第4話 急成長

「だから、なんでお前、いるわけ?」

「何度も言ってるでしょ?温泉卵を食べに来たのよ」

 同じことを言わせないでちょうだいと、一人がけのソファーに腰掛けたフロリンダが澄まし顔で言う。

 その傍らには、褐色の肌をした青年。

 上に広がる赤橙に鬱金うこんまだらの細やかな癖毛は、燃える炎を連想させる。

 ここはどこだろうと、ロゼッタは顔を巡らせた。

 初めて見る場所だ。

 地の宮の壁も美しいが、ここの壁も金を基調に、青緑や藍色、赤褐色が無作為に混じり、独特のきらびやかさで目を奪われる。

  同じ石壁だが、包み込むような温もりを感じさせる地の宮の石壁とは雰囲気が異なり、見る者を圧倒する。

 しかし、壁の派手やかさに反し、床には無造作に、銀糸で蔦模様が黒地に刺繍されただけのシンプルな絨毯じゅうたんが敷かれ、その上には鋼や銅を始めとする武器のような、工具のようなものが散らかっている。

 テーブルは、中央に背の低い円形の物が一つに、重厚な石造りのグレーの机が上座に一つ。

 そのどちらにも、いくつもの本と細かい工具、計器のようなものが所狭しと置かれていた。

 火の司守アルスさまの住まう、火の宮だと直感がロゼッタに告げる。

 小さくフロリンダの名前を呼んでみるが、気づいた様子がなかった。

 妖精もダークエルフも耳聡いはずだが、二人共にロゼッタなどいないかのようなやり取りを続ける。

「早く帰れ。ってか、今すぐ帰れ」

「食べ終わったら帰るわよーだ。ん〜!オリーブオイルにブラックペッパーもいけるわ。あなたもカリカリしてないで、おひとついかが?」

「お前のせいでカリカリしてんだし。食うけど」

 真っ黒い卵を受け取り、アルスは執務用と思しき石の机に寄りかかり、立ったまま乱雑に殻を割り始める。

 気の荒い方だと思っていたが、なかなかに素直な面もあるらしい。

「あなたも駄々こねてないで、いい加減落ち着いたらいいのに。司守つかさもりになったからって、やりたい研究ができない訳じゃないでしょ?」

「うっせえな、そういうんじゃねえんだよ。無理矢理、やりたくもないことをやらされてる感が嫌なんだよ」

「あなたは火が好きじゃないの?」

 アルスは何も答えずに、もぐもぐと卵を口に運んだ。

「あなたは神様にいらない役目を押し付けられると思っているのね。違うわ。火があなたを選んだ。火があなたを愛してるから、神はあなたを選んだのよ」

 どこからともなく優雅に取り出した白いナプキンで口を拭うと、フロリンダは立ち上がった。

「相思相愛、幸せなことじゃない。あなたがイライラと反抗するのは、別に理由があるんじゃない?」

 黒い卵が入った藤の籠を、フロリンダは持ち上げる。

 その籠の中には、数日前、彼女が地の宮を訪れた時、ロゼッタが乞われて渡したジャムの瓶があった。

魔獄界まごくかいの扉が封印が緩む星廻りの今にち、まさかと思うけど、アチラに関わるような研究に手を出しているから、後ろめたくって反抗しているな~んてこと、ないわよね?」

