第8話
☆
「ここは。・・・私は死んだのか。・・・マスター。私は少しは強くなりましたか。」
ゴブゾは、死力を尽くして勝ち。しかし、力尽き死んだと嘆いていた。
暗闇に眩く光る欠片を見つける。それに思わず手を伸ばし握る。
手を開くと星屑のような綺麗な欠片がそこにはあった。
「綺麗。」
『それは、彼から贈られた力の欠片さぁ。』
何処からともなく誰かの声が聞こえる。ゴブゾは、辺りを見回すがそれらしき人物は見当たらない。
「貴方は誰ですか!?」
『ボクは・・・そうだなぁ。君の主の友人かなぁ?』
「そうなんですねぇ。・・・ここは、何処なんですか!!」
『ここは。・・・ゴブゾくん。・・・君の心の中だ。』
「え?。どういうことですか?」
『簡単に行ってしまえば。ゴブゾくんは今進化の最中だ。そんで意識だけが魂の奥底に来たという状況で眷属と主の間のパスを利用して君に会いに来たというわけだ』
「・・・また。強くなれるのですねぇ?」
『そーだねぇ。強くなれるよ。・・・そろそろ進化が終わる。そうだ。いつか君の主は、重大な決断をする。そしてピンチに陥るからその時は、助けてあげてねぇ』
「えー。それもちろん。ほんとに一体貴方は何者ですか?」
『それには答えられない。・・・じゃーまたねぇ。』
ゴブゾは声のする方へ手を伸ばすの届かなかったが半透明の子供が映った。
そこで意志が途切れる。
☆
横になっていた。ゴブゾは、飛び起きた。
「ここは?」
辺りを見渡すゴブゾは、何処か安心しているように見える。
ゴブゾが起きたことに気づいたユキナは、満面の笑みでゴブゾに近づく。
「ユキナ!」
ゴブゾは、ハグされると思って両手を広げたがユキナは、一瞬でゴブゾの背中にくっつき首を絞める。ゴブゾは、苦しいのかユキナの腕を何度も叩くがユキナは、緩めようとしない。
「ゴーブーゾ。何一人で闘ってるのよ!私やマスターにクロキだっているのよ!一人で強敵と闘うんじゃ無いわよ」
「わ、か、り、ま、し、た、か、ら、ゆ、る、め、て・・・」
「ユキナ!!ストップ!!ゴブゾ落ちる!!」
俺が止めるのが遅くゴブゾは、ユキナの腕で気を失ったのだった。俺の声が聞こえたらしく力を緩めたユキナは、ゴブゾに気付き顔が真っ青になっていく。
「え?ゴブゾ!ごめんなさーい!てか起きてよゴブゾ!!」
泡を吹くゴブゾを激しく揺れらし起こそうとするユキナ。
それを焼いた肉を食べるながら見るクロキは少し呆れているように見えた。
「クゥン・・・ワ~ン」
しばらくしてゴブゾが目覚めボスライオンの肉を喰らって食休みを挟み次の階層へと向かった。
☆
次の階層は、湿原。
地面は、ぬかるんでいて歩きづらい。まるで田んぼのようだ。
一面、水苔や水草などの植物が生えている。
「・・・泥が服に・・・」
ユキナは、服に泥がかかったらしく不機嫌になっている。
ゴブゾは、泥の感触が気に入ったらしく楽しんでいる。クロキは、俺の頭の上でグーグー寝ている。
感知に反応がある。
その時だ。草が揺れ、にゅっと紫色の蛇が現れたと思ったらユキナがその首を落としていた。
「はや」
「蛇。嫌い。殺す。」
凄い剣幕のユキナを初めて見た。その殺気からだろうか背後に鬼神が見えるのは、気のせいと思いたい。
ゴブゾもクロキもビックリしていた。
そのあとは、凄かった。
蛇の気配に気づくいてもすぐに消える。ユキナは、相当、蛇が嫌いらしく瞬殺していく。それも、光の速さで続きと倒して行くのだ。
俺もゴブゾもひきつった顔をする。クロキは慣れたのか。俺の頭で寝ている。
ユキナの激昂は、止むことはなかった。たぶん全滅するまで止まらないだろ。
「マスター。それにしてもユキナの察知能力は凄いですねぇ」
「あー凄いよなぁ。」
「ふぅー。取りあえず周囲の蛇は、居なくなったわ」
ユキナには、見る限り返り血で汚れていなかった。ナイフも血で汚れたように見えない。
「ユキナって蛇嫌いなんか?」
「・・・ええ。嫌いよ。殺したいほどには、大嫌いよ」
殺意に満ちた赤い瞳は、一流のハンターかと錯覚するほど鋭かった。
ゴブゾは、その目に少し怯えていた。
激昂状態のユキナに戸惑いながらも探索していく。
☆
周囲の蛇を一掃したと思う。
そして。広場を見つけた。
そこには、大蛇がとぐろを巻いて寝ている。
広場に一歩、踏み入れると「シャー」と舌を出しながら威嚇してくる。
ユキナは、大蛇の攻撃をする。しかし、刃は、通らず弾き返られてしまう。
