第8話:訪ねて来た天使。

僕は桜ちゃんから告白されてサークル活動で部室で会うとどうしても意識して

しまうようになった。

まあ、それでもお互いを避けるとかそう言うこともなく普通に友達として接して

いた。


(もしかしたら僕の彼女になってくれたかもしれない桜ちゃん)

(まじで、ごめん・・・僕が優柔不断だから・・・)


もうアリエルとも会えないし・・・・だけど会えないってことが僕の想いをさらに

つのらせた。


もう一度レンタル天使代行サービスのサイトを覗いてみようか。

僕は恐る恐るレンタルヘブンのホームページを開いてみた。

そしたらホームページは閉鎖されていて


《このサイトは営業上の都合により閉鎖しました、ご利用くださったお客様には

申し訳ありませんが、なにとぞご理解くださいませ》


その文章は僕にショックということ以外なにも与えてくれなかった。

もう、ないんだレンタルヘブンは・・・これでアリエルとは二度と会えなくなった。僕は焦った。


なんでだよ・・・なにがあったんだよ。

これでもう永遠にアリエルとは縁が切れた。

連絡も取れなし・・・会うことさえできなくなった。

天界なんて探しようもない。


僕は床の上にしゃがみ込んで力なくため息をついた。


「壊れそうだよ、アリエル・・・」                   」


今でも君を想ってる・・・放っておけない・・・今すぐ逢いたい。

笑顔が見たい・・・君のその声が聞きたい。


僕はエンドマークも見ないまま君を失うのか?

もっと君と一緒にいられたら、こんなに悲しまなくて済むのに・・・。

君といたい・・・君を思い切りこの腕に抱き絞めたい

・・・アリエル・・・。


僕は、あまりにも気持ちが落ち込んでたせいでなにも手につかなくなった。

そんなテンションがただ下りの、大学が休みのある日。


誰かが玄関のチャイムを鳴らして僕のアパートを訪ねて来た。


僕は友人か宅配便かと思って事務的に玄関ドアを開けた。

開いたドアの向こうにいた人物を見た僕はびっくりして、玄関の上がり端に

腰を抜かしそうになった。


そこに立ていたのは「アリエル・コッタ」だったからだ。


「え?・・・アリエル?」


「おはよう、福ちゃん・・・」


僕は再びアリエルに会えて嬉しくてたまらなかった。

せっかく会えたんだからこのまま帰したくない。


「なんで?・・って言うか、レンタルヘブン閉鎖されてたけど・・・もしかして

辞めたの?レンタル天使」


「うん・・・辞めちゃったのね」


「そうなんだ・・・で、その報告にわざわざ来てくれたの?」


「そうじゃなくて、それならLINEにメッセ送ればいいでしょ?」

「今日は別のお話で来たの」


「別の話?・・・別の話って・・・なに?」

「どこかに行っちゃうの・・・引っ越しちゃうとか?」


僕はアリエルが自分の知らない場所に行っちゃうんじゃないかってパニクり

そうになった。


「はやとちりだよ、福ちゃん」

「って言うか、自分の彼女をずっと玄関に立たせとくつもり?」


「あ、気がつかなくてごめん・・・上がって?」


彼女は僕にいざなわれるままソファに座った。


「長く来てなかった訳じゃないのにちょっとだけ懐かしいかな、この部屋・・・」


アリエルがソファに座っただけで部屋の雰囲気が優しくほんわかな空気感に

変わった。


「あの、レンタルヘブンがなくなってたから焦っちゃったよ」

「どうしようかと思ったじゃん・・・絶望感ハンパなかったし・・・」


「ごめんね、閉鎖しなくちゃいけないことが起こっちゃって」


「なにが起きたの?」


「実はねレンタルヘブンって個人的なレンタルサービスだったの」


「なんだって?」


「レンタルヘブンって私が個人的に作ったサイト」

「だから女の子は私だけ・・・他にはいないの」


「そうなんだ?・・・天界ぐるみの組織的な企画じゃなかったの?」


「うん、私ね、地上の誰かと繋がってみたかったの・・・だからあんなサイト

作ったんだけど、そしたらサイトポチったの福ちゃんだけじゃなくて」

「来て欲しいって依頼が殺到しちゃって・・・それで怖くなって、いきなり

閉鎖しちゃったの」


「は〜・・・そうだったんだ・・・」


つづく。




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