スケルトンになりました

第5話

☆

　ゴブゾと戦っていた青年は、オークの死体の山に腰を据えていた。

　迷宮の光で鮮やかに光る金髪が腰まで伸びる。西洋の顔立ちに怪しげな碧い瞳の青年は、まだ見ぬイ（・）レ（・）ギ（・）ュ（・）ラ（・）ー（・）との対戦を待ち望んでいる。

『魔王！ねぇー。聞こえる！』

　彼の脳内に若い女性の声が響く。

「アホ女神！うるせぇよ！」

『聞こえてるみたいでよかったわ。イレギュラーの方はどうだった？』

「まだ、会ってねぇけどよ。イレギュラーの眷属とはあったぜ！」

『まさか。敵対してないわよねぇ！！』

「ア？喧嘩ならしたぜ。いやー。仮初めの身体とは言え、腕を斬り落とされるぜ！ワァハハハハ。」

『あんたねぇ。何度も言ったわよねぇ？。イレギュラーとは、協力関係になるように努めなさいって！！』

「あー？そうだったか？。イレギュラーとは会ってねぇからいいじゃねぇかよ」

『まぁーよくはないけど・・・今は、いいわ。イレギュラーを仲間にして今度こそ、あいつを消去するわよ。いいわねぇ！。』

「わかったよ」

『じゃー。通信終わるわ。』

「おう。またあとでな。」

　魔王は、立ち上がる。

「待ち遠しいぜ！。イレギュラー！！。」

　高笑いをして、足元のオークの死体を紫色の炎で焼き払う。

「そろそろあいつ。イレギュラーと再会したよな。・・・あ（・）い（・）つ（・）に（・）仕（・）掛（・）け（・）た（・）眼（・）で覗いてみるか」

　魔王は、右手を丸くしてそこを覗くと純白の骸骨と銀髪の少女が映る。

☆

「マスター！」

　俺を呼ぶ声がする方へ振り向くと遠くからゴブゾの姿が見えてゴブゾに見えるように手を振るう

「ワァ！」

　ビクッとして背後を振り返るとユキナが満面の笑みを浮かべていた。

「ただいま。マスター。」

「おかえり。ユキナ。・・・全くびっくりしたよ」

「ごめんなさい。驚かしたくて」

　全く、気配を感じなかった。ゴブゾは、俺たちの方へと全力で走ってくるが減速が出来ず通りすぎてしまう。

「マスター。止まらないです。助けて！！」

　ゴブゾは、木に激突してようやく止まったが木は根本から倒れていた。

　鼻血を出すゴブゾを腹を抱えて笑うユキナ。

「ハァハハハハ。何やってんのよ」

「笑わないでくださいよ。」

　ゴブゾは、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。ユキナは、笑いの壺に入ったらしく、まだ笑っている。

「ゴブゾ。鼻血を出てるぞ」

　ゴブゾは、鼻の辺りを擦ると血で顔の下半分を染め上げてユキナはさらに笑い出した。ゴブゾも釣られて笑い始めた。

　数分経ってようやく笑いが止まった。

「わ、笑い、じ、死ぬかと思ったわよ。」

「それは、すいませんねぇ。」

「じゃー。行きますか二人とも。」

　俺たちは、赤いオークに挑むため、フロアに足を踏むいれる。

　フロアに踏み入れる瞬間、鑑定する。

　種族【オークキング】

　名前【トン吉】

　Ｌｖ ．？？？

　またレベル不明か。

　赤いオークに近づいた瞬間。

「ブヒィイイイイイイイイ！」

　赤いオークは、けたたましい咆哮を上げこちらを威嚇する。

　ユキナは、一瞬にして赤いオークに一撃を入れたが斧に防がれキーンと金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。

　赤いオークスピードで圧倒するもユキナの攻撃は斧で防がれてしまう。あの赤いオークは、動体視力が良いらしい。

　ユキナは、赤いオークの反撃をくらい吹っ飛ばれてしまう。ゴブゾは、赤いオークがユキナに気をとられてる隙に太刀よる一撃を背後にいれる。

「ブ、ブヒィ！」

　赤いオークは、振り返ると同時に斧でゴブゾに斬りかかるが太刀でいなされ反撃をくらってしまい、よろけ膝をつく。

「ゴブゾ！ナイスよ！」

　それを待っていましたかように赤いオークの首を斬ろうとユキナは攻撃をするが斧は、首の弾力のある肉に跳ね返される。今までの戦闘で斧の刃は、ボロボロになっていた。

「嘘でしょ」

　空中にいるユキナを足を掴み、地面に叩きつける。ゴブゾは、上段から一撃を斧で受け止められ、腹を蹴られ殴り飛ばされてしまう。

　俺は、やっと赤いオークの前まで来たというのに。前の目の惨劇を目撃し、怒りが沸々と湧いてくる。すると、身体を黒い邪悪なオーラで纏い始め骨は黒く染まって行く。同時に俺の心の内で何（・）か（・）が俺の意思を奪おうとしている。抗おうにも数が多い。このままだと闇（・）に飲み込まれる。

