第6話
☆
ふと元神様のことを思い出す。
「いい加減認めたら。あっちが今の現実だと。」
この世界が現実だと認めたくない。否定したい。しかし、否定する要因もないのは事実だがそれで否定したい。
認めてしまったら何があっても死ぬことが出来ない俺は、永遠に大切なものを失い続けるのは、つらいずきる。たった大切な人を一人失うだけでも辛いというのに。
・・・そうだ。元神様の願いを叶えてたら、俺の願いを聞いて貰うか。「
視界に誰かの手が見える。目線を上にあげると二人が俺を心配そうに見ていた。いつの間に起きたんだ?
「マスター?大丈夫でしょうか?」
「ねぇー。マスター。生きてるわよねぇ?」
どうやら俺は、考え事に時間を費やしてたみたいだ。
「あー大丈夫だ。お前らこそボロボロだけど大丈夫か?」
二人の服は。すでにボロボロだ。
「はい。平気です。この程度の傷はすぐに治りますから」
「うち。・・・。」
「ユキナ、生きてるのですから大丈夫では、ないのですか?」
ユキナは、恥ずかしいそうに身体を丸める。しかし、ゴブゾは、何故、ユキナが恥ずかしいそうにしているのがわからないみたいだ。
「ちょっとうち。代わりになりそうなの探してくるから少し待ってて」
彼女は、森へと代わりの服を探しに行った。
「マスター。ユキナが言っていた代わりになるものとは何ですか?武器ではないですよね?」
「・・・ゴブゾ。服だよ。」
「服ですか。・・・全裸でも平気では?」
やべ。ゴブゾは、マジか。変態か。・・・それとも単に羞恥心がないのか?。俺は、ちょとんとするゴブゾを改めて残念イケメンと認識した。
「マスター。聞きたいことがマスターは、し・・・」
「マスター!ただいま!!」
ゴブゾの話を遮るように森から戻ってきた、!ゴブゾは、ユキナを軽く睨むがすぐに仕方ないなぁという顔をした。ユキナは嬉しそうにはしゃいでいる。
「マスター見てこの服のいいよねぇ?」
ユキナはその場でくるっと1回転。新しい服を自慢する。
白いスニーカー。黒いタイツ。チェック柄のミニスカート。黒いパーカー。赤いTシャツ。腰にさしてある白銀のナイフ。何処で手に入れたんだとツッコミしたくはなるが可愛いし良しとしよう。
「・・・ユキナ。似合っているよ」
そう誉めると照れるユキナ。ゴブゾは、不思議そうな顔をしていた。
「ユキナ。似合ってますよ?」
ゴブゾのお世辞にユキナはむくれ、ゴブゾのケツに蹴る。
「ゴブゾ。心にもないこと言うな!!」
「・・・すいません。正直、わかりません」
何故怒られているゴブゾは、わからない様子だ。
「よろしい。」
ユキナは、何処か嬉しそうに見える。
「そろそろ、次の階層。行きますか?」
「はい。マスター。」
「分かったわ。マスター。行きましょう」
俺たちは、次の階層に向かった。
『名も無きリッチは、種族【エルダーリッチ】に進化し、スキル【魂狩り】の権能に、豁サ逾�が追加されました。スキル【不死】の権能、熱源感知と魔力感知が統合し完全感知となりました。』
俺たちのことを改めて鑑定する。
種族【エルダーリッチ】
名前【 】
Lv .50
スキル
【魂狩り Lv .??】
・鑑定・剣術・豁サ逾�
【不死】
・強制復活・完全感知・眷属召喚・眷属作成・覇気・死の魔術(
種族【吸血鬼】
名前【ゴブゾ】
Lv .20
スキル
【
・不屈の精神
種族【ゾンビ(兎人族)】
名前【ユキナ】
Lv .15
スキル
【暗殺者】
・瞬光
☆
新たな階層は、真っ先に目についたの火山だ。しかも噴火していた。
ユキナは、すでに汗をかいている。ゴブゾは、ぐでぇーと今にも溶けそうになっているがそこまで熱いのか。全く感じない。
「・・・マスターは、・・・熱くないの?」
「全く。」
「うそでしょう。触ってもいい?」
「あー。いいぞ。」
「言葉に甘えて・・・冷たい」
ユキナは、最初は、恐る恐る触っていたが冷たいことがわかると抱きしめてきた。その顔は、うっとりとしている。ゴブゾは、羨ましいそうに見える。
「・・・私もいいですか?」
ゴブゾも触りたいそうにこちらを見ている。どうしようか。ゴブゾは、しゅんと落ち込む。・・・良心が痛む。
「あ。いいよ」
パッと明るくなるゴブゾ。勢いよく抱きつこうとするゴブゾを一瞬で蹴り飛ばし戻るユキナ。
「ユキナ!!何するんですか。」
「そんな、勢いよく抱きつこうとするんじゃないわよ!」
しょぼんとするゴブゾ。
「来いよ。」
「はい!失礼します」
俺に抱きつくゴブゾも気持ちよさそうにする。しばらく経っても二人は、俺から離せない。
「なぁーもういいか?」
「・・・マスター。そうですよねぇ」
「いやだ!!」
ゴブゾは、離れるがユキナは、離れようとしない。無理に剝がそうとしても離れない。
「・・・しゃあない。このままいくか。」
