第2話初めてのダンジョン


「ここが目黒ダンジョンか。」


 開拓事務所で登録をしてから数日後、彰悟は目黒にあるダンジョンへやって来た。


「良し、じゃあ早速入ってみるか。」


 彰悟が緊張しながらダンジョンの入り口行くと鎧を着た男性の剣士がダンジョンへ入る開拓者をチェックしていた。


「次…君は初めてのダンジョンかい?」

「はい!そうです。」

「装備は貧弱、仲間もいない。それじゃあ死に行くようなものだぞ。」

「大丈夫です!一応召喚系の職業なので。」

「しかしな。」

「別に良いでしょ?開拓者は自己責任。死んでもそこの子が悪いんだから。」


 剣士は彰悟を止めようとしていたが剣士の仲間だと思われる軽装の女性によって説得され、彰悟をダンジョンへ通した。


「危ないと思ったら直ぐ逃げるんだよ?」

「はい!ありがとうございます!」


 こうしてダンジョンの中へ入ると中は洞窟のような見た目であった。


 ー「目黒ダンジョン:一階層」ー


(ここが目黒ダンジョン。)


 明かりがないはずなのに何故か明るい洞窟を眺める彰悟だったが何か思い出したかの様に召喚をする事にした。


「えっと確か初めて召喚する場合は《我が呼び掛けに答えよ"召喚"》だっけ?」


 彰悟が召喚の呪文を唱えると彰悟の足元に魔法陣が現れ光を放つとモンスターが一体現れた。


「これが俺の相棒?」

「チチチ。」


 彰悟が初めて召喚したモンスターはトビネズミのような見た目のスケルトンだった。


「チチチ。」

「トビネズミみたいな見た目だけど俺の膝位まででかいな。えーっと君は何が出来るのかな?」


 彰悟がしゃがみこみながらそう話掛けるとスケルトンはしばらく辺りを見ると洞窟の奥へ進んで行った。


「ちょっと!どこ行くの!」


 どんどん奥へ進んで行くスケルトンについていくしかない彰悟だったがしばらくすると洞窟の上にコウモリが居た。


「うわ、モンスターだ。」


 初めてのモンスターに彰悟が気を取られているとスケルトンがコウモリに近づき


「チチチ!」


 と鳴いた。するとコウモリもスケルトンに気付き


「ギャギャギャ!」


 と警戒しだした。


「ちょ!何してんの!」


 彰悟がスケルトンを止めようと声を掛けるがスケルトンは上にいるコウモリに狙いを定めると後ろ足で思いっきり跳びはねコウモリに体当たりをした。


「ギャッ!」


 いきなり体当たりを食らったコウモリが驚き地面へ落ちるとスケルトンはすかさずまたジャンプをしてコウモリを上から潰した。


「ギャウゥ。」


 スケルトンに潰されたコウモリは簡単に倒されて動かなくなった。


「すごいな!思ったより強いじゃないか!」


 一連の流れを見ていることしか出来なかった彰悟だがスケルトンが問題なくコウモリを倒したことに驚きながらもスケルトンを褒めた。


「チチチ。」

「そうだ!せっかくだから名前をつけようか!そうだな…今日からお前はジジだ!」

「チチチ。」

「じゃあ俺がコウモリを解体している間周りを警戒しててくれジジ!」

「チチチ。」


 彰悟はジジに周りの警戒を頼むとジジが倒したコウモリを解体しだした。


(このコウモリは確か【ケイブバット】。基本は地上にいるコウモリと変わらないけど超音波を使った攻撃でひどい頭痛を起こしてくるモンスターだったっけ。ケイブバットの体、良く見ると切り傷があるな。ジジの足は思ったより鋭いんだな。運良くケイブバットの素材の羽は無事だから良かった。)


 ケイブバットの解体を素早く終わらせた彰悟は《ケイブバットの羽》を背負ってきたリュックに入れるとジジをつれて洞窟を探索しだした。


「う~ん。一階層はそこまで広くないって聞いたけどやっぱり実際入るとかなり広いよな。さっきから他の開拓者に会わないし。まぁ一階層にいる人はあんまり居ないか。ね?ジジ。」

「チチチ。」


 暇すぎてジジに話かける彰悟だがジジは喋ることが出来ないので独り言になってしまっていた。


「チッ!」

「ん?どうしたジジ?」


 またしばらく歩いているとジジが止まり辺りを警戒し始めた。最初は何をしているのかわからない彰悟だったが直ぐに何かが近付いて来ていると言うことに気付き辺りを警戒すると


