第二部:蜜月と追憶
第25話:芽生える真実の愛と密約(前編)
「あ、あ、あ……。」
ムーンベリクの王女の艶めかしい声が寝室に響いた。
一度破壊された彼女の心は、その夫であるサマルティア王子の献身的な支えによって、少しずつ癒されていた。そして、その癒しが進むにつれて、王女の中に新たな感情――王子への確かな愛が芽生え始めていた。
王子の優しさと温もりに触れるたび、王女の心も身体も自然と応えるようになり、かつての彼女には考えられなかったほど率直に気持ちを表現するようになった。
「サマル……サマル……」
冒険の中で育まれた愛称で王子の名を呼ぶ声は、これまでのような距離感や形式ばった敬語を感じさせるものではなかった。王女は今、心から王子に向き合っていた。
「はあ…はあ…はあ…」
王女は呼吸を荒げていた。もう限界は近かった。
「お願い…あなたも一緒に…」
彼女は夫を力いっぱい抱きしめた。次第に自分に打ちつけられる勢いが増していくのを感じ、そして、王女はその瞬間、全てを解放した。
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王子の献身に応えるように、王女は静かに微笑みながら彼の腕の中で目を閉じる。彼女の顔には穏やかな安堵の表情が浮かび、深い眠りに落ちていった。
そして王女は、懐かしい夢を見る。
それは、かつて彼女にとって大切「だった」あの時の記憶だった。
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「ローラン、どうぞ。」
ムーンは温かい飲み物の入ったカップを手渡した。野営地の焚き火の前、3人は長旅の疲れを癒すために休息を取っていた。
魔王討伐の冒険に出てから、数か月が経った。数々の死線を共に乗り越えた彼らの間には、確かな友情が芽生えていた。最初は「王子」「王女」と形式的に呼び合っていたが、今ではそれぞれの家名から取った「ローラン」「サマル」「ムーン」と、親しげに呼び合うようになっていた。
「ありがとう、ムーン。サマルはもう寝てしまったのか?」
「ええ、今日は遭遇した怪物が多かったから、疲れたみたい。」
寝袋に包まれ寝息を立てているサマルを見て、2人は微笑んだ。
「それにしても、ローラン、あなたの『覇王の剣技』は本当にすごいね。あのオーガを一撃で倒すなんて。」
ムーンの声には純粋な憧れが込められていた。彼女の無邪気な目が焚き火の光に輝いているのを、ローランはじっと見つめた。
彼女の視線には、まだ自覚のない微かな欲情が混じっている。ローランはそのことに気づいていたが、ムーン自身は自覚していないようだった。
「やれやれ、そろそろ食っちまうタイミングかな。」
ローランは内心でそう思った。
冒険が始まってしばらくした頃、ローランとサマルの二人の間で「密約」が交わされていた。それは、冒険中はローランがムーンを、冒険が終わればサマルがムーンをそれぞれ自由にするという取り決めだった。サマルは、この約束のタイミングについてどちらを優先するかを、ローランの判断に委ねると告げていた。
ローランは冒険中を選んだ。ムーンのような幼く無邪気な性格の女性は、彼の好みとは言えなかった。彼が本当に好きなのは、成熟した大人の女性――例えば、旅の途中で出会った大賢者の娘のような、冷静で理知的な性格と豊満な体つきを持つ女性だった。
しかし、長旅が続くと、ローランはもともと強かった性欲が抑えきれなくなり、誰かの柔らかな肌を求めるようになっていた。ムーンは決して彼の理想ではなかったが、可愛らしい外見と好ましい性格は、旅の間の「付き合い」としては十分だった。
有り体に言えば、冒険中の性欲の捌け口として利用し、冒険の終わりとともにサマルに引き渡すつもりでいたのだ。
焚き火が弾ける音が響く中、ローランはムーンの頬をじっと見つめた。その無防備な表情に、彼は自分の一部が硬くなっていくのを感じた。
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「実は……」
焚き火の前で、ローランがムーンに切り出した。その表情はどこか真剣で、いつもの余裕が感じられない。
「俺の『覇王の剣技』には代償があるんだ。」
そう言うと、ローランは焚き火の炎をじっと見つめ、重々しい口調で続けた。
「剣技を使うには特殊なエネルギーが必要で、それが尽きるともう使えなくなる。けど、そのエネルギーを回復する方法が……」
ローランは一瞬、言葉を詰まらせた。
「どうすれば?」
ムーンは不安そうな顔をして身を乗り出した。仲間のためにできることがあるなら、どんなことでも協力したい――その一心で尋ねた。
「女を抱く必要があるんだ。」
ローランは、まるで罪悪感に押しつぶされるような表情でそう告げた。
もちろん、それは嘘だった。ローランは数日前、サマルに「ムーンをどうやってその気にさせるか」と相談し、入れ知恵された内容をそのまま実行しているだけだった。
「えっ?」
ムーンは顔を真っ赤にして、驚いたように目を見開いた。
「今までは、街に立ち寄った時に娼館で……まあ、女を抱いてエネルギーを補充していたんだ。でも、今回は街から離れて何日も旅を続けているだろ?しかも、最近の敵は強すぎる……だから、もう限界なんだ。」
ローランの声には、切実さが滲んでいるように聞こえた。
「そんな……どうすれば……?」
ムーンは、自分の無力さを痛感し、ローランの力になれないのではないかという思いに胸を締めつけられていた。彼女には、自分が性の対象になるなど、これっぽっちも想像できていなかった。そして、ローランの視線に秘められた意図や、この状況が彼女自身を狙っていることにも、まだ気づいていなかった。
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