第4話

そして、

あのおぞましいしい夕方が訪れた。


エリカが珍しく、

瑠璃子を家まで自分の車で送ると言うので、

瑠璃子は嫌な予感がしたものの、

仕方なくエリカの高級外車に同乗した。


そして、

女帝エリカは、

瑠璃子のアパートの前に車を止めると、

獲物に喰らい付くかのように、

瑠璃子にキスをしたのだ。


さらに、

間の悪いことに、

ちょうどその時、

職場の銀行から帰ってきたさやかと、

目が合ってしまった。


瑠璃子は絶望した。


(詰んだ!

なんという失態!

こんな恥ずかしくて、

みっともない瞬間を、

こともあろうに、

推しのさやか様に見られるなんて!)


(こんな場面を見てしまった、

さやか様は、

きっと私と女帝エリカのことを、

恋人同士と思ったに違いない)


(さやか様、違うんです。

誤解なんです。

私はこの女社長に、

セクハラされていたんです!)


瑠璃子は、

すぐにエリカを押しのけて、

車の外へ避難したが、

さやかは、

アパートの階段を駆け上がると、

そのまま自室の202号室へ消えた。


一方、

女帝エリカは、

自分の欲望を満たして、

上機嫌で車で走り去っていった。


瑠璃子は、

その日はさすがに気まずくて、

自宅には帰れず、

とぼとぼ歩いて、

駅前のビジネスホテルに泊まった。


翌日、

瑠璃子は、

体調不良をメールで伝えて、

欠勤した。


昨日の出来事が、

頭の中に渦巻いて、

心も体もセメントのように重かった。


しかし、

夜になると、

少し心身ともに回復してきたので、

ニュースを見ていた。


すると、

ニュース速報が流れた。


それは、

あのセクハラパワハラ女帝・エリカを、

瑠璃子の推し・さやかが刺したという内容だった。


瑠璃子は思わず叫んだ。


「嘘でしょ!」


しかし、

瑠璃子は一旦気持ちを落ち着けると、

この唐突な悲劇について考えた。


(もしかしたら、

さやか様は銀行員だから、

融資とかの関係で、

エリカ社長と知り合いだったのかも。

そして、

徐々にお互い惹かれ合って、

付き合うようになった。

うん。

ありえる話ね。

そして、

あのキスの現場を見たさやか様は、

嫉妬に狂って、

裏切り者の、

交際相手のエリカ社長を刺した)


(一応こう考えると、

辻褄つじつまが合うわね。

だけど、

あの控えめの女神・さやか様が、

そんな嫉妬くらいで、

今回の凶行に及ぶだろうか。

いいえ。

さやか様には、

きっと何かほかの原因があったはず。

私なんかには分からない原因が……)


瑠璃子は、

頭が混乱して、

ベッドに倒れ込むと、

たちまち、

眠りの渦に呑み込まれていった。


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