 チラリとアルスに流してよこしたフロリンダの眼差しには、ロゼッタが見たことがないような鋭利な光が宿っていた。

 アルスは何も答えず、空になった黒い卵の殻を床に投げ捨てる。

「あなたがどんなことをしようと、私には関係ないけど……自分で始末が付けられるようなことをやってね?他の誰にも迷惑をかけないように」

「うるせえ!!」

 アルスが怒鳴り返した刹那、炎の渦がフロリンダを取り巻いたが、一足先にその場から銀色のきらめく風を残して可憐な妖精は消えた。

「……っとに、うるせえんだよ……」

 癇症に頭をかきむしって、アルスは顔をしかめる。

 次いでやや肩を落とし、うつむいて一瞬脱力すると、思い切ったように屈み込んだ。

 足元のカーペットをおもむろにまくり上げ、寄木細工よせぎざいくになっている床の一部を、一定のリズムで踏む。

 カチリと何かがハマる音がして、床の一部が静かに開いていく。

 あっ、とロゼッタは声を上げるが、アルスは気付いた様子がない。

 その場に自分以外の誰もいないかのように、からくりの床から現れた階段を慣れた足取りで降りていく。

 階下から漂ってくる微かな気配に全身が泡立ち、ロゼッタは自分自身を抱きしめる。

 とても嫌な、自分とは……自分達とは、相反する気配。

 ―……怖い……。


 そう思ったところで、ロゼッタは目を覚ました

 身震いした後に、ゆっくり半身を周りを起こして見回せば、そこは地の宮の自室だった。

※ ※ ※

「ここのことろ、ロゼッタの様子がおかしい」

「我の基準からすると最初からおかしくはありますが、確かに最近、また変わりましたな」

 黒曜の言葉に、彩雅が同意する。

 執務のための机に着き、羽ペンを走らせて各所への伝達にサインをしていた手を止める。

「彩雅から見て、どのように変わったと思う?」

 ふむと、彩雅はあごに手を当てた。

「童のような娘でしたが、みるみると大人びた表情をするようになりました。見目良い妖精の性でもあるのでしょうが、匂いやかと言いましょうか、周りの目を集める気配が一気に増しました。

 身長こそ大差はないものの、身体つきにも変化があり、何よりも、本人は気付いていないようですが、羽根が一回り大きくなったように見えます。そして、元々ぽやんとした娘でしたが、ぼんやりすることが多くなりました」

 黒曜も同じ意見だったので、頷いた。

 ロゼッタは、急激に女性らしいたおやかさを身につけ始めた。

 元来身につけていた甘い香りも、近くで向き合うと、包み込まれるようだ。

 そして離れるとロゼッタの香りが思い出されて、恋しくなる時まである。

「人懐こい娘でしたが、ここ最近、宮中の若造めらの心を乱す風情ですな。妖精は生殖を助長するのが務めの一つであれば、さもありなんと」

 黒曜は短い息をついた。

「本人が自覚していなくとも、魅惑チャームの気が放たれてしまうということか…。何か手を打った方が良いな」

「同意でございます」

「案はあるか?」

 彩雅は見た目に反し、自分よりも長い時を生きてきた。

 男女の云々に疎い自分よりも、よほど知恵があるだろう。

「最も手っ取り早いのは、我が君が娶ればよろしいかと。在位中に華燭の典を挙げた方も、伴侶を伴って着任なさる方も、どの司守とて珍しくはありませぬ」

 予想外の進言に一瞬体が傾ぎ、持っていた羽ペンが机に強く突き刺さって先が割れた。

「地の君の嫁御寮よめごりょうに手を出そうとする者など、早々おりますまい。そうなればその前に、ポンチョコリンにはもっと礼節を叩き込まねばなりませぬが」

「……それ以外の案は?」

 割れてしまったペン先の代わりを差し出しながら、彩雅は再び畏まった。

「首輪を与えればよろしいのではないかと。地の君のものであるという証立てを身につければ、食指を伸ばそうとする者達への牽制になりまする」

 ふむ、と黒曜は腕組む。

 親代わりに面倒を見るのであれば、いずれ良縁を探さねばならぬだろうが、それより先に不届きな手がついてはいけない。

「首輪などと言ういささか粗野そやな物でなくとも、私の庇護下であるという証を身につけるのは、良い案だな」

「ロゼッタであれば、黒曜さまから首輪を頂けば、喜び勇んで身につけるでしょうが」

 確かにと思ったが、口に出さなかった。

「差し出がましいこととは思いますが、現在、我ら地霊の長を務めていらっしゃいます先代さまは、彫金や宝石の研磨がいたく得意な方であり、ご相談相手には最適かと」

麗珠れいじゅ殿か。ならば頼もしい」

 先の地の司守は今、地霊の長としてその力と知恵を生かし、一族を導いている。

 交代時に宮に赴いた折には右も左も分からぬ新参者の自分に、丁寧な引き継ぎをしてくださった。

 落ち着いた妙齢みょうれいの美女の姿をしているが、地霊の基準からすると、自分より遥かに長い年月を生きており、あらゆる経験が豊富だ。

「確かに、装飾品を造るのが好きだと仰っていたな。相談に乗っていただこう」

「御意」

 話が終わったことを察し、礼を取って退出しようとする彩雅の背を、黒曜はふと気になって呼び止めた。

「なぜ、唐突に妻などと提案したのだ?」

 常に慎重で、警戒心が強い彩雅らしくはない安易さと感じた。

 彩雅は改めて向き直り、軽く頭を下げてから、答えを返す。

「あのポンチョコリンといる時だけ、黒曜さまは笑っていらっしゃいます」

 黒曜は軽く目を見張った。

「地の君におなり遊ばされてから、貴方さまはお役目一途で、仕事ぶりには非の打ち所がありません。ご無礼を承知で申し上げますが、わざと忙しくしているようにも見受けられます。

 無愛想というのではありませんが、ロゼッタが来るまで、我は貴方さまが笑う姿を見たことがありません。

 宮の装飾も一つとしていじるようなこともなく、何にも取り立てて興味を示されなかった貴方さまが、ロゼッタが好むだろうというだけで、奴に与えた部屋に、水晶の天窓を付ける改装を手配する。それ一つをとっても、確実にお傍に置かれるのが良いと考えた次第でございます」

