心のなかに薔薇色を

タルタルソース柱島

心のなかの

昔々、とある村に「薔薇色の姫」と呼ばれる美しいお姫様がおりました。お姫様の頬は薔薇のように赤く、髪は薔薇の葉のように艶やか。その美貌は国中に知れ渡り、たくさんの求婚者が訪れました。


しかし、姫は簡単には結婚相手を決めませんでした。


「私の夫になるには、とびきりの知恵者でなければなりません!」


姫は村中に問題を出しました。それはこうです。


「この薔薇を永遠に枯らさない方法を考えてください」



村の男たちは一斉に考え始めました。ある者は高価な薬を持ってきたり、ある者は薔薇を特別なガラスケースに入れたり。しかし、どんなに工夫を凝らしても、数日で薔薇は枯れてしまいます。


そんな中、村のはずれに住む若者・太郎が噂を聞きつけました。太郎は大変な怠け者で、畑仕事をサボってばかりいましたが、その頭の回転の速さには定評がありました。


「おもしろそうじゃないか。ちょっと姫に会ってみるか」


太郎は宮殿にやってきました。場内には、薔薇を手にした村人たちがわいわいと騒ぎ、姫が困った顔をしています。太郎は門番に声をかけました。


「おい、俺にも挑戦させてくれよ」


門番は笑い飛ばしました。


「お前みたいな怠け者が何をするつもりだ? 姫に恥をかかせるつもりか!」


「まぁまぁ、見ててくれよ」


門番がしぶしぶ通してくれると、太郎は姫の前に進み出ました。


「お姫様、この薔薇を永遠に枯らさない方法、考えてきましたよ」


姫は期待半分、不安半分で答えます。


「ほう、それはどんな方法なのです?」


太郎はニヤリと笑い、手のひらを広げました。


「簡単なことです。この薔薇を、ずっと “心の中に” 咲かせればいいんですよ」


その場にいた全員がぽかんとしました。姫も一瞬言葉を失いましたが、すぐに思わず吹き出してしまいました。


「それでは、薔薇は実際には枯れてしまうではありませんか!」


太郎は首を振りながら言いました。


「姫様、それが違うんですよ。この薔薇を見た美しさや、枯れることの儚さは心に刻まれる。つまり、この薔薇は思い出として永遠に咲き続けるんです」


村人たちは感心しつつも、ざわざわと騒ぎました。


「いやいや、そりゃ屁理屈だ!」


「それじゃあ答えになってない!」


しかし、姫は満足そうに微笑みました。


「ふふふ、確かにその通りですね。薔薇が枯れても、それを思い続ける心があれば、私の中で永遠に残ります。それこそが“知恵”というものです」


そして姫は太郎に向き直り、こう宣言しました。


「あなたを私の夫に決めます!」


太郎はびっくりして、慌てて手を振りました。


「いやいや、お姫様、俺なんかより立派な人がたくさんいますって!」


すると姫はさらに笑顔を深めました。


「いいえ、あなたのようなとんち者が私にはぴったりです。宮殿での退屈な日々を、きっと楽しいものにしてくれるでしょう?」


こうして太郎は、村中の驚きと祝福の中で姫と結婚しました。

怠け者だった太郎も、姫の知恵比べにつき合わされる毎日を送りながら、次第に賢く、勤勉になっていったそうです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

心のなかに薔薇色を タルタルソース柱島 @hashira_jima

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