『・・・このままだとキミまで、あの子と一緒になっちゃう。今回だけ。助けてあげるよ』

　幼い声が脳内に響くと俺の身体は、青白い光を纏う。

☆

　気づくと真っ白な空間にいた。

　半透明な前（・）世（・）の（・）俺（・）の（・）身（・）体（・）になっていた。

「ここは。一体。夢で夢を見ているの？・・・まさかねぇ」

「橘祐くん。いい加減認めたら。あっちが今の現実だと」

　さっきの脳内に響いた声のする方を見ると幼い少女いや、少年が灰色オーラを纏っている。そのオーラで顔を認識出来ない。

「えっとキミは？」

「ボク？。なっていたら言いかなぁ。んー。そーだなぁ。分かりやすくいうなら元死神かなぁ。・・・一様、その世界の生と死を司る神でしたよ。」

　元神様は、指パッチンをすると椅子を向かい合わせで召喚した。

「え？」

「まぁー長くなるし座って話そうよ」

「え？はい。失礼します。」

「んー。何処から話そうねぇ。まず、ボクは、今、キミの心の中にいて、スキル【魂狩り】として存在している状況です」

「はい？」

「そうなった理由が【魂狩り】は、本来、ボクのスキルで。その役割は狩り取った魂を浄化して輪廻転生させるというスキルなんだ。魂を浄化するために一度、全ての罪を自分の魂に移すんだ。そして、浄化しすぎた結果。ボクは罪に押し潰されボクという存在がきえかけた。ボクは消えないためにスキルとしてキミに入り込んだ。」

「え。ちょっと待ってこのままだと俺も消えるってこと？」

「まぁー。そうなるねぇ。というかキミ、消えかけたしねぇ」

「え？。」

「怒りの感情で呼び出された罪というか闇に引き込まれそうになったでしょ」

「そうだけど。」

「それに飲み込まれたらキミという魂は、消滅する。結構危ないところでキミを助けたわけだ。ボクに感謝しなよ」

　元神様は、笑っていた。そして、真剣な雰囲気を纏って語り始めた。

「消滅しかけたボクを助けるために遊戯を司る神であるボクの親友は、怒り、この世界を消滅させようとしているんだ。ボクたち、神と魔王は、親友を止めるために親友を迷宮の底に封印しただけどそろそろ、その封印が解けそうでボクは、残りの力を全て使ってキミを【勇者】としてこの世界に呼んだわけだ。でも親友に妨害されてキミは、【勇者】としての力を失い、霊体となってしまってボクが急遽、この世界に存在しない【スケルトン】を作成してその身体にボクと一緒に入って今に至るというわけだ。」

　壮大な話に頭がついていかない。つまりだ。俺は、転生して、スケルトンになりましたってことかよ。通りで夢から覚めね訳か。

「ワァハハハハ。さすがに混乱するよねぇ」

　元神様は、笑う。

「ん？あっ！ゴブゾとユキナは、生きてるんだよな！！」

「生きてるよ。彼らは強いからそう簡単に死なないよ。キミがいる迷宮でもねぇ。」

　俺は、立ち上がり助けに行こうとする。

「キミ。ちょっと待って。もうすぐで進化が終わるから」

「え？どういうこと？」

「このままだとキミは、キミでなくなってしまう。そうならないために魂を大きく強くする。そのための進化だ。・・・本当は姉（・）さ（・）ん（・）に名付けして貰った方が速いんだけどねぇ。姉さん。今は、動けないから。それに魔王はキミと戦いたいらしいし。それまで生き残りってほしいから無理やり進化させて貰ったよ」

「え？」

「種族名は、【エルダーリッチ】かなぁ？」

「え？はい？」

「そそ。あまり死の魔術は使わないでねぇ。飲み込まれやすくなるから気を付けねぇ。・・・そろそろ時間か。じゃー最後にボクからのお願いだ。今いる迷宮を攻略して親友がいる迷宮を探し出して親友を殺して（救い出して）ほしい。・・・それじゃーボクは、眠りにつくよ。バイバイ。」

　元神様は、意識が遠退く俺に別れを告げた。

　☆

　気づくと赤いオークが俺、目掛けて斧を振り落とそうとしているがその動きはかなりゆっくりだ。

　俺は、その斧を片手で受け止め、腕を掴み、軽々と持ち上げ、投げ飛ばす。木々がクッションとなり、赤いオークは、致命傷にならなかったもののすぐには立ち上げれないだろ。

　俺は、黒い剣に力を込め赤いオークに近付く。全身から青白いオーラを纏い始めた。何故かチクチクと痛い。今は、気にしても仕方ない。

　遠目だが二人の姿を確認出来た。二人は、気絶しているだけで外傷は、軽微だ。

「ブヒィイイイイイイ！」

　すると赤いオークに雄叫びを上げ、興奮状態になった。身体から蒸気が出るほどの熱を持っているように見える。赤いオークはその体型に似合わない速い速度で俺に近付いてくる。