その巨体からは想像も出来ないほどの速度でユキナを絞め殺そうと絡みつくがユキナの俊敏さには、追い付けず、逃げられてしまう。
そこへ、ゴブゾの斬撃が大蛇を切り裂く。だが傷は浅かった。
大蛇は標的をゴブゾに変更し丸飲みしようと口を大きく開け襲いかかる。
ゴブゾは、呼吸を整え居合斬りを喰われる直前に合わせ斬る。口が少し裂け、さすがの大蛇も後退りする。
睨みあう両者。ほぼ同時に動く。僅かにゴブゾの攻撃が速く大蛇の片目を斬る。「シャー」と威嚇して噛みつく。
避けることに成功したゴブゾだが、微かに腕から出血していた。
ゴブゾは、ビクッと震えたと思ったらその場に倒れ込む。
「これは毒?」
ギリギリの所で大蛇の牙に触れ毒が身体にまわったらしい。俺が動こうとすると「ワゥワン」とクロキが顔面に引っ付き止められた。
勝ちを確信した大蛇は、ゆっくりとゴブゾに近づきその大きな口を限界まで開き丸飲みしようとしている。早く行かなければ。
その時だ。
一筋の眩い青白い光が差す。その光には見覚えがある。ユキナの攻撃だ。
大蛇は、首元に深い傷が出来ていた。その傷の痛みで暴れる大蛇。
ゴブゾの前に心配そうに見つめるユキナが立っていた。
「ゴブゾ。あんたは、休んでなさい。あとは、うちがやるから」
ユキナは、大蛇に振り向きナイフを逆手に持ち替え呼吸を整えた。
「あ。よろしく。ユキナ。」
「ふぅ。さーて。うちの家族。怪我させたこと後悔されてあげるわ。」
「シャー!」
怒り狂う大蛇は、ユキナを一口で飲み込む。
しかし、大蛇は、困惑していた。口のなかにいるはずのユキナが居なかった為だ。
ユキナは、大蛇の背後に立っていた。赤い瞳が美しく輝くとその姿は、消えた。残り香のようにナイフの軌跡だけが残されていた。
その軌跡は、大蛇の首を切り裂くように描かれていた。
ユキナは、ナイフを鞘に納めてゴブゾの前に現れた。
「少しは動けるわよねぇ?」
「あー。動けますが」
「肩。貸しなさい」
「え?はい?」
ユキナは、困惑するゴブゾの肩を持ちゆっくりとこちらに歩いてくる。
大蛇は、二人を喰おうと動いた。その時。動いた衝撃で大蛇の首は、胴体から落ち地面に転がった。
「ユキナ。ほんとに強くなりましたねぇ。」
「またまたよ。あいつが油断していたから。」
・・・二人とも強くねぇ。・・・俺全く活躍所か闘ってもいねぇー!。
クロキはペチペチと俺の頭を撫でるように叩く。慰めてくれてるのか。クロキは優しい。
クロキを撫でようと下ろしたらクロキは、大蛇目掛け、一目散に走っていく。えー。下ろせってことかよ。俺はその場に膝から崩れる。
クロキは、尻尾を千切れるのではないかと思うほど振って夢中に大蛇を喰っている。
休んでいるゴブゾは、ヨダレを拭いた。
「駄目よ。ゴブゾ。毒抜けてからにしなさいねぇ。」
「・・・わ、わかってますよ。ゴクッン」
「ゴブゾ。」
「わ、わかってます。・・・ただ喰いたいだけですよ・・・あの蛇も旨そうです」
ゴブゾは、何度も唾を飲み込む。それを見て呆れるユキナ。俺は、クロキを退かし大蛇を輪切りにする。
その大蛇の肉を熱した石の上に置き焼いていく。ジュージューと肉を焼くいい音を奏でる。ゴブゾとクロキはヨダレを滝のように流していた。
ひっくり返えすと食欲が湧きそうないい焼き色をしている。
「マスター。・・・まだですか?」
「ワンワン」
待ちきれないゴブゾとクロキは、今にも食い付きそうになっている。
よし、焼けたな。にしても本当。食欲ないなぁ。この身体でも食ってこぼれるからなぁ。虚しいわ。
石のプレートに焼けた大蛇ステーキをクロキとゴブゾに持っていく。
ばくばくと食い始めた。
「・・・凄いわねぇこの二人」
ユキナは、そんな二人を見て困惑していた。
大蛇を完食して、次の階層に向かった。
☆
次の階層につくと何もない灰色の空間に出た。
「何もないのに何か嫌な感じがするわねぇ」
ユキナの言うとおりだ。何か嫌な気配を感じる。
「確かに巨体な気配を感じます」
ゴブゾも警戒体勢に入る。・・・クロキは、俺の頭の上で相変わらずぐっすりと寝ている。
「来るわ!!皆、気をつけて!!」
突風と共にそいつは現れた。
その身体は、大きな蛇に類似していて巨大な翼に4本の足、2本の角、全身を魚のような黒い鱗に覆われている。そいつは、ファンタジーによく登場するドラゴンと呼ばれる存在だ。
「貴様ら。・・・何者だ!!」
種族【
名前【???】
Lv .???