 思ってもみなかった答えに、黒曜は返す言葉も見つからない。

「ただ、礼節以前に魔力の均衡が取れておりませんので、そこが問題ですな」

 人の社会のように、独自に打ち立てたルールに基づいた身分の上下ではなく、純然たる力の差は、食うか食われるかの問題になってしまう。

 司守に値する力を持った母でさえ、龍族の双子を宿し、出産したことで衰弱してしまったのが良い例だ。

 今のロゼッタでは、龍族である自分の強い気に飲み込まれ、存在が崩壊してしまうだろう。

「貴方さまはとても良い主です。お仕えする者として、良い主君の貴方さまの幸福を願っての進言でございます」

 言い置いて、深々と一礼すると、改めて彩雅は退出した。


 執務用の机に片肘をつき、黒曜は額に手を当て目を固く閉じる。

 彩雅が、自分に対して人知れず心を砕いてくれていたことに、気づいていなかった。

 職務に真面目一途な側近であり、それ以上を望んではいないことを、彩雅が冷徹にわきまえていたからという理由もあろう。

 だが、何より己が周りを見ていなかった—―注意して見ていたつもりで、その実、景色を眺める程度だったのだと、黒曜は思い知る。

 —……世界を…民草を護る身でありながら、不甲斐ないな……。

 笑ったことがなかったという自分自身にさえ、気づかずにいた。

 己とさえ向かい合っていなかったのであれば、周りが見えるはずもない。

 自分自身に目を反らさずに向き合うことは難く、そして苦痛を伴う。

 黒曜は、それらから逃げていた己を恥じた。

 額から手を離し、背もたれ深く寄りかかり天井を仰ぐ。

 目に優しい乳白色が、情けない思いを宥めた。

 こんなだらしない正体を知ったら、自分をひたむきに慕うロゼッタは、どんな顔をするだろう。

 そう思って想像してみたが—―そこには、変わらぬ笑顔があった。

 どんな自分を見ても、ロゼッタは受け入れてくれる。

 失敗も挫折も、無邪気に笑い飛ばしてくれる。

 根拠はないが、なぜか黒曜は確信した。

 理由を言葉にすることはできないが、信じることができた。

 同時にロゼッタの香りの記憶がよみがえり、緩やかに気持ちが上向いていく。

「……恥じないように在らねばならぬな……」

 黒曜は居住まいを正し、立ち上がった。

 ロゼッタの信頼に応える自分でいたい。

 ただ役目をこなすばかりだった黒曜の日々に芽生えた、それは小さな遣り甲斐。

 小さくとも貴重な輝きを掴み、知らず黒曜の唇には笑みが刷かれていた。

※※※

 ここ最近、夢を見ることが多い。

 そしてその内容は、この世界の何処かで、現実に起こっている事象を見ているのだと何故だかわかる。

 妖精の女王が夢を司ることを考えれば、妖精である自分にそうした魔力が顕れるのは珍しいことではない。

 ただロゼッタには、今まで何の兆候もなかった。

 急激な変化に対する戸惑いと同時に、体調不良も相まって、少々ぼんやりしてしまう。

 今、地の宮の入り口と間違って、無関係な岩と岩との間に挟まってしまったのも、そのせいだ。

 上半身はすり抜けることができたのに、腰が引っかかって前にも後ろにも動けなくなった。

 もがいていたら苔むした足元が滑ってしまい、岩に挟まった状態でダラリと宙で前屈をしている状態である。

―……彩雅様に見つかったら、またお小言だなぁ…。

 そんなことを思いつつ、顔が火照って眠くなってしまった。

「また猫らしさを追求した成れの果てか?」

 大好きな声がまどろみを破る。

 顔を上げると、黒曜の苦笑いがあった。

 黒曜が岩に手をかざすと、頑強な大岩は滑るように左右に動いた。

 解放されたはいいが、そのまま地べたにどさりと落ちるところを、黒曜が片腕で受け止める。

「あの、宮の入口と間違って、挟まってしまって……」

「目眩しも兼ね、付近には似てる岩が多いからな。それはそうと、ロゼッタ」

 ひょいと抱き上げられたロゼッタの顔に、軽く眉をしかめた黒曜の顔が近づく。

 ロゼッタの心臓が跳ね上がった。

