ってばかりだ。
ゴブリンのボスに敗北した。その悔しさと怒りを兎たちにぶつけ、狩り続けた。結果、私は2度目の進化を果たしてもなお、兎人に敗北した。
強くなるためにオークを狩りしているとそこに現れる魔王。
私は、彼に遊ばれ敗北と苦汁を味わった。挙げ句の果てにはオークのボスにも負ける始末だ。
私は、弱い。悔しくてどうにかなりそうだ。でも私には、マスターとユキナがいる。・・・クロキもいるが何故か怖い。皆が弱い私の心の支えだ。
ユキナと共闘して狼男に初めてボスを討伐したが私は狼男に防戦一方だった。
私は、弱い弱い弱い弱い弱い。もっと強くならないと。・・・皆を守れない。
☆
次の階層は、辺り一面。木がまばらに生える熱帯の草原。所謂、サバンナだ。
「暑さはさっきよりマシねぇ。」
「そうですねぇ。先ほどの階層が異常だったみたいですねぇ。」
二人は、何処かほっとしているように見える。
ユキナは振り返り、俺の頭上を睨んでいた。何で?。
「マスター。いつまでクロキ、頭の上に乗せてるの?」
「え?」
ユキナに言われて始めて気づいた。何か重たいものが頭上に乗っているという感覚に。
頭を触るとモフモフとした感触がある。うん。これ。クロキだ。
「クロキ。降りて?」
クロキは、嫌がって降りようとしない。どうやら俺の頭の上が気に入ったらしく降ろそうとしても爪が引っ掛かって剥がれない。
「マスター。なにやってるのよ。うちが剥がすわよ。クロキ。マスターから離れなさい。」
ユキナも剥がそうとするがクロキの抵抗が強く剥がすことができない。ユキナは、ため息をして少し不満そうにしていた。
「駄目ねぇこれ。マスター。そのうち飽きて離れるわよ。たぶん」
クロキは、「ふーん」と鼻息を吐く。・・・やっと諦めたかとでも思ってるのかなぁ。しかし、重いから離れて欲しいけど。そして、相変わらずゴブゾは、犬が苦手みたいで近づいて来ない。
「ガウウウウー」
何かにいち早く気付き俺の頭に立ち上がって低く濁った声で威嚇をするクロキ。感知に複数の反応がある。凄い速さでこちらに向かっている。
二人は戦闘態勢に入る。
正面からメスのライオンが二頭こちらに走ってきた。
ユキナは、息を潜め、何処かに消えてしまった。ゴブゾは、息を整え柄に手を置きメスのライオンがゴブゾの間合いに入った瞬間。二頭のライオンの頭部は宙を舞う。ゴブゾはいつの間にか太刀を抜いていた。
「ふぅーまだ遅いですねぇ。」
俺から見て精度のいい居合い切りだと思うがゴブゾは満足していないみたいだ。ん?さっきまで感知に引っ掛かっていた反応がなくなった。どうやらユキナが倒したみたいだ。
シュンと目の前にユキナが現れた。ビクッとする。
「マスター。こっちは終わったわ。」
「・・・ありがとう」
ゴブゾは、ライオンを捌き始めていた。それにしても二人は、強くなったなぁ。
あれ?俺。要らなくねぇ?。この二人。前の階層よりも強くなっているようなぁ。
クロキだけは、まだ警戒を解いていない。まだ何処かにいるらしいが俺の感知には、引っ掛かっていない。
「誰かに見られているみたいねぇ」
ユキナは遠くを見つめている。どうやらその先にいるみたいだ。
ゴブゾは、一心不乱にライオンを焼いてバクバク食っていた。いつの間にか頭から降りていたクロキもライオンの肉を食っていた。
「二人とも食い終わったら階段目指すぞ」
「マスター。・・・わかりました。」「ワン!」
「・・・あの視線、気になる。単独行動したら死ぬかも」
ユキナは、遠くを睨みつけていた。
☆
それからもメスのライオンが一定間隔で襲い掛かってくる。まるでこちらの戦力を把握しているかのようだ。
「ほんと。嫌な感じ。探られているみたい」
「ユキナ。集中しなさい。次々来ていますから!」
「ゴブゾ!言われなくてもわかってるよ」
襲い掛かってくるライオンたちを返り討ちしていくがその数は増えて来ている。・・・ようやく俺にも目線が察知できた。目線の方を見るとフサフサしてそうなたてがみをしたライオンが崖の上でこちらを見て去っていった。・・・あいつがボスか。どれ見てみるか。
種族【獅子王】
名前【レオ】
Lv .???