「居た!ジジ左だ!」


 左に大きなムカデがいた。


「ジジ!あれは、【毒オオムカデ】だ!さっきのケイブバットを主食にしている奴だ!気を付けろ!」


 ジジが自分の言葉を理解しているかわからない彰悟だったが取り敢えず自分が知っている情報を全てジジに伝えた。


「チチチ!!」


 毒オオムカデに気付いたジジはケイブバットの時同様にジャンプをして上からムカデに蹴りを入れたが毒オオムカデの外骨格に傷をつけることが出来なかった。


「ジジ!」


 思わずジジの名前を叫ぶ彰悟だったがジジと毒オオムカデは構わず戦闘を続けていた。


「チチチ!」

「ーーー!ーーーー!」


 絶えず上から毒オオムカデを攻撃するジジだが毒オオムカデに傷を付ける事が出来ず毒オオムカデも毒を霧状にしてジジに吹き掛けるがスケルトンのジジには効いていなかった。


(何か無いのか。あの毒オオムカデにジジの攻撃を通す方法が…。そうだ!ムカデの骨格の継ぎ目なら!)

「ジジ!毒オオムカデの骨格の継ぎ目を切るんだそこならジジの攻撃も効くはずだ!」

「チチチ!」


 彰悟が毒オオムカデの弱点をジジに伝えるとジジはジャンプをし彰悟に言われた通り骨格の継ぎ目にキックをした。するとジジの爪は毒オオムカデの継ぎ目を切り裂く事に成功した。


「良くやったジジ!」

「チチチ。」


 ジジに切り裂かれた毒オオムカデはしばらくジタバタしていたが直ぐに動かなくなった。すると彰悟の頭の中でネクロマンサーになった時と同じ声が聞こえてきた。


《レベルアップしました。スキル【従魔鑑定】を獲得しました。》

《ジジのレベルがアップしました。》


「っ!ビックリした!」


 いきなり聞こえてきた声に驚く彰悟だったがレベルアップの声だと気付き新たに手に入れたスキルを早速ジジに使う事にした。


「いくよ、ジジ!《従魔鑑定!》。」


 スキルを使うと頭の中にジジの情報が入ってきた。


 種族:

 ボーン・ラット

 レベル:

 2

 数値:

 体力:8

 攻撃力:12

 素早さ:13

 魔力:0

 スキル:

 奇襲1 爪撃1 ジャンプ1 土魔法0

 解説:

 砂漠にすむデザート・ラットのスケルトン。後ろ足に鋭い爪が生えておりジャンプによる上からの奇襲と体当たりが得意技であるがスケルトンのため体当たりのダメージはあまり無い。個体によっては土魔法を使える個体もいる。


(へ~。ジジってボーン・ラットって種族なんだ。てか土魔法使えるとかエリートだ!)


 ジジを鑑定した結果ジジが優秀だと分かった彰悟は上機嫌になりながら毒オオムカデを解体するのだった。


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 ダンジョン解説

【目黒ダンジョン】

 初心者向けのダンジョンであり東京の開拓者はこの【目黒ダンジョン】か【八王子ダンジョン】を初めてのダンジョンにすることがほとんど。


 モンスター情報

【ケイブバット】

 ほとんど普通のコウモリだが超音波攻撃はかなり頭が痛くなる程強力であり数が揃うとかなり厄介。あまり数が増えないのは【毒オオムカデ】が補食しているからだと言われている。開拓事務所が出している『モンスター図鑑』ではIランクに指定されている。


【毒オオムカデ】

 普段は【ケイブ】を食べているが開拓者も普通に襲い補食する。一階層では敵無しであるがモンスターとしては下の下。毒は出血毒であるためジジには効かなかったが一般人はまず助からない。開拓者もレベル5以下だとかなり危ないため開拓者からは嫌われている。開拓事務所が出している『モンスター図鑑』ではIランクに指定されている。


【ボーン・ラット】(デザート・ラットの姿)

 砂漠にすむデザート・ラットのスケルトン。後ろ足に鋭い爪が生えておりジャンプによる上からの奇襲と体当たりが得意技であるがスケルトンのため体当たりのダメージはあまり無い。個体によっては土魔法を使える個体もいる。スケルトンは生き物ごとに種類がいてボーン・ラットも何種類かいるが彰悟が召喚したのはデザート・ラットのスケルトンだった。開拓事務所が出している『モンスター図鑑』ではIランクに指定されている。

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