第七話
映画部の活動は相変わらず忙しく、次の作品に向けた準備が進んでいた。しかし、悠斗と唯菜の間には、どこかぎこちない空気が漂っていた。江の島での出来事以来、お互いを意識しすぎて、今までのような自然なやり取りができなくなっていた。
「悠斗君、そっちの脚立持ってきてくれる?」
唯菜が何気なく頼むと、悠斗は一瞬固まりながら「はい」と短く答えた。その様子を見た健人は、苦笑いを浮かべながら声を掛けた。
「おい悠斗、ちょっとこっち手伝えよ。」
悠斗が近づくと、健人は周りに聞こえないような声で話しかける。
「お前、最近唯菜パイセンにぎこちなくないか?何かあった?」
「別に…なんでもないよ。」
そう言いつつも、悠斗の顔は赤くなっていた。それを見て、健人はさらに笑みを深める。
「ま、バレバレだけどな。好きなんだろ?パイセンのこと。」
「えっ…!」
突然の直球に、悠斗は目を丸くした。
「隠そうとしても無理だって。俺から見てもわかるんだから、きっとパイセンにも伝わってるよ。」
「でも、どうすればいいのか分からなくて…。」
「簡単だよ。素直になれ。お前らしいやり方でいいから、ちゃんと気持ちを伝えろよ。」
健人の言葉には、どこか頼もしさがあった。そのアドバイスに、悠斗は少しだけ自信を取り戻す。
***
唯菜もまた、悠斗への接し方に悩んでいた。活動が終わり、部室の片付けをしていたとき、沙織がそっと近づいてきた。
「唯菜先輩、何か悩んでる?」
「え…なんで分かるの?」
「最近、悠斗君とちょっとぎこちない感じだから。」
沙織の鋭い観察眼に驚きながらも、唯菜はため息をつき、少しずつ自分の気持ちを打ち明け始めた。
「実はね…私、悠斗君のことが気になってて。でも、どう接すればいいかわからないの。」
沙織は静かに頷きながら言葉を選ぶ。
「その気持ち、大事にした方がいいと思います。好きって気持ちって、簡単に見つかるものじゃないから。」
「沙織ちゃん…ありがとう。」
少し安心したような唯菜の表情を見て、沙織は続けた。
「私、実はね。健人君が好きだったんです。」
「え…!」
唯菜は驚きのあまり、思わず声を上げそうになったが、沙織が静かに話を続けた。
「でも、健人君はきっと私のこと、そういうふうには見てないと思う。だから、私はこの気持ちを大事にしながら、少しずつ自分の中で整理していこうって決めて。」
沙織の言葉にはどこか清々しさがあり、唯菜は彼女の強さに感心した。
「沙織ちゃん…すごいね。」
「そんなことないですよ。でも、唯菜先輩が悩んでるのを見ると、私も何か力になりたいって思って。」
その言葉に、唯菜は心の中に温かいものが広がるのを感じた。二人は自然と微笑み合い、その日からお互いの距離が少し縮まったように感じられた。
それぞれが自分の気持ちに向き合いながら、少しずつ前に進んでいく。この先に待っている未来がどんな形になるのかはまだわからない。それでも、彼らは今、自分たちの青春の中に確かな輝きを見出していた。
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