「そうですねぇ。ユキナ。しばらくした離れない。マスターの迷惑ですよ。」
「・・・わ、分かったわよ」
不満そうにするユキナを無視して攻略することにした。
☆
敵に気づいたユキナは、やっと離れてくれた。
黒い狼は、出会い頭に火の玉を吐く。ゴブゾがその火の玉を斬り、ユキナは、隠し持っていたナイフで狼の首を切り落とす。
見事な息の合った連携だ。・・・俺の出る幕ある?これ。
俺の予想は、合っていた。
二人は、狼を瞬殺していく。めっちゃ強い。・・・。
「ユキナ。強くなりましたね。」
「・・・。まあねぇ。・・・やばいのきた。」
ユキナがそう言うと噴火の轟音共に巨大な狼が現れた。
その狼は、鋭い牙に鋭い爪。硬そうな赤黒い毛。
「ワォオーーーーン」
巨大な狼は、こちら威嚇する。ユキナとゴブゾは、睨めつける。
先に動いたのは、ユキナだった。一瞬で巨大な狼の背に跨り、ナイフを突き刺すが硬い筋肉に跳ね返される。
「噓!!」
暴れる巨大な狼にしがみつくも振り落とされてしまうが、綺麗に着地する。その時、振りかぶっていた前足にユキナは、潰れてしまった。
だがユキナは、すでに巨大な狼の左目を逆手に持ったナイフで斬って再びに背中に乗る。
「キャァィン!」
左目を潰された痛みで暴れる巨大な狼に必死にしがみつくユキナ。ゴブゾは、居合切りの構えをした。巨大な狼がゴブゾの横を通ってしばらくすると顔から倒れ、ユキナは、投げ出され、後方屈身3回宙返りして綺麗に新体操のような着地する。
「ゴブゾ。ちょっと危ないでしょう。」
「・・・無事なのですからいいではないですか。それにユキナは、あの程度でケガはしないでしょ」
「・・・そうだけど」
むくれるユキナをみて微笑むゴブゾは、太刀を鞘に納めた
その時、瀕死に追い込まれた巨大な狼は、俺に嚙みつこうとする。しかし、口を開けたままその場で止まった。何故だ。巨大な狼は、ブルブルと恐怖で震えているようだ。
「「マスター!!」」
ゆっくりと離れていく狼は、後ずさりしたと思ったら徐々に普通の大きさになっていき、その場にお座りする。俺は、小さくなった狼に近づき頭を撫でる。
「クゥーン」
狼は、甘えた声で鳴く。え?可愛い。俺は、犬を撫でまわすように撫でると横になって腹を見せてくる。服従のポーズだ。どうやら、もー敵意はないらしい。
二人は、啞然としていた。それもそうだ。さっきまで、殺しあっていた相手が急に服従したのだから。啞然としてもおかしくはない。しかし、この狼は、どうして敵意をなくしたのだろうか。まぁいいや。んー名付けしたらどうなるだろうか。二人みたいに進化するのか。やってみるか。
「よし。お前は、『クロキ』だ」
俺は、この狼に名付けしてしまった。その時だ。青白く発光した。おっと進化が始まった。
この光が消えると黒い柴犬の仔犬になっていた。
「ワン!」
クロキは、吠え俺の周りを嬉しそうに走った。
「・・・え?」
種族【犬神】
名前【クロキ】
Lv .30
「・・・犬神?!」
「ワン!」
「マジか・・・」
どうやら名付けで神に進化してしまったみたいだ。二人も驚いた顔している。
これは、考えても仕方ないなぁ。
「・・・クロキ。可愛い。よしよし」
ユキナに撫でられるクロキは、服従のポーズになって撫でられる続けられている。
ゴブゾは、ひきつった顔をしていた。俺は、クロキを抱きかかえゴブゾの前まで持っていくとゴブゾは、一歩下がった。もしや、これは。
「ゴブゾ。新しい仲間だぞ。お前も撫でてみろよ」
「わ、私は、いいです。」
「遠慮するなって」
「無理です。」
ゴブゾは、一目散に逃げる。
「待ってよぅ」
俺は、クロキを抱っこしたまま、ゴブゾを追いかける。
しばらく、追いかけっこして、諦めたゴブゾは、クロキの頭を撫でる。
「これでいいですか。・・・マスター。」
「よろしい」
俺は、クロキを離すとユキナのもとへ走った。ユキナは、クロキを抱っこした
「・・・まさかゴブゾは、犬が苦手だったとは」
「に、苦手です。」
「ゴブゾ。あんた。こんなに可愛いのに」
クロキを抱えてこちらに来るユキナにビクッとするゴブゾは、少し丸くなる。
「先に行きますか」
「はい、マスター。」
「うん。マスター」
「ワン」
クロキは、俺たちの前に行き先導を始めた。どうやら俺たちが行きたい場所を知っているみたいだ。
それにしても【犬神】に進化したのだろうか。しかも進化前は、大人ぽかったのに仔犬なったんだ。んー考えてもわからないもんはわからない。元神様に聞けば答えてくれるだろうか。
・・・あと、何で怯えたのだろうか。疑問が増えていく。・・・疑問の解消は、出来るのだろうか。
☆
火山の麓まで来た。
洞窟を見つけ、覗くと奥に階段を見つけた。しかし、階段を守るように大剣を持った狼男らしい人物がいた。
種族【ワーウルフ】
名前【ポチ】
Lv .???