「体温が高すぎる。具合の悪いのではないか」

 急な火照りは今この瞬間に加速したのだが、体調が悪いのは本当のことなので、ロゼッタは正直に頷いた。

 同時に、未だ消えない肩の痕が焼けるように熱くなり、思わず手で抑えてしまう。

 黒曜はロゼッタを当たり前のように抱き上げたまま、宮へ足を向けた。

「心身の変調に気付くことがあったら、隠すことなく教えて欲しい。他にも、気にかかることなども。知らず取り返しのつかないことになっては悔やまれる」

 穏やかに諭され、ロゼッタはためらいがちに口を開いた。

「ずっと何でもなかったのに…肩の傷跡がとても熱くなるんです。それと一緒に体も熱っぽくて」

 自分の身に消えない傷をつけたことを、黒曜が深く悔いていることをロゼッタは知っている。

 だからこそ、傷痕に関わる自分の体調不良を悟られることは避けたかったのだが……隠し通すことは難しい。

ロゼッタは、黒曜を偽れないのだから。

「それと、夢を見るようになりました」

「どのような?」

「見も知らぬ、離れた場所での出来事を見ているようです……」

 黒曜の腕の中で感じる振動は、とても心地よく、再びロゼッタは微睡んでしまう。

 黒曜がさらに何か尋ねる声が聞こえたが、熱に浮かされた意識は吸い込まれるように眠りに引き込まれていった。

※※※

 暑くで、息苦しい。

 吸い込む呼吸は乾ききって、胸から潤いを奪って焼けつくようだ。

 ひりつく熱を、濁った風がさらに煽る。

 フロリンダが纏う、花の香りがする爽やかな風とは大違いだ。

 乾燥した空気に、えたような臭いが入り混じって鼻につく。

 注意深くロゼッタが辺りを見回すと、荒涼たる冥い岩山が周囲に広がっていた。

 錫色すずいろの空には太陽がなく、消炭色の雲と、赤黒い雲が絵筆を無造作に走らせたように浮いている。

 どこにも命の気配を感じない。

 殺伐とした光景に、ロゼッタは自身をかき抱いて、身震いする。

 なぜ、こんなところにいるのだろう。

 こんな場所は知らない。

 木や草らしきものは一応点在しているが、立ち枯れているのか、黒々としていて緑の息吹がない。

 地面もひび割れ、表層がめくれあがっている。

 豊かな緑の中で育ってきたロゼッタには、異様としか思えない光景だった。

 寄る辺を求めて辺りを見回し、見上げた空に視線が縫い止められる。

 錫色すずいろの空に、雲とは異なる、長方形の黒い何かがあった。

 何だろうと目を凝らすと、それはパタリと横に広がった。

 まるで、本を開いているさまを、背表紙側から見ているよう—―いや、紛うことなく、それは本の形だった。

 ロゼッタは怖気を覚え、反射的に「いけない」と呟く。

 空に浮かぶ本、それを❝あちら側から❞開いてはいけない。

 ハッキリとその理由を掴もうとした時、どこからともなく気味の悪い気配が近くにあるのを感じた。

 クククと低い、獣が唸るような笑いが聞こえる。

 声のした方に顔をそろそろと振り向けて、ロゼッタはぎょっと目を剥く。

 背の高い異形の薄墨色うすずみいろの影が、少し離れた場所で、自分と同じように空を見上げていた。

 太く低い声の異様さが───確かにそこにいるのに、実態が掴めない不確かな姿が────ロゼッタの本能に告げる。

 決して相容れないモノ。

 災厄にしかならないモノ。

 空の上で、本が閉じられ、開かれを幾度となく繰り返すたび、異形の周囲に息苦しい熱を帯びた風が渦を巻く。

 気味の悪い笑いに混じって、重低音の不穏な虫の羽ばたきが重なり始めた。

 良く見ると、薄墨色の蜃気楼の如き異形を取り巻く不快な風に乗って、どこから集まったのか、大量の羽虫が飛び交っている。

 それは蝗によく似ているが、どす黒く、明らかに奇怪な形をしており、異様に顎が突き出ているのがわかった。

 思わず後ずさったロゼッタの方に、異形の影が、今やっと気づいたかのように────ゆっくり顔を向ける。

 ―……見てはダメ、気づかれてはダメ……!