　赤いオークは、そのスピードと力を利用し斧を振り下ろす。剣で受け流し、剣で手首を斬り落とした。

　痛そうに暴れまわる赤いオークの腹を殴り。ダウンさせると赤く燃え始め死んだかと思った瞬間。炎は消えその姿を現した。

　炎で脂肪は燃やされ、その筋肉があらわになり、もはや別の生き物だと勘違いするほどその見た目を変えていた。筋肉ムキムキの高身長で赤黒い肌。顔は相変わらず豚だ。

　よそ見をした瞬間。俺は、オークに投げ飛ばされ、宙に浮いていたと思いきや背中を殴られ地面に叩きつけらた。真横でドッスンと聞こえ、横目で見るとオークがにやついていた。

　すっと何もなかったかのように起き上がるとオークは、血相を変え、攻撃をしてくる。その攻撃を受け流し腕を掴み、真上に投げ飛ばし、落ちてくるのを待つが一向に落ちて来ない。投げすぎたかと思ったら真上からドーンと鳴り響く。どうやら天井まで投げたらしい。

「やった？」

　そう呟いたら凄い速さで何が真横を通りすぎ地面に激突して轟音と砂煙をあげる。

「ブ、ブ、ブヒィ。」

　飛んできたのはオークだった。だが疲労困憊の様子だ。立っているだけでやっとにも見えるが襲いかかろうと近付いてくる。

「もー終わりにするか」

　再び剣に力を込める。

「もう我慢出来ん！オークよ！その身体を渡せ！！」

　荒々しい声が森から聞こえたと思ったら森から何かが凄い勢いで飛んできた。そのまま、オークに取り憑いた。

「ブヒィ？ブ、ブ、ブヒィイイイ！」

　オークは、悶え苦しみ始め再び発火した。まるで地獄の炎がオークを包んでいる。

「えー嘘だろう。３形態？」

　炎が消えると人間、金髪の青年が現れた。・・・はい？どうなっているの？

　そんなこと考えていると目の前に青年がいたと思ったら蹴り飛ばされた。

「この程度かよ。期待外れだな。おい！もっと本気でやろうぜ」

　着地して武器を構える。

　なんだこいつ。明らかにさっきまでのオークじゃない。

　青年は、ため息を吐きイライラしている。

「・・・お前！もういや。死ね！」

　青年は、一瞬で詰め寄り、蹴りの攻撃をする。その攻撃を避け、顔に殴り返すと笑った。何怖い。

「いいパンチだな。」

　俺は、青年から距離を取るが青年は、詰め寄り蹴りをする。それも避けると更に笑顔になる。

「いい加減にしろ！！」

　俺は、思わず口走り、全力で剣を振ると青白い衝撃波を作り出して青年に襲いかかる。青年は、その衝撃波を受け止め、上へと流す。

「いいね！ますます気に入ったわ。」

　青年は、ゲラゲラと笑っている。えーマジで何こいつ。

　青年の身体が徐々にオークの姿に戻っていく。しかし、青年は、そのことに気づきていない。

　青年は、息を整え、右手にオーラを集め始めた。あれは食らったらやばい。

　俺は、青年に近づき斬りかかるが青年は、拳で剣を受け止める。すると爆発が起きる。それでも俺は、青年を斬りかかるが全ていなされ、反撃を受けそうになるがギリギリ避ける。ひたすら攻防が続き、攻められない 。

「ワァハハハハハハハ。楽しいな。イレギュラー！」

　急に青年の動きがおかしくなる。

「チッ。もう時間切れか。またな。イレギュラー。もっと強くなって喧嘩しようぜ。じゃないと本気で喧嘩（殺し合い）が出来ねぇしなぁ。じゃあな」

　それだけを言い残し、その姿は、オークへと戻ったがオークはその場に倒れた。２つの魂がオークの身体から現れ一つは何処かへと行ってしまった。

「・・・なんだったんだよ。あいつ。鑑定も出来なかったし。」

　俺は、あいつのことを考えながら二人のことを確認する。息はしている。締め付けられていた心が少し和らいだ。

　二人を安全な場所へと運び、二人を見守る。

「あいつは結局何だったんだ？」

　☆

　名も無きエルダーリッチのスキル【魂狩り】の意識体は、眠りにつこうとしていたがふと何かを思い出したらしいく。

「あー。伝え忘れちゃった。この迷宮は、神々の試練場でフロアボス達は、ボクが罪を浄化出来なかった大罪人たちの魂。・・それとこの迷宮は、８層だからあと。４層だって。あと、スキル【不死】。死ねないというだけで怠惰の大罪だからねぇ。【勇者】の力使うと少し痛いよって言うの忘れちゃった。」

　意識体は、彼の目を使って外を見ると唖然としていた。何故なら魔王が彼と戦っていたからだ。

「えー。魔王は相変わらず手が早いねぇ。・・・でも彼も確実に強くなってる。・・・これ以上、死んで貰いたくないし。ちょうどよかったけど。しかも無意識による力の解放か。ボクの勇者としては、まだまだだねぇ。これじゃーボクの代わりにはまだ、遠いかなぁ。早く魔王になってよねぇ。ボクの勇者くん。」

　意識体は、ニコッと笑い、眠りについた。

　続く。