どうやらここの階層のボスみたいだ。にしても傲慢な態度だったなぁ。
ボスを確認していると戦闘は終わっていた。
そして。俺は今回も戦闘に参加せずと。・・・。俺。マジいらなくねぇ?。
「マスターも見つけたみたいねぇ」
「見つけたよ。あいつがボスか」
「そうみたいねぇ。・・・二人も気づいているみたいだけど。肉食っていて緊張感ないけど」
「ユキナは、食べなくて平気なの?」
「ええ。大丈夫。全然お腹が空かないのよねぇ?何故かしら?」
「ゾンビだからかなぁ?」
「そうかもねぇ」
ゴブゾとクロキは、ライオンの肉を仲良く食べている。・・・ゴブゾ。クロキのこと、怖くなくなったみたいで良かった。
☆
ライオンが来る方へライオンを倒しながらいくと下へと続く階段がある広場を見つけた。そこには先程の傲慢なライオンが階段の前で寝そべっていた。こちらに気付きたらしくムクッとゆっくりと起き上がる。
こちらを見ていて「ガゥウ」と鳴くと何処からともなく敵意むき出しのメスのライオンが20頭以上現れ俺たちに襲い掛かってくる。
ユキナは、焦らずナイフを抜刀し剣先が青白く発光すると一瞬にして一筋の美しい軌跡が描かれライオンたちは、斬られたことに気づかず血を流しそのまま、走り抜けて徐々に失速して倒れ息を引き取る。
ボスライオンに向かっていくゴブゾにメスのライオンたちは、一斉に飛びかかる。ゴブゾの間合いに入った瞬間。ライオンの上半身と下半身がわかれた。ゴブゾは、メスライオンたちを切り捨て、その足を止めず、ボスライオンに向かっていくが壁のようにメスライオンたちは、行く手を阻むが意味をなさず斬り殺されてしまう。
ゴブゾは、ようやく、自分の間合いにボスライオンが入った瞬間。ボスライオン目掛け、閃光の如く放たれた居合斬りは、意図も簡単に避けられてしまう。
「ん!!」
ボスライオンは、欠伸をしてその場でまた寝てしまう。これは明らかな挑発とも思えるほどだ。ゴブゾは、むきにならず、動揺して乱れた呼吸を整え、太刀を鞘に納め、居合斬りの構えをする。
緊張が走る。
一頭のメスライオンがゴブゾに飛びかかる。
そのメスライオンは、ユキナによって瞬殺された。その時だった。ゴブゾは、上段から居合斬りをしていた。ボスライオンの前足を一本。切断した。
悲鳴を上げるボスライオンは、ようやくその重たい腰をあげ。毛並みを立たせ、戦闘態勢に入った。
「ガァオオオオオオオ!」
雄叫び共に切断された前足は、治り、ゴブゾと対峙する。
ボスライオンは、ゴブゾを食いちぎろうと噛みつくが太刀でいなし、反撃を受けるが傷は浅く瞬時に治ってしまう。負けじとゴブゾも攻撃するが避けられてしまう。互いに力は拮抗。
互いに離れ間合いをとり、相手を確実に仕留めるためにチャンスを伺っている。
先にボスライオンが動いた。
ゴブゾに体当たりをする。
ゴブゾは、太刀でいなそうとするが受け流せず力負けしてしまい、吹き飛ばされる。
空中にいるゴブゾ目掛け爪で引っ掻こうとする。その爪を太刀で斬られゴブゾは、着地と同時に前に踏み込み上段から斬り落とす。それを避けようと一歩下がったボスライオンは、右目を太刀の剣先で深く斬られてしまう。
「ガァオオオオオオオ」
ゴブゾに威嚇するがゴブゾは、怯むことはなく追撃に動く。
「ガゥウ!」
ボスライオンは仲間を呼ぶが誰一人として来なかった。すでにメスライオンはいなかった。何故なら残りのメスライオンはユキナによって倒されていたからだ。
ボスライオンは、苛立ちを見せた。
ボスライオンは、メスライオンたちだけでゴブゾたちを倒せる存在として過信していた。だがそれは、違うと今さら気づいても今さらどうしようもない。
しかし、ボスライオンは、気づいた。自分には、まだ余力があることに。