 強く思ったがどうすることもできず、身を強ばらせるしかできないロゼッタの耳が、その場に不似合いな新たな音を捉えた。


 ――美しい歌声。


 流れる水のような、優しく木々を揺らす風のような、高く低く響く旋律。

 気づいた瞬間、見えていた世界が塗り替えられた。

 白金に輝く空間で、馨しい香りと、白く柔らかい腕に抱きとめられている。

「こんなところにまで来てしまったのね。可愛いおチビさん」

 ロゼッタは、息を飲んだ。

 満月の光を織り成したような、えも言われぬ美しい黄金の巻き毛。

 真珠色の素地に、水縹色みずはなだいろの輝きが宿る大きな蝶型の羽根。

「女王様……」

 妖精王オベロンと共に常若の国ティル・ナ・ノグを統べる、女王ティタニアだった。

 長く濃いまつ毛に縁取られた、夜明けの空の色に似た双眸が優しくロゼッタに注がれる。

「ずいぶん大人びて…もう、おチビさんじゃないのね。誰かを愛した妖精は、強さも美しさも増すわ。あとは受け入れるだけよ、ロゼッタ」

 真紅の薔薇の花びらのような女王の唇が、ロゼッタの頬にキスを落とす。

「アレは、火の情けにつけ込んで、害悪を放つ燃料を投げ入れて利用しました」

 すぐ傍にある女王の美しい顔が、ぐにゃりと歪んで霞んでいく。

「アレに……見つからぬよう……力を抑え……、ここまでが、限界……夫に伝え……ことも出来なくて……」

 女王の言葉も途切れ途切れになっていき、反射的にロゼッタは縋り付いた。

 だが、先程まで確かにあった感触は、ふわふわと雲を掴むようなものになっている。

「今は……完全に視ることができな……火柱……立ち上がった……、最初のきっかけは、火の地……、代償………、目眩し……伝えて……」

うまく聞き取れない上に意味は理解できなかったが、ロゼッタは一も二もなく頷いた。

「お出かけする時……私の夫から…の手紙…持って……」

 振り絞るような言葉はそこで途切れ、渦を巻いて歪んだ空間に、ロゼッタは放り出された。

 麗しい歌声が、また遠くで響いている。

「女王様!」

 姿を探して伸ばしたロゼッタの手を、強く大きな掌が包み込んだ。


 瞼を開くと、黒曜の気遣わしげな眼差しがあった。

※※※

 目を覚ましたロゼッタは、思いの外、良い顔色をしていた。

 腕の中で意識を失った時にはみるみる青ざめ、呼気も苦しげに乱れて慌てたが、黒曜はひとまず胸を撫で下ろす。

「ティタニア様に……お会いしました」

 うつろな眼を瞬かせて、ロゼッタは呟いた。

「生き物の気配を感じない、見知らぬ……とても恐ろしい場所で、良くない本が空に浮いていて…その本が開くと、悪いことが近づくのです……。

 とても恐ろしい❝何か❞が、それを喜んでいました。その恐ろしいモノに見つかりそうになって……その時にティタニア様が助けてくれて……」

 異様な話だが、無視できる内容ではない。

「恐ろしい思いをしたな。よく頑張った」

「女王様が……最初のきっかけは、火の地で起こる……それは代償…目眩し…伝えるようにと……」

 なお言葉を紡ごうとロゼッタは唇を動かしたが、黒曜の手を取ったまま、引き込まれるように眠りに落ちていく。

 まとう気は力なく、かなりの疲労が読み取れたが、規則正しい寝息から、今度の眠りは特別なものではないことがわかる。

「先程のロゼッタの話、どう思う?彩雅」

 背後に控えていた彩雅に、黒曜は尋ねる。

「…眠りながら次元を超え、事象を見聞したものと……」

「間違いないな」

 眠るロゼッタから放たれる気が、尋常ではない波動だったのは黒曜もわかっている。

 容姿や雰囲気の変化だけではなく、能力にも急激な成長が出てきたということだろう。

「妖精というのは、人間並みに急成長をするものなのか?」

「それは個体によって差があるかと思われます」

 急激な変化は、成長といえど心身共に多大な負荷がかかる。

 無理はさせたくないが、されど、ロゼッタが夢見した内容について、目を覚まして落ち着いた後にまた詳しく話を聞かねばなるまい。

「ロゼッタの急激な変化は、私が傷を負わせた事と関連があるだろうか」

「否定はできません。ロゼッタ自身がそもそも、我が君の力の波動から生まれた存在であれば、物理的な接触から貴方さまの気が注がれ、身のうちで共鳴し、急速な成長に繋がったとの推測はできます」