「骨の貴様。我を鑑定したな!」
古代竜王は、俺たちに向かって火球を吐く。
その火球を切り裂くゴブゾ。そのタイミングにあわせて古代竜王に斬る。しかし、刃は弾かれた。
「硬い!」
翼でユキナを叩き落とされた。
ゴブゾは、古代竜王を斬ろうと顔面まで飛び太刀を抜く。ゴブゾも鱗に弾かれ前足で叩き落とされた。
ユキナもゴブゾも立ち上げる。
「貴様ら。・・・しぶといな。・・・いいだろ。・・・これで終わらしてやる。」
古代竜王は、口を開け息を吸い、力を溜めると黒い炎を二人にブレスを吐く。
俺はついに動く。
力を溜めた剣をそのブレスに向かって振るう。青白い斬撃となってブレスを切り裂く。二人を守ることが出来た。クロキは俺の頭から降りて二人の元へと走っていた。
「クロキ。二人を頼んだぞ」
「ワン!」
俺は、古代竜王の腹を全力でぶん殴る。
「ぐっは!」
古代竜王を吹き飛ばし、皆から離す。そのあとを追う。
古代竜王は、俺を待っていたかのように空中で止まっていた。
「貴様。その力。・・・まあいい。知っても意味はないなぁ。」
「どう言うことだよ」
「貴様。スケルトンの癖に喋れたのか?」
こいつ。痛いところつくなぁ。
「・・・悪いかよ」
「悪くはないさぁ。疑問に思っただけだ。」
「そーかよ。じゃーいつまで飛んでるんだよ。地に落ちやがれ」
俺は古代竜王の頭まで飛び、そのまま、頭を全力でぶん殴る。ドーンと古代竜王は、地面に叩きつけた。その横に飛び降りた。
「クッハハハハハハハハ?痛いなぁ。久しぶりの痛みだ」
古代竜王は、大笑いをしていた。こいつ。アイツと同類か。
「お返しだ!!」
古代竜王は、前足で頭上から潰された。
「なんだ。終わりか?」
前足を退けて、バラバラになった俺を見て悲しそうにしていた。
意識がある状態で死ぬのは久しぶりだ。
『スキル【不死】が発動。不死の権能、【強制復活】が発動。肉体の再構築を開始。』
俺の身体が強烈な青白い光を放ちバラバラになった身体は完全な状態に戻って行く。俺はゆっくりと立ち上がる。
「誰が終わったって?」
「クッハハハハハハハハ!貴様。その再生能力。不死か!」
「・・・正解だよ。」
「なら。我と同じ。≪怠惰≫の大罪だなぁ。御主。いいだろ。貴様の心が折れるまで殺し続けてやる」
「そー簡単に殺れるかよ」
俺にブレスを吐くがそれを切り捨て古代竜王に斬りかかる。
それを容易く避ける。古代竜王は前足で落とそうとする。それをギリギリで回避して顔に斬りかかる。
そのタイミングでブレスを吐かれた。熱い。だが行ける。
ブレスを掻い潜り眼を斬る。
「クッハハハハハハハハ!これが痛みか。そーだ。我は生きている!!」
「・・・お前。キモい」
「クッハハハハハハハハ!御主面白いな」
「何処だがだよ!!」
「クッハハハハハハハハ!」
古代竜王は、いかにも楽しそうに俺と殺し合っている。
「クッハハハハハハハハ!御主はいい。殺しても死なないのがいい!」
「なんだよ。お前は!」
その問いに古代竜王は動きを止めた。
「我は・・・原初の竜して世界が始まるよりも前から存在している竜。そして
「・・・はい?」
「我は・・・原初の竜して世界が始まるよりも前から存在している竜。そして
「いやいや、聞こえてるよ。色々情報過多!」
きょとんとする古代竜王。
「そ、そっか。それは気を付けよ。すまんかったな」
「・・・もーいいよ。」
古代竜王は、クスッて笑い。翼を大きく広げた。
「雑談はこれぐらいにして再開するか。」
「再開しますか。」
続く。
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