白川郷をめざして
@YOO2
第1話
高校卒業を機に卒業旅行に行こうと友人と3人で計画しました、友人はツーリング自転車が好きで、全員自転車を輪行して旅行することにしました。私も早速自転車を調達するためバイトで貯めたお金を握りしめて、大阪のとある自転車屋さんに出向きました、学生なので高価な自転車は買えないので、確か5万くらいのブリヂストンのツーリング用でもちろん電車に持ち込めるよう輪行バッグも購入、同級生3人と事前にコースを計画し、高山本線の角川と言う駅から合掌造りで有名な白川郷を目指すことにしました。卒業後、3月のとある日2泊3日の予定です。当日を迎え、JR大阪駅から富山駅経由で高山線に乗り換え、角川と言う駅で下車、辺りは時期的に雪がまだ残っていました、輪行袋から自転車を取り出し組み立てが終わると目的地を目指してスタート!駅前から国道483号線に出て、早速お店の人に白川郷への道を尋ねたところ、こんな時期に自転車で行くのは危険よと忠告されましたが、半信半疑でまぁ大丈夫やろとあまくみてました。当時は携帯も無いので、地図だけが頼りです、国道360号線に入り、あとは西に向かって走れば70キロほどなので余裕で着くかなと素人の浅はかな気持ちで走り出すと、しばらくして積雪がだんだんと深くなり、川沿いに走るどころか、自転車を漕げる状態では無くなってしました、それでも押して歩いて進むうちに、川沿いは雪で滑ると転落の危険があるので、いつの間にか山側に向かってたようです、数時間が経過し、雪が、膝まで埋まりながら、自転車を押しながら一歩一歩進んでると、野生の白兎が近くにいて少しほっと心が和んでるのも束の間、少し先でゴーッと音がする方を見ると雪崩れで恐怖を覚えました、時間も昼になり、空腹感を覚えと言うのも軽装備できたので、食料もなくキャラメルを舐め水もないため、雪をかじってしのぎました。ここで戻ったら良かったのですが、あの山を越えたら白川郷は近いと変な感覚になり、山を越えてもまた山越えと風景も変わらず辺り一面白い世界でだんだんと方向感覚がわからない状況です。白色の世界に色の付いたものが目に入り、よく見ると車道のカーブミラーの頭が雪に埋もれた先にちょっとのぞかせてました。2mくらいは積もっているのか、友人2人も寒さも加わり徐々に体力を奪われいきました、私は先頭を歩いてた時に自転車が滑った瞬間私もそれと共に滑落しました、その先下をみると沢があり高さ20mくらい下には小さく川が見えました、滑り落ちる間、生まれて初めて走馬灯をみたのを覚えています、家族や友人の顔がまるでカメラのシャッターのように次々と映し出され、もうアカン死ぬと思った時その先に道路脇のワイヤーガードレールがコンクリートの土台がとれたワイヤーに必死に捕まって、落下を免れ助かりました、生まれて初めて死の恐怖を体験した瞬間です、落下の際に自転車のタイヤカバーで切ったのか、左手の人差し指に骨がみえるくらい、深く切り血が溢れてました、タオルで強く縛り止血し、友人に助け上げてもらいました、それからまた歩き出すとあちこちで小さな雪崩れがゴーッ音をたて起こり、後にも先にも身動きが取れず、えらいことになって来たと心の中で思ってました、時間も経ち夕方暗くになり全員これ以上限界やから、休もうと大きな木の下でその日は夜を明かす事にしましたが、テントも食料もなく軽装のため体温が徐々に消耗し、持っていたチョコを分け合い空腹を凌ぎました。皆んな手足も凍傷になりはじめ、感覚も無くなりだしてました、友人の1人は寝てしまい、寝たら命が危ないから起きろとほっぺたを叩き何度も起こしましたが、やはり寝てしまいました。そのうち自分も幻覚を見るようになり、目の前の木のカタチが車に見え、あの車に入れば暖がとれるとか湯気のたったラーメンを食べる夢とか、どこにも事前に旅の経路も連絡することも無かったので、夜空を見てももちろんヘリの救助も来ることも無く、遭難しました。翌日目を覚ますことができれば、早朝から来た道の足跡を頼りに下山すると決めましたが、夜中から雪が降りはじめ、足跡がなくならないように祈るばかりでした、朝目が覚めると雪が止み、奇跡的に足跡もかろうじて残ってました、雪崩れと滑落に注意しながら、8時間かけて夕方町に戻り宿にたどり着くと、宿の人が、良く助かったなと、喜んでくれました、凍傷になりかけてた手足はなんとか熱いお湯で温めることで大事には至りませんでした、何事も無謀すぎる計画を深く反省し命の有り難みに感謝した旅の思い出と経験でした。
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