「急激な成長は、多大な負荷も伴う……対処せねばなるまい…」

 眠るロゼッタの額を、黒曜は空いた方の手でそっと撫でた。

 フワフワした柔らかな前髪が、掌に心地良い。

 ロゼッタの傷痕には水の気が残留している、とのフロリンダの指摘を思い出す。

 出会いの時、疲労の極みにあって朦朧とした自分は一瞬、心が過去に戻っていた。

 龍族の公子として過ごしていた頃に。

 それを考え合わせれば、フロリンダの指摘はもっともである。

「早急にロゼッタを龍宮に連れていく」

 故郷に足を踏み入れることは気が進まないが、背に腹は変えられない。

「司守としての役目には穴がないように計らう。まずはあちらの許可を得なければならないが、その時は、宮のことは頼む」

「お任せあれ」

 彩雅は胸に手を当ててかしこまる。

 黒曜は、懐に仕舞っておいた小ぶりの箱を取り出す。

 今日やっと探し当てた、理想通りの物が入ったその小箱を、彩雅に差し出した。

「これを、麗珠れいじゅ殿に届けるのも頼まれてくれるか」

 彩雅は、両手でうやうやしく箱を受け取る。

「品物の意匠については、案をお伝えしてある。本来なら、私が直々にご挨拶に出向くところだが……」

 言葉を濁して、黒曜は眠るロゼッタに視線を落とした。

 ロゼッタは、黒曜の手を握って離さない。

 それをほどく気には、なれなかった。

「かしこまりまして御座います。またどのような変異があるかわからない状態であれば、我が君は即対処できるように、ロゼッタの傍にいらっしゃるのが賢明かと」

 さすが、良くできた受け答えである。

 感心する黒曜の視線の先で、彩雅は目を閉じ、小箱を両掌で包み込んだ。

「中を見ずとも強く、素晴らしい物であることが伝わってきます。良い石を見つけられましたな」

 彩雅にしては珍しい、晴れやかな表情で一礼すると、静かに退出した。

 早々に、故郷にも知らせを飛ばさねばならない。

 拒まれることはなかろうが、ロゼッタを伴うとなると、警戒心の強い水蓮は渋る可能性がある。

 二度と戻ることはないと思った故郷───そこには、秘めておかねばならない存在がいるのだから。

※※※

 ロゼッタは、三日ほどうつらうつらと寝台の上で夢と現実を行き来していた。

 ようやく意識がはっきりしたのは四日目の明け方で、それでもまだ怠そうではあったが、本人が夢で見た内容を話したがった。

 執務室で、飴色あめいろの革張りのソファに二人で腰を落ち着け、大理石でできた卓を挟んで向かい合う。

 ロゼッタは、いつもの無邪気さを見せず、真面目な面持ちで女王から託された言葉を伝えた。

 妖精の女王が託した言葉は切れ切れであったが、結び合わせれば、魔獄界の何者かが既にこちら側に干渉している事実を示していた。

 鍵となったのは、やはり火の地……アルスであろう。

 薄々感じていたが、慎重に、だが早急に対処しなければなるまい。

 ロゼッタの見た夢の内容から、神格を持つ妖精の女王さえ、危険と隣り合わせの状態で、時間の縛りもなく、すべての精神をつなぐ世界にて模索しているようだ。

 それを考えると、無防備に敵の空間に意識を飛ばしてしまったロゼッタは、大変な綱渡りをしたと言える。

 無自覚に高度な荒技をやってのけたロゼッタの、秘められた可能性の大きさは頼もしくも末恐ろしくもあるが、黒曜としては、何よりも自身の安全を優先して欲しい所だった。

「ロゼッタ」

 出会いの時と比べ、幾分大人びた面差しになった妖精を、黒曜は見つめた。

「この世界の大事に関わる情報を得たことは、たいした手柄だ。お前は素晴らしい才覚を持っている。今後、また魔力は強まっていくだろうが…、無理はしてくれるな」

 ロゼッタが戸惑ったように、目を瞬かせる。

 不安にさせたくはないと、黒曜は思わず、身を乗り出して華奢な肩に手を置いた。

「今回はたまたま女王の助けがあったから良かったものの、その女王でさえ警戒している良からぬ存在と、お前は接触した。今回は危機一髪のところで女王の助け船が入ったとはいえ、自身の領分を垣間見たお前の存在を、敵側が逆探知しないとは限らない。

