第4話 日常での実践
春人が目を覚ますと、朝の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。夢の中での出来事が鮮明に蘇り、まるで現実だったかのように感じられる。自分のエネルギーバンクが赤字状態にあるという事実。行員の言葉はただの夢ではなく、今の自分への警告のように思えた。
「まずは、できることから始めよう。」
春人は布団の中で決意を新たにした。
1. 睡眠時間の確保: スマホを寝室から遠ざける
春人はまず、毎日7時間以上の睡眠を確保することを目標にした。最初に取り組んだのは、夜更かしの原因となっていたスマホの扱いだ。
「寝る前にスマホをいじってると、気付いたら1時間、いや2時間経ってることもあるよな……。」
彼はスマホをリビングに置くことに決めた。そして寝室には、アナログの目覚まし時計を持ち込んだ。寝る前1時間はスマホを見ない代わりに、本を読んだりストレッチをしたりして過ごすよう心掛けた。
「意外とリラックスできるもんだな。」
初日は少しだけ落ち着かなかったが、数日続けるうちに自然と眠気が訪れるようになり、翌朝の目覚めも良くなった。
2. 小さな楽しみを見つける
次に春人は、「楽しい」と感じられる時間を意識的に作る努力を始めた。
久しぶりにクローゼットからギターを取り出し、ホコリを払って弦を張り替える。思い出の曲を弾き始めると、指先に響く感触が懐かしく、心が弾んだ。
「これ、やっぱり楽しいな……。」
さらに、夕暮れ時の散歩も日課に加えた。道端の花や変わりゆく空の色を眺めながら、深呼吸をするだけで気分が軽くなる。
「こんな簡単なことで、気持ちがリフレッシュするんだな。」
3. 無理なスケジュールを減らす
春人は、今まで無理に引き受けていた予定や付き合いを見直した。
「考えてみたら、別に全部出なくてもいい集まりもあるよな。」
友人の誘いを断るのは少し気が引けたが、「今週は疲れてるからまた今度」と正直に伝えると、思ったよりも相手はあっさり納得してくれた。
「意外と、無理に頑張らなくてもいいんだ。」
空いた時間は自分のために使うことにした。それは時に昼寝だったり、映画鑑賞だったり、小さな幸せを感じる瞬間だった。
しかし、すべてが順調というわけではなかった。
ある週、春人は忙しさに負けて、再び夜更かしをしてしまった。スマホを寝室に持ち込んでしまい、動画を見続けた結果、次の日は寝不足で体が重かった。さらに、ギターや散歩といった楽しみも後回しにしてしまい、再びエネルギーバンクの赤字を感じるようになった。
「ダメだ、また元に戻っちゃってる……。」
自分に失望した春人だったが、ふと行員の言葉を思い出した。
「少しずつで構いません。完璧を目指さなくてもいいんですよ。」
その言葉に励まされ、春人は再び生活を立て直すことを決めた。失敗を重ねながらも、彼は少しずつ、自分にとっての理想のペースを見つけていった。
ある朝、春人は目覚めたときに感じた。体が軽い。頭が冴えている。以前は感じられなかった活力が、自分の中に戻ってきた気がした。
「少しずつだけど、これで良いんだよな。」
行員の言葉通り、一歩ずつ進むことで春人は確実に変わり始めていた。赤字だったエネルギーバンクが、少しずつ黒字に転じていく。その変化を感じながら、彼は今日も新たな一日を迎えるのだった。
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