その時だ。ボスライオンは、黒い炎纏い。別な姿へと変貌を遂げた。
ボスライオンのたてがみは黒炎に代わり、黄色に近い肌は、青紫。口から黒煙をあげていた。まるで地獄にでも居そうな化け物になっていた。
ボスライオンが動く。
瞬きもする間もなくゴブゾを体当たりで吹き飛ばし空中から地面に叩きつける。
ゴブゾに覆い被さり今での恨みを晴らすかように何度も前足で叩きつける。その余波で地面が激しく揺れる程だった。
そして、力を込めた渾身の一撃でクレーターが出来た。
「ガァオオオオオオオ」
ボスライオンは、勝ち誇ったように雄叫びを上げた。ゴブゾのことをよく確認せず、クレーターから這い上がってゆっくりと俺たちの元へと歩き始めていた。
「ゴブゾ!マスター!!ゴブゾが!!」
ボスライオンの攻撃をまともに受けたゴブゾを心配するユキナは、今にも泣きそうになっていた。そして、武器を構えボスライオンと対峙しようとしている。
☆
「ユキナ。ゴブゾは、大丈夫だ」
「・・・でも」
ユキナは、ボスライオンに挑もうとしていた。それを俺は止めて目の前にいるボスライオンに向かってこう言った。
「なぁー。ボスライオンのレオよ。ちゃんと死体は確認したか?。確認してないならお前は傲慢だぞ?。だよな?ゴブゾ!」
俺はボスライオンを殺意の込めた目線で睨む。「ガゥルルルルル」と共に威嚇するクロキ。俺は怒りを我慢しながら会話を続けた。
「それにお前さんのご自慢のその牙も爪も俺に決して届かない。何故ならお前はゴブゾに負けるからだよ。あと。俺の
ボスライオンは、ようやく背後からゴブゾの漏れ出す殺意を感じたらしくだらだらと冷や汗を流しす。倒したと確信していたのだろ。
「何も確認もせず俺に挑もうとするからこう焦ることになるだ。今度いや、来世では、ちゃんと確認しろよ。糞猫風情が!」
ボスライオンが作ったクレーターに埋まる、瀕死はずのゴブゾは、ピクッと指先が動いた。土を握りしめる。
「・・・私は。・・・まだ、生きている!・・・まだ、動く!。・・・まだ、闘える!」
余力を振り絞り、太刀を地面に突き刺してゆっくりと起き上がるゴブゾ。
「ゴブゾ!生きてた。・・・マスター」
ユキナは心配そうにしている。
立ち上がっていたゴブゾを見てボスライオンは、慌てた様子でゴブゾに飛びかかる。
ボスライオンを片手で受け止められたゴブゾは、振り上げられていた拳がボスライオンに放たれる。
その拳は、ボスライオンの顔面にめり込んだ。その反動でボスライオンは、宙を舞う。
ゴブゾは、フラフラとしながらも太刀を抜き、ボスライオンの落下地点へと走る。しかし、一歩遅かった。ボスライオンは、一足早く着地しゴブゾに全力で体当たりをするために突撃する。
その突撃を紙一重で回避してボスライオンの首目掛け斬りかかる。だが、その刃は、黒炎のたてがみに邪魔され弾き返される。
体勢を整え向かい合う二人は、呼吸を整える。
「ガァオオオオオオオ」
雄叫びを上げゴブゾに噛み付こうと飛びかかる。
ゴブゾは、「ふぅー」と息を吐き身体の力を抜いた刹那。空中に鮮やかな青白い光を放つ軌跡が太刀よって描かれていた。
その軌跡は、ボスライオンを仕留めていた。力が抜けたボスライオンは、ゴブゾの目と鼻先に落ちた。
「ハァハァハァ・・・倒せた?」
張り詰めた糸が切れたようにゴブゾは、ボスライオンに覆い被さるように倒れ込む。
俺達は、ゴブゾに向かって歩き始めた。
俺はもう一つの視線に目を向ける。・・・誰だ。さっきから見ている奴は。
その目線を気にしながらもゴブゾを介抱に向かう。
「マスター。やりましたよ」
「今は安心して休んでろよ」
「はい」
力を振り絞ったゴブゾは、眠った。
続く
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