 自ら制御出来ないのだから仕方無いが、少しでも危ないと思ったら…私を呼べ」

 黒曜はロゼッタの澄んだ瞳を真っ直ぐのぞき込む。

「必ず駆けつける。そして、お前を守る。一人で無謀なことはするな」

 ロゼッタの白い頬が、みるみる薔薇色に染まっていく。

 至って真面目に話していたが、それを目にしたら、途端に黒曜は気恥ずかしくなった。

 慌ててロゼッタから手を離し、座り直したら膝が卓に当たった。

 それがいささか間抜けに思えて、黒曜は軽く咳払いをする。

「ま、まあ、そう念頭に置いておくんだ。私の魔力がきっかけで生まれたお前のことは、娘のように、妹のように思っているのだから」

 むすめ、とロゼッタはごく小さくおうむ返しに言って、目を伏せた。

 水にふわりと浮いていた花が、不意に水中に飲み込まれていくような様子に、黒曜は己の失言を知る。

 しかし、何が不味かったのかがわからない。

 乙女の気持ちには、ほとほとうとい。

 どうにか取り繕おうと、黒曜は話を変えた。

「近日中に、お前を龍宮に連れていく」

 ロゼッタは再び目を上げた。

「龍族の国に…ですか?」

 頷いて黒曜は、言を継いだ。

「お前の急激な成長は、諸刃の剣だ。成長は喜ばしいが、力は自在に揮えてこそ自分の力といえる。器である身体と魔力の均衡が取れなければ、身を亡ぼすだろう。

 私が傷をつけたことも、急な魔力発動のきっかけと考えられる。ならばきちんと専門家に対処してもらわねばならぬ。

 幸いなことに私の姉上が、母上から治癒、薬師の技を伝授されている。フロリンダが訪れた際の助言を生かし、お前の傷痕を診て、そして綺麗にしてもらおう」

 ロゼッタは、戸惑った顔で、傷跡のある肩をそっと手で押さえた。

「龍族はこの精和界でも、天界と行き来ができる方々と伺っております。私のような小物が伺っても、よろしいのでしょうか?」

「確かに龍王は水神の一柱であり、神格を有しているので天界にも参じる。だが他の者は、精和界に住まう様々な種族と変わらない。

 お前が育った妖精の国よりいささか堅苦しい国だが、気負うことはない。小旅行のような気持ちでいい」

 努めて気楽な調子でそう告げると、ロゼッタの頬が柔らかく緩んだ。

「黒曜さまとお出かけ……」

 気分が上がった様子に、胸をなでおろす。

 龍王である弟・水蓮に、ロゼッタを伴った帰省を希望すると、即答の勢いで歓迎の返信が来た。

 警戒されるだろうと思っていたので意外な早さに面食らったが、こちらとしてはありがたい。

「私、頑張って手土産のジャムを作ります!あ!あと、妖精王にもお手紙を書かないと!女王様は、なかなか夢から帰れないことで、妖精王が心配していないか、気にしてらしたので…少しでも様子が分かれば、妖精王もご安心なさるかと!」

