第36話 夜闇に輝く、仲間との連携

【ハルキ視点】


 塔を降りると、夜の闇がさらに濃くなっていた。

 風が強く吹きつけ、森の樹木がざわめいている。


「カルロスの仲間がこの辺りに潜んでいるって話だったよな」


 俺は息を整えながらネーラに確認する。


「ええ。リンナと示し合わせていたのだけど……」


 その時、木々の間から数人の影が現れた。

 武装した男女で、リンナの合図に応じて前へ進み出る。


「カルロスの仲間……?」


 俺が尋ねると、彼らは無言で国王を引き取る。

 互いに目配せを交わし、すばやく警戒態勢をとった。


「私たちは先に敵をひきつけます。陛下はお任せを」


 一人が低い声で言うと、俺とリンナ、ネーラは頷いた。

 森の奥から、複数の足音が近づいてくる気配がする。

 先ほどの追手とは比較にならない数だ。


「まずいな……数が多い」


 俺は背筋を冷たい汗が伝うのを感じた。

 妹を救うどころか、ここで倒れたら元も子もない。

 ネーラが魔力を溜め、リンナは弓を構える。

 さっきの塔での疲労はまだ残っているはずだが、そんな素振りは微塵も見せない。


ビュンッ!


 リンナの矢が闇を切り裂き、こちらに迫っていた追手の先頭を貫いた。

 瞬間、敵の陣形が崩れ、そこへネーラの放つ青い炎が襲いかかる。


「すごい連携だ……!」


 俺が感嘆の声を漏らす。

 リンナの矢は予めネーラの魔法で風と光が付与され、矢筋にきらめくラインが走っている。

 敵はそれを避けようとして混乱し、その隙にまた矢が突き刺さる。


(これがリンナの本気……かっこいいな)


 思わず見とれていると、ネーラがこちらを睨んだ。


「呆けてないで、あんたも援護くらいしてよ」


「わ、わかってる!」


 俺は石を手に取るが、今の俺には制御が不安定だ。

 せめて剣を握りしめ、襲いくる兵士を迎え撃つ。


ドンッ!


 兵士の剣をぎりぎりで受け止め、蹴りで距離を開ける。

 普通の人間ならなんとかなりそうだが、デーモンに操られているせいか動きがやけに鈍くて速い。


「くっ……!」


 手応えが奇妙だ。

 相手は痛みを感じていないのか、何度切りつけられても向かってくる。


そのとき――

ビュンッ!


 横から伸びてきた矢が、俺を襲おうとした兵士の頭部を一瞬で貫いた。


「危ないわよ!」


 リンナが鋭い声を投げかける。


「助かった!」


 俺は息を乱しながら礼を言う。

 リンナは無駄のない動きで次の矢を番えている。

 大きく息を吸い込むたび、その胸に秘めた決意がさらに燃え上がっていくのがわかるようだ。


(ああ、今の彼女は――「自分の力を独り占めにしない」んだ。仲間を信じて、支え合うために弓を放っている)


 ネーラがスキを見て魔法の陣を展開し、兵士たちをまとめて吹き飛ばす。

 焼け焦げた臭いが鼻をつく。


「リンナ、そろそろ限界でしょ?」


 ネーラが横目でリンナに呼びかける。

 リンナの肩は小刻みに上下していた。


「平気、まだ動ける……!」


 その強い意思が矢に乗り、闇夜へ放たれる。

 飛び交う魔力の光が、まるで星屑のように森の中を照らし出す。

 やがて、カルロスの仲間たちと合流した俺たちは、彼らの援護を受けながら追手を次々と撃退していった。

 数で勝る相手を相手に、的確な連携とリンナの圧倒的弓術が決め手となる。


「これで……ひとまず大丈夫そうだな」


 俺は額の汗を拭う。


「ええ……みんな無事?」


 リンナは周囲を見回し、矢の残数を確認している。

 その眼差しには、かつての“独りで背負い込む姿”はもうなかった。

 仲間と共に戦う覚悟が彼女を支えている。


「ハルキ、妹さんのこと……早く手がかりを見つけましょう」


 リンナがぽつりと呟く。


「ああ……ありがとう。絶対に戻らないとな」


 その言葉に、ネーラもうなずき、カルロスの仲間たちも互いに声を掛け合う。

 深い森の闇が、まだ先の道を阻んでいる。

 それでも、仲間と共に進めばきっと突破できる。

 俺は石を握りしめ、心に誓った。


(ジプト……お前が停止してても、俺はなんとかやっていくからな。絶対に妹を救って、元の世界に戻る。待っててくれ……)


 夜風が、まるで祝福するかのように優しく吹き抜けた。

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