毛並みは青く半狼半人。身長は、ゴブゾと同じぐらいだ。
今回は、俺一人で挑むか。いいところなかったし。と考えているとクロキ以外居なかった。
クロキは、俺の頭にちょっこんと乗った。二人を探して見回すと二人は洞窟内で狼男に挑んでいた。
「え?」
狼男は、大剣で薙ぎ払いをして、ユキナを吹き飛ばすがユキナは、着地した瞬間。狼男の懐に入ってアッパーする。顎にクリーンヒットしてよろめく狼男に追い打ちをかける。ナイフで何度も腹を突く。
「ワォオーーーーン」
狼男は、吠え、ユキナの動き一瞬止め、上段から斬りかかる。だがその攻撃をゴブゾにいなされ、ユキナに反撃のアッパーを喰らうがその攻撃を読んでいたらしくユキナの腕をつかみ、ゴブゾに投げる。
ユキナを受け止めたゴブゾは、反撃しようと動いた瞬間、狼男に蹴り飛ばされる。
ユキナは、狼男の背後から首元にナイフで斬りかかる。しかし、避けられる。狼男はニヤリと笑い、ユキナの溝内を目掛け真上にパンチを繰り出す。ユキナは、避けられず、その攻撃をまともにくらい天井まで飛ばれダウンする。
攻撃の隙を突きてゴブゾは、居合切りをするが剛毛に阻まれ、刃が通らない。
狼男は、大剣を乱雑に振り回す。でたらめな攻撃だがスキはなく、ゴブゾは、防戦一方になってしまう。
「く、攻めに転じられない」
狼男に一瞬の隙を突かれ、腕を掴まれ背負い投げで壁に吹っ飛ばされてしまった。
「ワォオーーーーン」
勝ち誇ったように遠吠えをする。
ユキナは、息をひそめ、背後から首の動脈を狙う。逆手に持ったナイフの剣先が青く光り、ナイフの軌跡が描かれていた。その軌跡は、狼男の首の動脈を斬り裂いていた。
狼男は、首を抑えてこの場にうずくまる。ユキナは、ゆっくりと狼男の前に立ち、ナイフの腹で顎を撫でるように顔を持ち上げた。狼男は、絶望に染まっていた。確信があったのだろ。自分がユキナに殺せるという確信が。
ユキナは、最後の弔いとしてニコッと笑う。凛と構えるユキナの瞳は、美しく赤く輝いていた。
次の瞬間。ナイフの軌跡は、首を通り抜けていた。狼男の首は、ぽとんと落ちる。
ユキナは、ナイフをしまい、そのまま、数歩後ずさり、ふぅーと息を吐きながら、崩れるように座り込む。
「た、倒せた。」
思わず拍手をしまった。
「二人ともおめでとう。」
むくっと起き上がるゴブゾは、何処か不満そうだった。
・・・しかし、今回。俺活躍しなかったなぁ。
「マスター。・・・抱っこ。」
ユキナは、甘えてくる。仕方ないって思いながらもユキナを抱っこする。
「今回だけだからなぁ。」
「わーい。」
「・・・ずるいですよ。ユキナ。」
ゴブゾは、羨ましいそうにユキナを見つめる。ユキナとクロキは、ドヤ顔をしてる。
「・・・次は、私ですからねぇ。」
ゴブゾは、悔しそうに太刀を鞘に納めた。
俺たちは次の階層に向かった。
続く。
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