 調子が戻ってきたロゼッタに、黒曜は小さく笑って立ち上がり、執務机の引き出しを開けた。

 桃色の天鵞絨ビロード張りの箱を取り出す。

「これをお前に」

 え?とロゼッタは再び目を見張って、差し出された箱と黒曜の顔を、何度も交互に見た。

 恐る恐る受け取ると、両掌に収めた箱と黒曜とをまた交互に見る。

「開けてみるといい」

 促され、留め具を外してそっと箱を開けたロゼッタは、瞳が零れ落ちそうなほど限界まで目を見開き、ぽかんと口を開け、しばし動きを失った。

「こ、こここの……綺麗で可愛くて美しいものは……」

 ぷるぷると小刻みに震え出したので、黒曜は慌てて立ち上がり傍らに寄りそう。

 色とりどりの石英で作った髪飾りと、パライバトルマリンの首飾りが、白い絹地の上できらめいている。

「すごい……小さな水晶のひとつひとつが、花の形に研磨されてます……」

 装飾品の善し悪しなど分からないが、思うイメージを伝えたら、地霊の長は的確にそれらを見事に形にしてくれた。

 さすが自他共認める彫金、宝石彫刻の上手だと、届いた時には無骨者の自覚がある黒曜でさえ感嘆を禁じ得なかった。

「この、美しい澄んだ青の石は何ですか?」

「パライバトルマリンだ。以前に話しただろう?お前の瞳の色に近いものを探してみたのだが……」

「これが!パライバトルマリン!初めて見ました。森の奥にひっそり隠れた聖なる泉の色みたい……」

「龍宮を囲む海にも似ているぞ」

 そう告げると、星を宿したようなきらめく瞳がこちらに差し向けられる。

「私の瞳は、こんなにも美しい……ですか…?」

 ロゼッタの羽根が細やかに震え、微細な輝きが辺りに散った。

 同時に、魅惑の香りが振り撒かれる。

「黒曜さまが、ご自身で見つけて下さったなんて……」

 ロゼッタの瞳が潤んだ刹那、心臓が激しく脈打ち始め、黒曜はとっさに目を逸らした。

 娘か妹のつもりで面倒を見ているロゼッタに、胸の昂りを感じた己を懸命に抑え込む。

「着けてやろう」

 努めて平静を装い、髪飾りを手に取った。

 ロゼッタ定番の猫耳のような結髪の付け根、それぞれに巻いて飾る。

 一目で特別な細工を施された逸品だとわかるそれを着けていれば、適当な花などを飾るようなことはあるまい。

 自分以外の男の手が触れた花など、やたら飾ることはあるまい。

 次いで、首飾りを手に取る。

 ロゼッタがいそいそと長い髪を避ければ、白く細い首筋があらわになると同時に、また強く香りが匂い立った。

目眩すら覚えるそれは、気を緩めたら、ふらふらとそこに唇を押し当ててしまいそうな吸引力だ。

―……そこらの若造がこれを喰らったら、ひとたまりもないな…。

 雑多な情欲から、ロゼッタを守らねば───気合いも新たに留め具を嵌めると、ロゼッタは跳ねるように立ち上がってこちらを向いた。

 パライバトルマリンを中心に、金と白金の細やかな細工の上に小さなダイヤが散りばめられ、花のようにも、猫の目のようにも見える首飾り。

 麗しいだけでなく、意匠いしょうには加護が秘められている。

「これは……」

 細い指先で首飾りにおずおず触れながら、はにかんだ様子でロゼッタは口を開いた。

「首輪ですね!」

 我が意を得たりとばかりに言われ、否やの気持ちと、やはりそう来たかとの思いが一緒くたに沸き上がり、黒曜は苦笑した。

 この無垢な笑顔があれば、どんな解釈でもかまわない。

 いつも無邪気に傍で笑っていてくれれば、それでいい。

 誰にもこの笑顔を奪わせはしない。

「ありがとうございます!命より大事にします!」

「いや、命の方を大事にしてくれ」

 笑い混じりに返したそれは、しかし、まごうことなき本心だ。


 己の中に、代父としていずれ誰かに任せねばという思いと、誰の手にも触れさせまいというそれが二つながらにある。

 気づいていながら、その矛盾を、黒曜はまだ正視していない。


ただ、突然現れて、自分について回る小さな妖精が、いつの間にやら大切な存在になっている事は、認めざる得なかった。

※※※

「くれぐれもあちら様に粗相そそうのないように、心して振る舞うのじゃぞ」

 何度となく念を押す彩雅に、ロゼッタもいちいち素直に返事をする。

「はい!黒曜さまに恥をかかせるようなことはしません!」

「その自信はどこから来るのじゃ……」

 地脈を使い、地の領地で最も豊かな大河の下流にて、黒曜とロゼッタは龍宮へ向かう船に乗り込んだ。

 夜明け前の薄闇の中、待っていたように青白く浮かび上がっていた船は、二人が乗り込もうと少しも揺れもなかった。

 黒曜がロゼッタに首飾りを送った日より、三日の後。

 彩雅一人に見送られ、黒曜とロゼッタは水の領地へと向かう。

 付近で生活している者達の気配は未だ静かで、水の香を含んだしっとりした空気が胸に満ちる。

 濃い霧が立ち込めているが、空に力強く輝く明けの明星は見ることができた。

「行ってくる。宮のことは頼んだ」

「お任せ下さい」

「行ってきます!彩雅さま!」

 ロゼッタは笑顔で彩雅の右手を取り、両手で包み込んだ。

 やれやれといつもの調子でロゼッタを見上げた彩雅が、ふと動きを止める。

 しばしロゼッタを見つめた彩雅は、何かに突き動かされるように、空いた左手をロゼッタのそれに重ねた。

「必ず……何事もなく、帰ってくるのだぞ…?」

「はい!お土産持って帰りますね!」

「そのようなものはいらぬ。ただ…無事に帰ってくるのじゃ」

 常ならぬ彩雅の様子が気になり、黒曜は幼女の姿をした有能な側近を宥めようと、その小さな肩に手を置く。

「世の評判ほど堅苦しくはない地だ。多少のヘマも愛嬌として受け取ってもらえよう。案ずるな」

「んもー!黒曜さままで!ヘマなんかしません!」

「どの口が言うのじゃ」

 いつもの雰囲気に戻ったのを合図に、黒曜は船のともづなを解いた。

 後は乗っていれば目的地へ着く。

「いってきまーす!」

 意気揚々と大きく手を振るロゼッタに応え、彩雅が小さく手を振り返した。

 霧に霞んでどんどん小さくなるその姿が、幼女の見た目そのままに頼りなく見えたが、後戻りは出来ない。

「なんだか彩雅さま、とても心配なさってるみたい……。なるべく早りましょうね、黒曜さま!」

 ロゼッタの言葉に、黒曜も深く頷いた。


「我らしくもない……」

 黒曜とロゼッタを見送った彩雅は、じっと自分の両手を見つめていた。

 胸騒ぎがしたのだ。

 ロゼッタに手を取られた刹那、もう会えないような不安に駆られた。

 能天気でうっかり者で、思いもよらないような事を仕出かしては仕事を増やす────なのに周りを不思議と幸せな気持ちにさせる、気のいい妖精に、会えなくなる気がしたのだ。

 唐突に芽生えたその感情を押し潰すように、両手をぎゅっと握りしめる。

「早く·····戻るのじゃぞ·····まだまだお前には、躾が足らぬゆえ」

 そっと目を閉じ、彩雅はロゼッタに向けて呟いた。

 自身に言い聞かせるように。

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