ひトリまんま
鳥尾巻
空き腹にまずい物あり
ご飯を作るのが好きではありません。ご飯エッセイのはずなのに、のっけから不味いとか好きではないとか天邪鬼なことを言ってみました。ネガティブなイメージから入って徐々にポジティブに持って行こうとする姑息な手段です。
正確に言えば、忙しい両親に代わり子供の頃から延々とご飯を作り続けていたので、自分の味に飽きているのです。子供が火を使うことに賛否両論あるとは思いますが、昔は今よりもっと大らかな時代だった上に、両親はそれを上回る大らかな教育方法でした。すなわち「習うより慣れろ」と。
母は料理に時間を取る人ではなくきちんと教えてもらったことはありません。習得はほぼ独学です。左利きなので包丁も右用だと刃の向きが逆になるから、やりやすいように不思議な切り方をしていると思います。正しい持ち方を知った今でもそうです。
初めて作ったちゃんとした名前のある料理は「炒飯」でした。七歳の子供が作るにはいきなり難易度が高い。米の炊き方は知っていたので、一歳年上の姉と相談しながら見よう見まねで卵を割り具材を刻み油を敷いた中華鍋に投入して加熱。いきなり全部投入。待て、と昔の自分に言ってあげたい。親の教育方針でテレビは家に置いておらず、参考に出来るSNSも料理動画もありません。そして家にあった料理本は小難しくてよく分からなかったのです。
通常ならまずは鍋を熱して、油、卵、ご飯、具、調味料の順番ですよね。その時は知識もないので混ぜればいいだろうと鍋の中で卵液とご飯と具を掻き混ぜます。なんだかグチャグチャしたものが出来上がってきました。
おかしい……。お店の炒飯はもっと美味しそうだった。七歳の私は考えました。調味料をたくさん入れれば美味しくなるかも。冷蔵庫からケチャップ・マヨネーズ・ソース・醤油などを取り出し全部入れます。混ぜます。グチャグチャに拍車がかかりました。しかも鍋底にくっついて上手く混ぜられません。困った私は水を投入しました。変な色のオジヤの完成です。
結論から申し上げますと、初炒飯(どどめ色オジヤ)はとんでもなく不味かったです。育ち盛りの空きっ腹を以てしても完食は難しく、そっと蓋をして卵かけご飯を食べました。TKG最高。その後可哀相な炒飯は遅くに帰宅した母によって葬られたようです。
ちなみに不味かった腹いせに、当時住んでいた団地の五階のベランダから調味料を全部撒いて、後でバレて母にド叱られました。鳥尾巻は一見大人しい顔をしながらそんな悪戯な子供でした。
はて、ポジティブな要素どこにあったかしら?
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