不思議な読後感
- ★★★ Excellent!!!
巧みな文章には温度と匂いが感じられる、と何かで聞いたことがある。正しくこの小説の事だと思った。冬季のつんとした、鼻腔を針で刺すような感覚や、悴んだ手の垢切れの痛みが真に迫ってきた。私が経験した全ての冬が読み途中でずっと走馬灯のように身体中に流れていた。装飾が多く硬派な文体でありながら、さらりと華奢で、すっと頭に入ってきたのがとても良かった。
内容はまるでヘッセのような青春時代の苦味と屈折を重々しく描いているのに、春のように穏やかな文章が内容の重苦しさを中和していて、なんだか不思議な読み心地だった。独特な後味のソーダを飲んだような、そんな気分になる。
唯一無二の青春小説。