幕間

悠斗の想い:


江の島からの帰り道、悠斗はずっと胸の高鳴りを抑えきれなかった。バスの中で唯菜の手に触れた瞬間の感触。それは、これまでに感じたことのない特別なものだった。


(先輩の手、柔らかかったな…。)


悠斗は電車の窓に映る自分の顔を見つめ、少し恥ずかしくなって顔を伏せた。江の島で過ごした時間を思い返すたび、唯菜の笑顔が鮮やかによみがえる。


彼女が灯台を見上げて話していた時の表情、夕日を背にしてカメラの前で微笑んだ姿――それらすべてが悠斗の心に深く刻まれていた。


(あのとき、先輩も僕のこと、少しは特別に思ってくれてたのかな。)


手をつないだときの彼女の優しい笑顔が頭から離れない。部活動の先輩後輩という関係ではない、何か新しい感情が芽生えたことを悠斗は確信していた。


「次に会ったとき、どう話せばいいんだろう…。」


そうつぶやきながら、悠斗はふと微笑んだ。彼の中で、唯菜がますます大切な存在になりつつあることを自覚していた。


唯菜の想い:


部屋に戻った唯菜は、江の島での出来事を何度も反芻していた。特にバスの中での一瞬の出来事。悠斗にそっと手を伸ばしたとき、自分の心臓が跳ね上がるのを感じた。


(私、なんであんなことしたんだろう。)


彼女はベッドに座り込み、頬に手を当てた。手をつないだ感触がまだ鮮明に残っている。


(でも、悠斗君も離さなかった…。)


思い返すと、それまで悠斗のことを「後輩」としか見ていなかったはずなのに、今日の出来事で彼のことを異性として意識し始めている自分に気づいた。


「悠斗君、最近本当に頑張ってるよね。」


小さくつぶやきながら、彼がカメラを構える姿や、部活動に一生懸命取り組む姿が脳裏に浮かぶ。どこか不器用で、それでも一生懸命なその姿に、自分が惹かれていることを認めざるを得なかった。


(私…どうしちゃったんだろう。)


唯菜は枕に顔を埋め、心の中のざわめきを抑えようとした。でも、そのざわめきが心地よいものであることもまた、否定できなかった。


それぞれが相手の存在を特別に感じ、今までとは違う感情が芽生え始めていることに気づいていた。この新しい感情が、二人の関係をどう変えていくのかはまだ誰にもわからない。

それでも、夏の江の島で過ごしたひとときは、二人にとってかけがえのない記憶となった。


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